ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『神の子の怪しい系図』 マタイによる福音書1:1〜16

聖書研究祈祷会 2021年7月21日


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案 内

華陽教会では、感染症拡大を防ぐため、マスク・消毒・換気・加湿・三密回避の座席調整をした上で、聖書研究祈祷会も配信しながら行っています。共に今、教会にいる人も、配信を見ている人も、互いのために祈りを合わせ、聖書の言葉を味わいましょう。

 

讃美歌

マスクをしたままで、讃美歌21の353番「父・子・聖霊の」を歌いましょう。諸事情でマスクを外している方は歌うのをご遠慮いただき、心で賛美を合わせましょう。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

 

◆父・子・聖霊なる私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて聖書研究祈祷会を始めることができ、感謝致します。どうか今、ここに集まった人たちと、自宅で、施設で、職場で、屋外で、あなたの言葉を探している人を導いてください。

◆私たちの母なる神様。先日は、華陽教会に転入者が与えられ、新たな仲間を迎えました。コロナ禍の中で、大きな喜びと祝福が与えられたことを感謝致します。どうか今、共に歩む教会員、その家族、一緒につながっている人たちに、あなたの祝福がありますように。

◆私たちの父なる神様。今度の日曜日には、依存症からの回復支援をしている、岐阜ダルクのスタッフが信仰の証をしてくださいます。どうか今、話をされる人たちに、あなたのお守りとお支えが豊かにあって、みんなで希望を分かち合うことができますように。

◆私たちの友なる神様。8月15日には、長いこと配信を通して礼拝を守り、一緒に聖書を学んできた仲間が、洗礼を受ける予定です。どうか今、彼女の健康と安全が守られ、あなたと私たちがますます強くつながって、愛と平和の実現に加わることができますように。

◆人と人との間におられる、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。マタイによる福音書1:1〜16(新共同訳より抜粋)

*当ブログ全体における聖書の引用を適切な範囲内で行うため、後ほど聖書箇所のみ記載し、本文をカットすることがあります。後からご覧になる方は、該当する聖書箇所を日本聖書協会の「聖書本文検索」か、手元に新共同訳聖書がある方はそちらからお読みください。

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dandelion_teaによるPixabayからの画像

メッセージ 

聖書を通読しようと思って、新約聖書の冒頭から読み始めた人は、まず、マタイによる福音書の最初に出てくるイエス・キリストの系図につまずくでしょう。よく分からないカタカナの名前がずらっと並んでいる。どうやら、神の子、イエスの家系図らしい。アブラハムから始まって、イエスの父ヨセフの代まで、誰が誰から生まれたのかを記している。

 

端的に言って、つまらないですよね? 今月は「三位一体」と「キリスト論」をテーマに「イエスの正体とは何か?」ということを考えてきました。この箇所は、まさにイエス様が誰から生まれて、誰と関係していて、どんな方であるかを示そうとした箇所でもあります。しかし、ただ名前を並べられても、ほとんどピンと来ないでしょう。

 

また、先週の聖書研究でも話しましたが、イエス様は、母マリアが夫ヨセフと結婚する前に、聖霊によって彼女に身ごもり、生まれてきた存在です。父ヨセフが誰から生まれ、誰の子孫であるかをズラッと並べたところで、彼らとイエス様は、血のつながりがないことになります。イエス様が誰の子孫か示そうとしても、これでは意味がありません。

 

にもかかわらず、これを「イエス・キリストの系図」として残しているのは、神の子であるイエス様が、どんな人々の身内になったかを示している……真の神であるイエス様が、真の人となって関わる相手を示している……そんな系図でもあるんです。言い換えれば、イエス様は、あなたの身内になって、あなたを救いに来た方だと示しているんです。

 

一番初めに、イエス様はアブラハムの子孫であることが記されます。アブラハムと言えば、ユダヤ教やキリスト教では「信仰の父」として有名です。イエス様も、模範的な信仰者の子孫だと言われているように感じます。一方で、アブラハムは神の言うことを信じないで「笑った」人物でもありました。神を笑った人物の身内として、イエス様は生まれてきます。

 

二番目に、イエス様はダビデの子孫であることが記されます。ダビデと言えば、「神と共に歩んだ」イスラエルの偉大な王として有名です。イエス様も、神に従う忠実な人の子孫として、生まれてきたように感じます。一方で、ダビデは神の意志に反して、人妻であるバトシェバと不倫をした王でもありました。神に背いて不貞を働いた人物の身内として、イエス様は生まれてきます。

 

また、男性中心のユダヤ社会では珍しく、この系図には4人の女性が出てきます。しかも、彼女たちは、異教の神々を持ち込む存在として、嫌われた異邦人であることが共通しています。単に出身が違う、背景が違うだけではありません。彼女たちは生々しく、苦々しい歴史を思い起こさせる存在です。

 

最初に出てくるタマルは、約束を破って自分を切り捨てようとした夫の姑と子どもを作った女性でした。その次に出てくるラハブは、イスラエル人がエリコへ侵入するのを手伝った異邦人の娼婦でした。ルツは、アブラハムの甥であるロトが、娘たちとの近親相姦で設けた子孫、モアブ人の女性です。ウリヤの妻は、ダビデ王が不倫をした相手でした。

 

イエス様は、厭われた者の身内として、娼婦の身内として、近親相姦や不倫で生まれた人の身内として、生まれてきます。ここまででもう、お腹いっぱいになりますが、系図はさらに、神に従わなかった王や、国を滅亡させてしまった指導者の名前まで記します。イエス様は、取り返しつのつかない失敗をしてきた、数多の人の身内として生まれます。

 

お分かりいただけたでしょうか? 神の子が受肉して人になった、という出来事は、裕福な人が貧しい服を着て、ボロボロの家に引っ越した、というような話じゃないんです。犯され、汚され、追い出された人の肉親になり、一緒に痛み、一緒に励まし、一緒に過ちを背負うことなんです。

 

イエス様の正体を説明しようとするこの系図は、清く、正しく、美しい家柄を示すものではありません。むしろ、関わることをためらうような歴史や背景を持つ私たちに、神が自ら身内となって、ありえないつながりをもたらした、とんでもない出来事を証ししている系図なんです。

 

神を笑ったことがある者、不貞を働いた者、友を死なせてしまった者、体を売って暮らす者、不倫や近親相姦で生まれた者、共同体を壊した者、騙され捨てられ病んだ者、「汚れた者」と言われる者、「汚れた者」と感じる者……イエス様は、あなたの身内です。あなたのために生まれて、死んで、復活し、天に昇って、聖霊を送り続けている方です。

 

キリスト教の信仰とは、この方が、あなたの身内だと信じることです。一緒に、神様を「父」と呼び、「母」と呼び、「友」と呼ぶ。一緒に、自分の過ちを悔い改め、新しい生き方を築いていく。一緒に、嘆き、悲しみ、憤る。神様は、あなたが清くなるのを待っている方ではありません。あなたのもとへもう来て、あなたと一緒に変わっていくんです。

 

どうぞ、聖書に記された系図の中に、あなたの名前も入っていることを理解してください。あなたから遠い立派な人、忠実な人、勇敢な人の身内ではなく、あなたと同じ痛みや失敗や苦しみを抱えてきた人の身内であることを思い出してください。キリストの正体は、あなたの救い主であり、あなたの友であり、あなたの家族なんです。主の平和が、あなたと共にあるように。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(奈良県奈良市の奈良教会)のために、依存症の回復支援のために、DV被害者のために、虐待被害者のために、祈りを合わせましょう。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆奈良県奈良市の奈良教会のために祈ります。教会に集まる礼拝も、オンラインによる礼拝も、あなたを求める人たちとつながって、恵みを分かち合うことができますように。病気の人や介護の責任を負った人が、あなたの愛に生かされて過ごすことができますように。

◆依存症の回復支援のために祈ります。薬物依存、性依存、アルコール依存をはじめとする様々な依存症に悩む人が、適切なケアと仲間に恵まれますように。周りの協力と当事者同士の回復支援が広がりますように。

◆DV被害者のために祈ります。言葉や態度や行動による暴力に抑圧された人たちが、自分の被害に気がついて、助けを求めることができますように。加害者が自分の病状に気づき、適切な治療を受けて、健全な償いへと至りますように。

◆虐待被害者のために祈ります。存在を無視され、人格を否定され、暴力を受けている人たちに、逃げる場所、避難する場所が与えられますように。安心して相談できる相手ができるように、ここにいる私たちも用いてください。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

マスクをしたままで、オンライン賛美歌18番「あの方が独り子を」(©️柳本和良)を歌いましょう。オンライン讃美歌の楽譜は、著作者の許可を得て掲載しています。

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主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。讃美歌21の93-5Aです。主の祈り。

天にまします我らの父よ。
願わくは御名をあがめさせたまえ。
御国を来たらせたまえ。
みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。
我らの日用の糧を今日も与えたまえ。
我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ。
我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ。
国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり。
アーメン。

 

報 告

本日も、聖書研究祈祷会にご参加くださり、ありがとうございます。先週の聖書研究祈祷会は、教会に集まった2名、同時に視聴された2名、計4名が参加されました。後から動画や原稿を見て、祈りを合わせてくださった方も感謝致します。

 

華陽教会では、会衆の6割が1回目のワクチン接種を終えたため、聖書研究祈祷会も、日曜礼拝も、マスク・消毒・換気・加湿・三密回避の座席調整をした上で、みんなが集まれるようにしています。初めて来る方もお会いできるのを楽しみにしています。