ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『子どもがヤバいことになる』 ルカによる福音書2:25〜38

聖書研究祈祷会 2020年7月22日


『子どもがヤバいことになる』聖書研究祈祷会 2020年7月22日

 

讃美歌

それではただいまより、聖書研究祈祷会を始めます。最初に、オンライン賛美歌「歌い、踊り、跳ね、笑い、叫べ」(詞:柳本和良、曲:滝田真治)を歌いましょう。飛沫感染を避けるため、マスクをしたままで歌いします。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

◆愛と力の源である私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて、聖書の言葉を受け取る時間が与えられ、感謝致します。どうか今、ここにいる人も遠くにいる人も、互いに祈りを合わせる時間が豊かに持てますように。

◆私たちの神様、様々な要因で追い詰められ、逃げ場を失った人たちに、必要な支えと慰めがもたらされるよう導いてください。生と死の間で揺れ動く一人一人に、あなたの癒しと力を与えてください。

◆私たちの神様、香港で不当な圧力を受けている人たちに、あなたのお守りとお支えがありますように。一人一人が感染症や暴力から守られて、健全な意志決定をしていくことができるように助けてください。

◆私たちの神様、家族、友人、恋人が破壊的団体に入ってしまい、離れ離れになった人が再び関係を回復できるよう導いてください。適切な環境とタイミングが与えられ、健全な生活が取り戻せるよう助けてください。

◆私たちと共におられるイエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。ルカによる福音書2:25〜38(新共同訳より抜粋)

*当ブログ全体における聖書の引用を適切な範囲内で行うため、後ほど聖書箇所のみ記載し、本文をカットすることがあります。後からご覧になる方は、該当する聖書箇所を日本聖書協会の「聖書本文検索」か、手元に新共同訳聖書がある方はそちらからお読みください。

www.bible.or.jp

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Aamir Mohd KhanによるPixabayからの画像

メッセージ

それって祝福?

イエス様が生まれて間もない頃、両親であるマリアとヨセフは、神殿で献げ物をするためにエルサレムへやって来ました。その時、シメオンという老人が2人に抱えられた幼子を見て、急に神様をたたえ始めます。「これは万民のために整えてくださった救いで、異邦人を照らす啓示の光、あなたの民イスラエルの誉れです!」

 

どうやら、イエス様を見てすぐ「この子が救い主だ」と気づいたようです。実は、信仰のあつかったシメオンは、神様が遣わすメシア、救い主に会うまでは決して死なないとお告げを受けた人物でした。相当な高齢者であったことが予想されます。彼に突然こんなことを言われたマリアとヨセフも驚いたでしょう。

 

見ず知らずの老人が、いきなり「この子は特別だ!」と騒ぎ出し、頼んでもいないのに自分たちを祝福するんですから。ただし、このエピソードは単に子どもの誕生を喜ぶだけで終わりません。シメオンは彼らを祝福して、マリアにこんなことを言うんです。

 

「御覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています」……おや? 「祝福した」とあるのに、あまり喜べる内容じゃありません。イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりする……それって、何かの戦いに関わってしまうと予想させます。

 

さらに、「反対を受けるしるしとして定められている」なんて、敵対する者が出てくること、その運命から逃れられないことを予感させます。はっきり言って、祝福しているとは思えない、むしろ不吉な発言です。その上、母親に向かって「あなた自身も剣で心を刺し貫かれる」と言ってきます。

 

これを聞いたお母さんは、咄嗟に自分の子どもが不幸に遭う、具体的に言えば「誰かに殺されてしまう」と予告された気分になるでしょう。事実、シメオンの預言はイエス様が全ての人のために十字架にかかって殺されること、それによって母マリアも苦しむことを暗示しています。子どもがヤバいことになる……もはや呪いの言葉です。

 

差別のど真ん中

こんなことを言いながら、「約束の救い主にとうとう会えた!」と無邪気に喜ぶシメオンが、かえって不気味に見えてきます。いやいや、言われる人の気持ちを考えろよ……と責めたくなります。けれども、老人の言葉は彼自身にとっても非常に危ういものでした。なにせ、舞台はエルサレム神殿のど真ん中、異邦人の進入が許されていない聖域です。

 

その場で彼は高らかに宣言する。「これは万民のために整えてくださった救いで、異邦人を照らす啓示の光」……古代イスラエル社会で、異邦人は異教の神々を持ち込んできた忌むべき存在、関わってはならない人種です。ユダヤ人の多くは、救いはイスラエルに約束されたもので、異邦人なんて救われるわけないと思っていました。

 

むしろ、「神様は異邦人にも救い主をもたらす!」なんて宣言すれば、律法を厳格に守って来たユダヤ人から袋叩きに合うかもしれません。それを「正しい人で信仰があつい」と言われていた、古い世代の老人が声高らかに言うんですから、びっくりするような出来事です。彼を尊敬していた人々も、一気に引いてしまったかもしれません。

 

同時に、彼以外にも救い主を見てリスキーな喜び方をした人がいました。それは、新約聖書に一人しか出てこない女性の預言者アンナです。彼女も非常に歳をとっており、若いときに夫を亡くしていました。結婚してたった7年でパートナーを失った。周りから見れば、神様の祝福を受けているのか疑わしい人物です。

 

さらに、祭司でもない高齢の女性が、神殿を離れることなく、夜も昼も神様の言葉を人々に伝えていたとしたら、神殿で働く男たちにとって非常に目障りな存在だったでしょう。あまりにここで目立ってしまえば、非力な老女に危険が及ぶかもしれません。下手すれば、神殿に近づくなと無理やり追い出されるかもしれない。

 

にもかかわらず、彼女はイエス様を見ると、近づいてきて神を賛美し、みんなにこの子のことを話していきます。若くして夫に先立たれた女性、それだけで偏見や差別の対象となる高齢者が、差別の対象であった異邦人と万民の救いをもたらす幼子のことを話していく……2人の老人は、この後エルサレムのど真ん中で穏やかな最期を迎えられたのか?

 

むしろ私は、これらの行動によって一波乱あっただろうなと思います。信頼を失ったり、居場所を失ったりしたかもしれない。でも、それが予想されてなお、彼らは喜ばずにいられなかった。怖いものなしの若者だった頃のように。様々な脅威や危険を感じてなお、これからの出来事にワクワクしている子どものように。

 

安定を崩す宣言

そう、「これからヤバいことになる」と宣言されてしまった幼子は、既にこのとき、出会った人間にヤバい行動をもたらしていました。普通ならしない行動を、喜べない選択をさせてしまう。一見悪い予感しかしないのに、その先にある希望を示し、「ご覧なさい、思ってもみない救いがやってきました!」と言わせてしまう。

 

渋谷にいた頃、高齢にもかかわらず、平和を願ってデモに参加する人たちと会いました。「家に帰ったらまた怒られるかな……」と言っていたので、たぶん、家族に良い目で見られない中、大人しく家にいてと思われる中、やってきたんだと思います。

 

「何考えてるの?」と責められるのは分かってる。でも、一緒に突き動かされた人たちと、変化を期待せずにはいられない。この後が苦しくても、将来自分たちの望む平和が、子どもたちに、孫たちに訪れる……そんな希望と出会ってしまった。

 

今、香港で様々なリスクを負いながら抵抗している人たちも、普通ならしない選択をする希望と出会ったのかもしれません。目先の変化に怯えるよりも、さらに先の希望に信頼する力を誰かからもらったのかもしれません。様々なヤバさの中で、高らかに声を挙げている人たちと、私たちも祈りを合わせたいと思います。

 

分かち合い

配信はここまでにしたいと思います。もし、動画を見ている方で、分かち合いたいことや質問がある場合は、動画のコメント欄をご利用ください。あなたの手が、キリストの愛と平和で満たされますように。

 

それでは、今日参加された方々と感想や質問を分かち合いたいと思います。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(愛媛県宇和島市の宇和島中野町教会)のために、病気や障がいで偏見を持たれる人のために、部落差別や人種差別を受けている人のために、香港で不当な圧力を受けている人のために祈りを合わせます。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆愛媛県宇和島市の宇和島中野町教会のために祈ります。出張聖餐を楽しみしている人たちが、またその恵みにあずかることができますように、必要な知恵とヒントをお与えください。一刻も早く、新型コロナが収束しますように導いてください。

◆病気や障害で偏見を持たれる人のために祈ります。見た目や振る舞いの違いによって、その人の特性でないものも一緒に見られる人たちが、より生きやすい世の中になるよう導いてください。

◆部落差別や人種差別を受けている人のために祈ります。今も自分の出身によって生き方の選択が困難にされている人々に、あなたの助けがありますように。どうか部落出身の方々や在日朝鮮の方々、滞日している外国の方々が守られますように。

◆香港で不当な圧力を受けている人のために祈ります。デモに参加して拘束された人、暴力を受けた人にあなたの癒しと回復がありますように。どうか力を削がれた人々に平和へつながる力がもたらされますように。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

オンライン賛美歌「歌い、踊り、跳ね、笑い、叫べ」(詞:柳本和良、曲:滝田真治)をもう一度歌いましょう。

 

主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。主の祈り。

 

天にまします我らの父よ。

願わくは御名をあがめさせたまえ。御国を来たらせたまえ。

みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。

我らの日用の糧を今日も与えたまえ。

我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、 我らの罪をも赦したまえ。

我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ。

国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり。アーメン。

 

以上で聖書研究祈祷会を終わります。また日曜日まで、あなたに平和がありますように。