ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

教会がカルト化する運動と神学(1)

2019年3月7日

 

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ちょうど、今回で100記事目の投稿です。今日はデリケートでシリアスな問題について書いていますが、よかったら最後までお付き合いください。

 

 

 

【破壊的カルトに陥る運動】

「破壊的カルト」と呼べる集団の条件は? と聞かれたら、少なくとも

 

1)金銭的・精神的・肉体的被害が訴えられている。
2)それらの「被害者の会」ができている。
3)法的な不祥事や訴訟が起きている。

 

といった点が挙げれられるでしょう。その集団で教えられていることが、どれだけ荒唐無稽なものであっても、個人の意思や人権が尊重されている限り、「異端」と呼ぶことはできても、「破壊的カルト」と呼ぶことはできません。

 

たとえ、既存宗教の正当な教義・教理から逸脱していたとしても、それを理由に「これはカルトだ!」とは言えないのです。

 

しかし、以下に紹介するキリスト教界で広まっている運動と神学は、既存の教義・教理から逸脱しているだけでなく、それを採用した教会の破壊的傾向が著しくなり、カルト化してしまう問題が、国内外のカルト対策の専門家から指摘されています。

 

もともとは健全な組織だったにもかかわらず、牧師の独裁化、金銭トラブル、虐待や暴力が発生し、上記の条件を含む破壊的カルトへ変容してしまうのです。

 

今回、これらの運動・神学の問題について、ネットで発信されているものの中から整理し、簡単にまとめさせてもらうことにしました。

 

それぞれ、参照・引用した記事のリンクを掲載しているので、詳しく知りたい方はぜひ、そちらをご覧ください。(*引用した記事は各項目の参考になると考えられるもので、サイト全体の主張を支持するものではありません)

 

【聖霊の第三の波】

「聖霊の第三の波」は、フラー神学校の教授ピーター・ワグナーによる聖霊運動を表す造語です。

 

1900年代にアメリカで起きたペンテコステ運動を「聖霊の第一の波」、1960年代に起きたカリスマ運動を「聖霊の第二の波」と呼び、1980年代〜1990年代にピーター・ワグナー、ジョン・ウィンバー、チャールズ・クラフトを中心に展開された運動を「聖霊の第三の波」と呼んでいます。

 

第一、第二、第三の波に共通した特徴は、「癒し」「奇跡」「預言」「異言」といったしるしが強調されることです。

 

第三の波では特に「力の伝道」「力の癒し」「力の戦い」「霊の対決」が強調され、死人を生き返らせたり、病気を癒したりする奇跡が見せられます。また、徹底的に「聖書を誤りない神の言葉」と信じることが強調されます。

 

しかし、この波に属するとみられる教会では、所属する教会員の人権侵害、金銭トラブル、セクハラ、心理的被害など、不祥事が多発しています。裁判によって、牧師によるこれらの犯罪的行為が認められた事例もたくさんあります。また、死者を生き返らせたり、多くの病が癒されたとアピールされる出来事も、検証に耐えない話が多いです。

 

第一、第二の波から生まれたペンテコステ派の健全な教会からも「注意が必要だ」という声があがっている運動です。

 

聖霊の第三の波は、後述する「後の雨運動」「新使徒的改革」「繁栄の福音」「ワード・オブ・フェイス」など、カルト対策の専門家が警鐘を鳴らしている運動や神学とも密接な関係があります。

 

これらと深く結びついた団体については、よくよく注意することが必要でしょう。

 

【参照・引用元リンク】

blog.goo.ne.jp

arinopapa.arinomamachurch.com

 

【後の雨運動(レストレーション)】

「後の雨運動」とは、かつてペンテコステの日に神が弟子たちへ聖霊を注いだように、現在も神がある人々へ特別に聖霊を注がれて、この世でキリストの再臨を準備するよう命じられるという教えです。

 

「後の雨」という名称は、ヨエル書2:23の「シオンの子らよ。あなたたちの神なる主によって喜び躍れ。主はあなたたちを救うために、秋の雨を与えて豊かに降らせてくださる。元のように、秋の雨と春の雨(初めの雨と後の雨)をお与えになる」から来ています。

 

 後の雨運動では、この「雨」を、聖霊が注ぎ出されることと解釈し、「後の雨」(終わりの時)に行われる聖霊の注ぎは、「前の雨」(使徒たちの時代)よりも偉大な働きになると主張します。

 

そして、聖書を極端に単純化、抽象化、類型化して象徴的に解釈し、指導者に都合の良いメッセージを導きだします。

 

また、この運動では「個人的預言」「神から直接下される命令」「聖書以外の啓示」が強調されます。つまり、聖書に書かかれていないことも、聖霊を注がれ「使徒」に任命された者が語るなら、信じて従わなければならないのです。

 

そのため、この運動を受け入れた教会では、牧師の独裁化が進み、信徒を支配、服従させるようになります。

 

後の雨運動では、「使徒」や「預言者」といった聖書以来の役割が現代にも復興され、按手によってそれらの「霊」を受けることができると教えられます。

 

聖霊の注ぎを受けた者は、手を置くことで神の癒しを人に与えることができ、悪霊を追い出すことができるとみなされます。

 

そのため、悪霊払いによる救出が積極的に行われます。各地に油をまいて、その地を「清める」といった行為をするところもあり、日本でも、神社・仏閣に油をまかれる被害が起きています。

 

このように、後の雨運動は非聖書的な色合いが濃く、1949年にアメリカのアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団から、背教的な教えとして公然と非難されています。その他のペンテコステ派のグループも、同じような結論を出しています。

 

現在、「後の雨」という言葉はほとんど使われていませんが、これらの教理は強い影響を及ぼし続けており、知らずに受け入れ、支持するようになる教会が後を絶ちません。

 

後の雨運動は、教団の壁を超えて超教派的に広がっていき、やがて一つの教会に統一されることを目指すため、積極的に他団体へ関わっていくからです。

 

もしも、これらの教えが自分の教会に入り込んできているなら、牧師の独裁化が進む前に、早急に手を打つ必要があるでしょう。

 

【参照・引用元リンク】

NARとは何か? | Lifehouse Concern JP

 

maranatha.exblog.jp

 

【新使徒的改革(NAR/新使徒運動)】

「新使徒的改革(NAR)」は、ピーター・ワグナーが提唱した5役者(使徒、預言者、伝道者、牧師、教師)の回復を主張する運動で、後の雨運動の流れに属します。

 

「最初の使徒的時代は、使徒言行録から始まる初代教会の200年間を指し、新しい使徒的時代は1990年代から訪れた」としています。

 

ようするに、神の啓示を直接受ける「使徒」や「預言者」が現代も立てられ、その者たちは聖書に書かれていないことも神の言葉として人々に語り、命じ、従わせることができるという内容です。

 

NARは教団や組織ではなく、統一された教理体系もありません。あくまで、ピーター・ワグナーの考えに賛同し、自分も「使徒だ」と名乗ることで、その使徒職が認められた人々のネットワークです。

 

「使徒」を名乗り始めた指導者たちは、何か一つの組織に属しているわけではないため、自分の好きに行動し、思いのままに献金を集めることができます。

 

そのため、行き過ぎた権威主義、聖書の軽視、極端な経験主義、偽預言による被害、既成教会の否定が相次ぎ、アメリカのカルト問題の専門家から問題視されています。

 

NARのネットワークにおいて、一つのキーワードとなるのは、「7つの山の制覇」です。7つの山とは、宗教界、家庭、教育界、政界、マスメディア、芸術界(エンタメの世界)、ビジネス界のことです。

 

この7分野にクリスチャンが侵入し、影響を及ぼし、最終的に支配するようになれば、人間社会が変わるだけでなく、大勢の人が救われると教えられます。

 

しかし実際には、これらの世界へ進出したNARの指導者が、金銭トラブルやマネーロンダリング、不倫、セクハラ、性的虐待、信者に対する身体的精神的暴力など、不祥事を頻発させており、多数の裁判が起きています。

 

にもかかわらず、急激な教会成長を果たした指導者たちが、日本のセミナーに呼ばれて講師を務め、その教えを採用する教会が少しずつ広がっています。

 

NARは、確かに教会へ急速な成長をもたらしますが、一方で、組織を確実にカルト化させます。キリスト教会の指導者は、安易な教会成長の秘訣に飛び付かず、注意深く、健全な組織形成をしていく必要があるでしょう。

 

【参照・引用元リンク】

NARとは何か?lhconcernjp.wordpress.com

 

cult-sos.net

 

maranatha.exblog.jp

www.huffingtonpost.jp

(↓) こちらはNARを支持するネットワークのサイトで、その信条が簡単にまとめられています。NAR側の主張と思想を知ることができるように、参考までにあげておきます。

gaiuslawrence.com

 

【支配神学】

「支配神学」とは、「人間のわずかな手助けがあれば、地上に神の国をもたらすことができる」という教えで、サタンとその手下から、教会が世界を取り戻して支配しない限り、キリストは再臨しないと主張します。

 

そのため、クリスチャンはあらゆる手段を尽くして、政治、宗教、教育、経済、その他の支配権を握らなければならないと語られます。

 

これは、新使徒的改革(NAR)のキーワードである「7つの山の制覇」に関連する教えで、サタンや悪魔に勝つためならば、どのような手段でも肯定されるという姿勢に陥りやすく、強引な勧誘、あこぎな商売、敵対者の殲滅まで肯定してしまう危険があります。

 

中には、イスラム原理主義に近い発言をする指導者もおり、そのまま受け入れるのはおすすめできません。

 

【参照・引用元リンク】

cult-sos.net

 

psalm8934.livedoor.blog

 

【繁栄の福音(繁栄の神学)】

「繁栄の福音(繁栄の神学)」とは、一言でいえば、「正しい信仰を持つ者は神から健康と富を得る」という内容で、「教会に献金すればするほど自分自身も豊かになる」「病気や貧困はその人のネガティブから来るもので、神に信頼してポジティブに生きれば、病は治り、金持ちになれる」と教えます。

 

これは、2010年のローザンヌ世界宣教会議で「麻薬のように働いて現実感覚を麻痺させる」と懸念が表明されており、警戒が必要な教えです。

 

繁栄の福音を支持する牧師は、「祝福を受けるためには全収入の10分の1献金、献身的な奉仕、礼拝出席の厳守が必要だ」と強調し、信徒は祝福を受けるため、借金してでも献金を続けさせられます。

 

たくさん捧げる信徒は褒められますが、しない信徒は蔑まれるため、深刻な精神的・経済的被害も出ています。

 

繁栄の福音を支持する教会で、世界的に知られているメガチャーチのいくつかも、牧師のマネーロンダリングや巨額背任の罪で有罪判決を受けており、今後も被害が拡大していくと思われます。

 

【参照・引用元リンク】

www.lausanne.org

courrier.jp

繁栄の福音に公に反対するクリスチャン・リーダーたち | Lifehouse Concern JP

 

繁栄の神を求める人々ーACC、ヒルソング、ARC Church Planting、ジョイス・マイヤー | Lifehouse Concern JP

 

maranatha.exblog.jp

 

【ワード・オブ・フィエス】

「ワード・オブ・フェイス」とは、20世紀後半のペンテコステ運動から起こった運動で、19世紀のニューソート(新思想)の影響を強く受けています。

 

この運動の中心にあるのは「信仰の力」に対する信仰で、人間は「信仰の力」を操作するために、聖書の言葉を使うことができると教えられます。

 

病気や罪、失敗は信仰の欠如の結果であり、それらは自らの口で神の約束(健康や富)を告白することで解決されると言うのです。

 

簡単に言えば、自分の夢や願望をありありと心に描き、積極的に信じて口で告白すれば、願いは叶えられ、病は癒され、「経済的繁栄」が得られるといった教えです。

 

どちらかといえばオカルトチックな教えですが、ワード・オブ・フェイスは繁栄の福音と密接に結びついており、この運動を支持する牧師の不祥事が相次いでいます。セクハラ、パワハラ、金銭トラブルなど、既に有罪判決が出たところも少なくありません。

 

ワード・オブ・フェイスは貧困や病に苦しむ人々に喜ばれる「答え」を与え、受け入れられれば多くの信徒を獲得できますが、一方で、薬や医療行為を拒否して祈りだけで病気を治すよう強制された事例など、深刻な被害を生み出します。

 

この運動も安易に飛びつくべきではないでしょう。

 

【参照・引用元リンク】

blog.livedoor.jp

maranatha.exblog.jp

 

以上が、日本語で読める発信から、簡単にこれらの運動をまとめたものです。英語で記事を読むことができる方は、ここに出てきたキーワードを検索すれば、海外のサイトでより多くの情報を知ることができます。

 

日本では教会関係者の間でも、まだあまりよく知られていない問題なので、ぜひ色んな方に知っていただけるとありがたいです。

 

*今回、紹介しきれなかった運動と神学については下記のリンクで説明しています。

bokushiblog.hatenablog.com