ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『赦しを乞わない』 サムエル記上3:1〜19

聖書研究祈祷会 2021年2月3日


『赦しを乞わない』在宅聖研祈祷会 2021年1月31日

 

案 内

華陽教会では、感染拡大による岐阜県の医療提供体制の逼迫を受け、聖書研究祈祷会も、配信等による在宅聖研として行っています。場所も時間もバラバラですが、神様によって見えない教会に集められたことを覚え、共に聖書の言葉を味わいましょう。

 

讃美歌

最初に、讃美歌21の189番「ちいさいこどもの」を歌いましょう。讃美歌21をお持ちでない方は、そのままお聞きいただき、心で賛美を味わいましょう。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

 

◆愛と平和の源である私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて、水曜日の在宅聖研を始めることができ、感謝いたします。どうか今、自宅で、施設で、職場で、屋外で、あなたの言葉を受けようとしている人を祝福してください。

◆私たちの神様。1月9日に岐阜県の非常事態宣言が出てから、1ヶ月が経ちました。今なお、医療提供体制は余裕がなく、厳しい毎日が続いています。どうか今、医療従事者の健康と安全が守られ、少しでも負担が軽減されますように。

◆私たちの神様。2月7日に解除される予定だった緊急事態宣言も、延長されるかもしれません。みんなと顔と顔を合わせられない礼拝も、本当にしんどくなっています。どうか今、私たちの間に立って、私たちの信仰を支えてください。

◆私たちの神様。色んな気力や体力を失っている人たちに、あなたの憐れみがありますように。考える余裕や動き出すエネルギーがない人に、あなたの慈しみがありますように。どうか今、私たちの心身に呼びかけ、変化と成長をもたらしてください。

◆人と人との間におられる、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。サムエル記上3:1〜19(新共同訳より抜粋)

*当ブログ全体における聖書の引用を適切な範囲内で行うため、後ほど聖書箇所のみ記載し、本文をカットすることがあります。後からご覧になる方は、該当する聖書箇所を日本聖書協会の「聖書本文検索」か、手元に新共同訳聖書がある方はそちらからお読みください。

www.bible.or.jp

 

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TumisuによるPixabayからの画像

メッセージ

 堕落した聖職者に対し、神の裁きが下される……今回の話は、まさにそんな出来事に思えます。イスラエルで40年間神に仕え、人々の指導者として働いてきた祭司エリは、息子たちが好き勝手するのを止めることができません。彼の息子ホフニとピパネスは、父親と同じく祭司をしていましたが、みんなから「ならず者」と呼ばれていました。

 

人々が神にささげる牛や羊を持ってくると、その肉を奪い、全て自分のものにしてしまう。本来の祭司の取り分だけを取ってくれとお願いしても、「今よこしなさい。さもなければ力ずくで取る」と言ってくる。しかも、幕屋の入り口で働く女性たちと、床を共にしているとも言われます。絵に描いたような悪者です。

 

どうやら、エリは息子たちの教育が上手くいかなかったようでした。年老いた彼は、子どもたちの悪行を止めることができません。一方、エリのもとで祭司の下働きになった少年サムエルは、献身的に神に仕えて暮らしていました。この少年は、長いこと子どもができなかった女性の願いを、神様が叶えて生まれてきた男の子です。

 

生涯、神にゆだねられた者として、神殿で働くように祭司エリに預けられました。どうやら、エリはまともに働かない息子たちに代わって、サムエルに「神の箱」がある神殿の番をさせていたようです。「神の箱」とは、モーセに授けられた律法を刻んだ石の板が収められている箱のこと。最も信用された者が、この箱の警備に当たります。

 

2人の間には、たいへん強い信頼関係があるようでした。サムエルに対するエリの呼びかけは丁寧で、エリに対するサムエルの態度も誠実です。エリは、息子たちの教育には失敗しましたが、その他のことは非常にきちんとしていました。自分自身の祭司の務めも、サムエルの面倒もよく見られていた。それだけに、残念なお告げが降ります。

 

ある日、神殿で寝ていたサムエルに、神様の声が聞こえてきました。けれども、初めて神に呼びかけられた少年は、それが神様だと分からずに、エリだと思ってしまいます。「お呼びになったので参りました」……夜中に走ってきた少年の言葉に、エリの方も困惑します。「わたしは呼んでいない。戻っておやすみ」……それが数回続きます。

 

98歳の年老いた男性が、寝ているところを幼い子どもに起こされる。一度ならともかく、二度、三度と続けば、いたずらは止めなさいと怒り出してもおかしくありません。けれども、エリは怒るどころか、より優しく返答します。「わたしは呼んでいない。わが子よ、戻っておやすみ」

 

そして、ついに三度目になって、彼はこの少年が神に呼びかけられているのだと気づきます。祭司をしている自分にではなく、自分を手伝うこの少年に、神が直接呼びかけられた……けっこう危機的な事態です。自分はお役御免なのか? 神様がこの少年にお告げをする前に、「主よ、わたしがここにいます」と言いたくなります。

 

しかし、エリは落ち着いてサムエルに言いました。「もしまた呼びかけられたら、『主よ、お話しください。僕は聞いております』と言いなさい」……私ではなく、お前に語ろうとする神の言葉を聞きなさい。彼は邪魔せず、そう促します。しばらく前に、息子たちのことで神から怒られていたエリは、薄々、自分にとってよくないことが言われることも予想していたんでしょう。

 

サムエルに対し、神様はこう言います。「わたしはエリに告げ知らせた。息子たちが神を汚す行為をしていると知っていながら、とがめなかった罪のために、エリの家をとこしえに裁く、と」……朝になって、このことを聞いたエリは、サムエルに優しく言いました。「それを話されたのは主だ。主が御目にかなうとおりに行われるように」

 

自分の過ちを認め、少年に逆恨みせず、神の裁きを受け入れる。「主よ、40年間仕えてきたんです。どうか私を憐れんでください」とは言いません。不思議なことに、彼は一切赦しを乞わない。少年にとりなしも頼まない。ひたすら静かに聞いています。

 

このような態度を見るとき、エリのことを、いわゆる「堕落した聖職者」と呼ぶのは、何だか違う気がします。彼は、息子たちに対しても、全く注意しなかったわけではありません。「なぜそのようなことをするのだ。わたしはこの民のすべての者から、お前たちについて悪いうわさを聞かされている。息子らよ、それはいけない」

 

暴れ回る子どもたちに対し、老齢ながら必死に叱っていたわけです。彼の忠告は、形だけのものには思えません。「人が人に罪を犯しても、神が間に立ってくださる。だが、人が主に罪を犯したら、誰が執り成してくれよう」……取り返しのつかないことになる。頼むから悔い改めなさい。深刻な口調で、彼は諭そうとしていました。

 

けれども、息子たちは耳を貸そうとしませんでした。ここまできたら、もう祭司の務めから追放するしかありません。これ以上罪を重ねないように、祭司を辞めさせ、家から追い出し、厳しく彼らを処罰する。ただ、そこまではできないようでした。エリの弱さの現れです。彼は、息子たちにこれ以上介入することができません。

 

下手すれば、自分の方が追い出されかねない。子どもに暴力を振るわれかねない。100歳近い自分が、目の見えない自分が、手を焼いている子どもたちと正面からやり合うなんて絶対できない……彼の気持ちも分かります。ただ一つ、共感しづらいことがあるとすれば、エリは一度も、子どもたちと神との間に立って、とりなそうとしなかったことです。

 

「主よ、身勝手な子どもたちを赦してください。あの子たちを裁けない私を赦してください。どうか、彼らの生き方を変えてください。反省し、厚生し、あなたに仕えるように道を正してください」……そんな祈りはありませんでした。そう、彼は何よりも、人と神との間に立つのを恐れていました。

 

「人が人に罪を犯しても、神が間に立ってくださる。だが、人が主に罪を犯したら、誰が執り成してくれよう」……一見、信心深く見えますが、本来「祭司」とは、罪を犯した人々と、神との間に立ってとりなし、犠牲をささげ、赦してもらえるよう働きかける存在です。多くの人をとりなしてきた祭司エリは、息子のために犠牲をささげることがない。

 

「あなたの一人息子をささげなさい」と言われた、アブラハムのことを思い出しますね。なぜか、聖書に出てくる民の指導者は、自分の家族が助かるように、とりなすことができません。他の人のためにはとりなせるのに……現在の私たちも似たようなことがあるでしょう。

 

たくさんの人を教えてきた先生が、娘、息子のことは上手く教えることができない。人々を取り締まってきた警察が、身内の不正は取り締まれない。多くの命を救った医者が、子どもたちの不摂生は治せない。その子が助かるために、介入しなきゃいけないことは分かっているけど、強く出られず、思い切って行動できない。

 

気がついたら見て見ぬ振りをし、現状をほったらかし、期待することもやめている。エリも、息子たちの反省を、成長を、期待できなくなっていました。自分が息子たちと神との間に入っても、とりなせないと思っていました。この現実は動かない。揺るがすことができないだろう。

 

神様は、そんな彼に叫んで欲しかったのかもしれません。「主よ、どうか私の息子を助けてください!」「どうしようもないあいつらを救ってください!」……人々の手前、身内である彼らのために犠牲をささげ、とりなしの祈りをするなんて、許されなかったのかもしれません。「まずは父親であるお前が何とかしろ」と言われることを恐れたから。

 

赦しを乞えない。自分にそんな資格はない。神の裁きは覆せない……けれども、それを自覚している人たちにこそ、神様はしつこく迫ります。早いとこ裁きを下せばいいのに、赦しを乞うのを待つかのように繰り返す。「わたしはあなたを裁こうとしている」「あなたの共同体を撃とうとしている」

 

それでも、赦しを乞えない人の姿が、まさにエリの姿です。人と神との間に立てない、私たちの姿です。けれども、そんな私たちを救うため、神様は、自分と人との間に立ってとりなす方を遣わします。身内でさえ、赦しを乞えない人のために、「助けてください」と言われる方を送り出します。それが、神と人との間に立たれるイエス様です。

 

私たち、親と子の命に代わって、自分自身をささげた方……「彼らは何をしているのか知らないのです」と庇った方……この方が、今日もあなたをとりなしています。あなたがとりなせなくなった、赦しを乞えない相手のことも、一緒にとりなしておられます。誰かのために関われない、誰かのために祈れないときこそ、イエス様を思い出してください。

 

イエス様を送った神様を思い出してください。あなたの主は、あなたとの平和を望んでおられます。あなたの赦しを願っています。関係性の回復を実現しようとされています。もし、その呼びかけに気づいたなら、静かにこう返しましょう。「主よ、お話しください。僕は聞いております……」と。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(兵庫県神戸市の神和教会)のために、高齢者施設のために、自治体の職員のために、岐阜地区の教会のために、祈りを合わせましょう。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆兵庫県神戸市の神和教会のために祈ります。創立70周年を迎える教会の記念事業が、あなたの祝福の内に行われますように。子どもたちと、教会員と、牧師の健康が支えられ、信仰を豊かに育むことができますように。

◆高齢者施設のために祈ります。全国でクラスターが発生している福祉施設や介護施設、病院の利用者、職員、家族を支え、回復へと導いてください。責めと恥からみんなを守り、生きる喜びを与えてください。

◆自治体の職員のために祈ります。通常の業務に加えて、感染症対策で疲弊している人々を、あなたが癒し、助けてください。ストレスと過労が軽減され、適切な働きができるように、一人一人を導いてください。

◆岐阜地区の教会のために祈ります。寒波による積雪や凍結のある地域に、あなたのお守りがありますように。フィリピン合同教会の人たちをはじめとする滞日外国人のみんなが、怪我や病気から守られるように助けてください。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

オンライン賛美歌「あなたが共にいること」(©️柳本和良)を歌いましょう。オンライン讃美歌の楽譜は、著作者の許可を得て掲載しています。

 

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主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。主の祈り。

 

天にまします我らの父よ。

願わくは御名をあがめさせたまえ。御国を来たらせたまえ。

みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。

我らの日用の糧を今日も与えたまえ。

我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、 我らの罪をも赦したまえ。

我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ。

国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり。アーメン。

 

報 告

本日も、配信を通して在宅聖研にご参加くださり、ありがとうございます。先週の在宅聖研は、私と奏楽者の2名、同時に視聴されていた4名、計6名の出席でした。後から配信や原稿を見て、祈りを合わせてくださった方も感謝致します。

 

来週の水曜日も、配信等による在宅聖研を行います。会衆が集まる集会の再開は、2週間毎に役員会で検討し、決定次第、教会員への連絡網とホームページのお知らせでお伝えします。また日曜日まで、皆さん一人一人に神様の平和がありますように。