ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『全部分けなきゃいけませんか?』 使徒言行録4:32〜37

聖書研究祈祷会 2022年7月13日


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案 内

華陽教会では、マスク・消毒・換気・加湿・三密回避の座席調整をした上で、聖書研究祈祷会に集まっています。共に今、教会にいる人も、配信を見ている人も、互いのために祈りを合わせ、聖書の言葉を味わいましょう。

 

讃美歌

マスクをしたままで、讃美歌21の401番「しもべらよ、み声聞け」を歌います。諸事情でマスクを外している方は、歌うのをご遠慮いただき、心で賛美を合わせましょう。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

 

◆愛と平和の源である、私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて聖書研究祈祷会を始めることができ、感謝いたします。どうか今、ここに集まった人たちと、自宅で、施設で、職場で、屋外で、あなたの言葉を求めている人を導いてください。

◆私たちの神様。痛ましい事件に不安が募っている人や、心が騒いでいる人に、あなたの慰めがありますように。どうか今、それぞれに必要な支えと休息がもたらされ、日常が回復されていきますように。

◆私たちの神様。大きな事件によって、差別、偏見、誤った理解にさらされる人たちが、あなたによって守られますように。どうか今、事件を起こした人と背景が重なる人たち、同じ境遇の人たちに、攻撃ではなく助けがもたらされますように。

◆私たちの神様。全国で新型コロナの感染が幼児や児童の間で広がっています。どうか今、子どもたちのワクチン接種が進み、感染した子どもの治療が進み、入院できない子どもが再び出てこないように、助けてください。

◆人と人との間におられる、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。使徒言行録4:32〜37の新共同訳と聖書協会共同訳を朗読します。

*日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、配信終了後に聖書箇所のみ記載し、本文をカットしています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。

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youngki sonによるPixabayからの画像

メッセージ

使徒言行録には、ペトロとヨハネをはじめとする弟子たちによって、イエス・キリストを信じるようになった人々が、自分の持ち物を共有して、土地や財産を分け合って、みんなで暮らしていたと記されています。物欲や金銭欲が放棄され、執着心から解放されて、仲間と支えあって生きる、理想的な信仰生活に見えてきます。

 

一方で、こんなふうには生きられない……と、私たちにため息もつかせます。貧しい仲間が、健康で文化的な生活を送ることができるよう、家族のために購入したマイホームを手放そうなんて、正直自分には思えない。

 

治療が必要な信徒のために、友達との旅行に使うつもりだったボーナスを手放すなんて、ちょっと私には考えられない。教会のために積み立ててきた施設整備資金を、同じ地区の困窮している伝道所のために手放そうなんて、正直決められるわけがない。全部手放す、全部分けるって、どうあがいてもできません。

 

当たり前の感覚です。持ち物を分け合うって、自分が納得すればできるものでもありません。家や土地には、一緒に住んでいる家族がいます。銀行に預けてあるお金には、子どもの進学に必要なお金も、親が入院したときに必要なお金も入っています。祖父や祖母から形見としてもらった家屋もあります。それらを手放すって、必ずしも美化できません。

 

「信じた人々の群れは心も思いも一つにし、一人として持ち物を自分のものだと言う者はなく、すべてを共有していた」……この一文、人によっては、破壊的カルトの共同生活を思い浮かべてしまうでしょう。貯金は全て献金させられ、毎月、収入を把握している指導者から、いくら献金しなさいと勧められ、家賃の支払いにも困り、他のメンバーとルームシェアして、何とか日々を凌いでいる。そんな、どこかの状況が浮かんできます。

 

聖書を用いるカルトによっては、まさに今日読んだ記事から引用して、自分の持ち物に執着せず、全てをささげることが、本当の信者だと言ってきます。しかし、そうやって献金を強要された信者は貧しくなり、苦しくなり、結局、聖書の言葉から離れていきます。「信者の中には、一人も貧しい人がいなかった」という言葉は実現せず、「指導者は豊かに、信者は貧しくなっていった」という現実ばかりが残ります。

 

初代教会の信徒の様子を「理想的な信仰生活」として、無邪気に受け取ってしまうことは、避けなければなりません。簡単に美化しても、単純に自分たちへ当てはめてもいけません。よく見ると、この記事の話も、決して、立派な人たちが、立派な献げ物をしたという話ではないんです。

 

おそらく、この記事を読んで印象に残るのは、自分の土地や家を売っては代金を持ち寄り、使徒たちの足もとに置き、必要に応じて各々に分配していた人たちでしょう。その代表的な例として、レビ族の人で「バルナバ」と呼ばれていたヨセフが、持っていた畑を売り、その代金を使徒たちの足もとに置いたことが記されています。

 

自分の土地を持っている裕福な人が、貧しい仲間たちへ分配されるよう、自ら土地を手放して、献金を持ってきた……優しく、正しい人による思いやりに満ちた行動に感じます。しかし、よく見ると不思議です。ここに出てくる「レビ族」というのは、祭司の一族として、特別な役割を与えられるため、継承する土地を、自分の土地を、持たないはずの一族でした。

 

彼らレビ族は、自分たちの仕える神こそが、自分たちに与えられた財産であると言われています。それなのに、バルナバと呼ばれるヨセフは、なぜか自分の土地である畑を所有しています。さらに、「バルナバ」という名前は、「バル・ネボ」(ネボの子)というユダヤ人にはあまり見られない名前であるため、本当にレビ族だったのか、疑わしく思われます。

 

実際、彼の出身であるキプロスは、ユダヤ人ではない外国の人々が住む土地で、魔術師や偽預言者が闊歩している地域でした。そこの出身で、レビ族で、畑を所有しているという矛盾だらけの人物が、突然ここで登場し、使徒たちの足もとにひれ伏します。「このお金をみんなのために使ってください」と、土地の代金を差し出します。

 

もしかしたら、彼はレビ族じゃないのに、祭司の家系であるレビ族だと自称していたのかもしれません。もしかしたら、血筋を偽って活動していた、偽預言者だったのかもしれません。もしかしたら、誰かを騙して築き上げた財産が、彼の手元にあったのかもしれません。そんな彼に向かって、使徒たちは「慰めの子」と呼びかけます。「慰めの子」と呼ばれるようになったヨセフは、確かに慰められ、自らも慰める者となっていきました。

 

この話、実は、思いやりのある、敬虔な生き方をしてきた金持ちではなく、自分を偽って、愚かな生き方をしてきた人が、自分の築き上げたものを手放した瞬間だったのかもしれません。そう、バルナバと呼ばれるヨセフは、バルイエスと呼ばれるエリマや、パウロと呼ばれるサウロのように、神様と、イエス様と出会って、それまでの生き方ができなくなって、新しい生き方へ変えられていった、信徒の一人なのかもしれません。

 

このエピソードは、イエス様を信じる人たちに「全部分けなきゃいけませんか?」と度々つまずかせるところです。全てをささげることが命じられていると思い込まされ、無茶な献金を強要するのに、利用されてきたところです。でも、実際は、そういう話じゃありません。

 

持ち物を共有する人々の話は、古い生き方から変えられて、新しい生き方をささげるようになった人たちの話です。本来、支え合わないはずの人たちが、互いに支え合うように変えられていった話です。誰かが犠牲になって貧しくなる話ではなく、一人も貧しい人がいなくなった話です。

 

だから、私たちも共有しましょう。痛みも、不安も、葛藤も、抱え込んだ手を開いて、仲間の足もとへ置きましょう。互いに慰め、互いに励まし、互いに支え合いましょう。心も思いも一つにし、喜びも苦しみも、自分一人で抱え込まず、一緒に分け合っていきましょう。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(神奈川県足柄下郡の湯河原教会)のために、医療従事者のために、政治に携わる人のために、カルト2世のために、祈りを合わせましょう。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆神奈川県足柄下郡の湯河原教会のために祈ります。会員の健康が守られ、礼拝に集まる人が増えますように。聖書研究会や子どもたちの礼拝が再開できますように。奏楽者が与えられ、賛美が充実しますように。教会債が返済できますように、導いてください。

◆医療従事者のために祈ります。新型コロナウイルスの感染が再び急激に増えてきました。特に子どもたちの間で感染が増えています。どうか今、医療従事者の心と体が支えられ、子どもたちの治療と回復が導かれますように。

◆政治に携わる人のために祈ります。参議院選挙が終了し、新たなメンバーで政治が行われていきます。どうか今、選出された一人一人の良心が強められ、誠実に役目を果たすことができますように。また、反社会的な団体との関係が見直されますように。

◆カルト2世のために祈ります。人間関係を制限され、進路や職業を制限され、趣味や楽しみを没収され、家族を壊され、自己肯定感を崩された、全国の被害者に、あなたの癒しがありますように。どうか今、一人一人に必要な助けと回復が導かれますように。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

マスクをしたままで、オンライン賛美歌9番「たくさん悩んでみたけれど」(©️柳本和良)を歌います。

 

 

主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。讃美歌21の93-5Aです。主の祈り。

 

主の祈り93-5A

天にまします我らの父よ。
願わくは御名をあがめさせたまえ。
御国を来たらせたまえ。
みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。
我らの日用の糧を今日も与えたまえ。
我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ。
我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ。
国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり。
アーメン。


日本聖公会/ローマ・カトリック教会共通口語訳

天におられるわたしたちの父よ、み名が聖とされますように。
み国が来ますように。
みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。
わたしたちの日ごとの糧を、今日もお与えください。
わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします。
わたしたちを誘惑におちいらせず、悪からお救いください。
国と力と栄光は、永遠にあなたのものです。アーメン。

 

報 告

本日も、聖書研究祈祷会にご参加くださり、ありがとうございます。先週の聖書研究祈祷会は、教会に集まった4名、同時に視聴された3名、計7名が参加されました。後から動画や原稿を見て、祈りを合わせてくださった方も感謝致します。

 

配信終了後、時間のある方は、14時半まで、2階集会室にて、自由に質問や感想が言える第二部「分かち合い」のときを持とうと思います。また日曜日まで、皆さん一人一人に神様の平和がありますように。