ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『無理に承知させられた』 使徒言行録16:11〜15

聖書研究祈祷会 2023年7月12日


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案 内

華陽教会では、賛美中のマスク・消毒・換気・加湿・三密回避の座席調整をした上で、聖書研究祈祷会を配信と並行して行っています。共に今、教会にいる人も、配信を見ている人も、互いのために祈りを合わせ、聖書の言葉を味わいましょう。

 

讃美歌

マスクをお付けいただき、讃美歌21の454番「愛する神にのみ」を歌います。諸事情でマスクの着用ができない方は、歌うのをご遠慮いただき、心で賛美を合わせましょう。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

◆正義と公正をもたらす、私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて聖書研究祈祷会を始めることができ、感謝いたします。どうか今、ここに集まった人たちと、自宅で、施設で、職場で、屋外で、あなたの言葉を求めている人を導いてください。

◆私たちの神様。今週も、様々な事故や事件に遭遇し、巻き込まれてしまった人たちに、あなたの助けがありますように。どうか今、事実の解明と対処が進み、一人一人に必要なケアと取り組みが行われますように。

◆私たちの神様。今週も、各地で差別や偏見に晒され、傷つけられてしまった人たちに、あなたの癒しがありますように。どうか今、適切な理解と認識が進み、一人一人に必要な配慮と回復がもたらされますように。

◆私たちの神様。今週も、戦争や紛争の只中で、命と尊厳を奪われてきた人たちに、あなたの憐れみがありますように。どうか今、解決に向けて事態が進展し、一人一人に必要な支援とサポートが届きますように。

◆和解と平和をもたらされる、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。使徒言行録16:11〜15の新共同訳と聖書協会共同訳を朗読します。

*日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、配信終了後に聖書箇所のみ記載し、本文をカットしています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。

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ctvgsによるPixabayからの画像

メッセージ

宣教者パウロとその仲間たちは、夢に出てきたマケドニア人に、イエス様の教えと業を語るため、トロアスから船出して、マケドニア州の第一区である、フィリピの町へ訪れました。この町はローマの植民都市で、ヨーロッパで、最初に教会が建てられた場所として有名です。

 

ところが、パウロとシラスがやって来た当初、この町には、ユダヤ人の集まる会堂さえありませんでした。いつもなら、新しい土地へ入ったときは、必ず、ユダヤ人が礼拝する会堂を訪れ、そこから宣教を始めていました。会堂は、ユダヤ人の成人男性が10人もいれば建てられましたが、この町には10人もいなかったようです。

 

代わりに、神をあがめる女性たちの集まっていた「祈りの場所」が、町の門を出たところの川岸にありました。どうやら、ユダヤ人男性は少なかったものの、神様を信じて礼拝する女性たちは何人かいたようです。しかし、女性たちのために、会堂を建てようとする人は現れず、彼女たちはいつも、外に集まって、みんなで祈りを合わせていました。

 

さて、パウロたちは、安息日になると、女性たちがいる祈りの場所へ訪れて、自分たちもそこに座り、イエス様の教えと業について話し始めました。けれども、よく考えると、町の外からやってきた男性が、女性たちの集まっているところへ、急に入って話しかけるって、けっこうリスキーな行為です。

 

近東からヨーロッパへやって来た外国人ということで、ただでさえ警戒されそうなのに、女性たちが静かに祈りをささげる場所へ、いきなり入って話しかける……そんなおじさんが現れたら、誰かが通報するかもしれません。そもそも、初対面の男性が、結婚している女性に公然と話しかけるのは、まあまあタブーな時代でもありました。

 

実を言うと、ヨーロッパで展開された最初の宣教は、周りから見ると、「大丈夫かな?」と心配されそうなスタートでした。そのまま突っ走れば、すぐにトラブルが起きそうに見えました。パウロたちは、文句なしに、上手くやれていたわけではありません。むしろ、このリスキーな接触が上手くいったのは、リディアという女性の存在があったからです。

 

彼女は、ティアティラ市出身の紫布を商う人で、おそらく、祈りの場所でみんなを世話するリーダーのような存在でした。紫布を扱う商人は、かなり裕福な家を意味しました。町の門から出たところで集まっていたこともあり、彼女は自分たちを襲う人がいないか、女性たちが安全に過ごせるか、普段から警戒していたでしょう。

 

その彼女が、近東から来た男たちに話しかけられ、追い出すことも、人を呼ぶこともなく、冷静に話を聞いたのは、驚きに値します。異なる人種、民族に対する偏見や差別感情が、今よりもずっとあからさまだった時代、彼女は冷静に、パウロたちが自分たちと一緒に座ることを許し、他の女性たちも安心して話を聞けるよう、場を取り仕切りました。

 

おそらく、それがなければ、ヨーロッパで最初にできた教会は建てられなかったでしょう。決して、パウロの手腕があったから、フィリピに入ってすぐ伝道が上手くいったわけではありません。むしろ、使徒言行録は、パウロの手腕によってではなく、「主が彼女の心が開かれたので」話を聞いて、心から信じ、他の者も仲間になったと明記しています。

 

さて、リディアは自分だけでなく、家族も一緒に洗礼を受け、パウロたちにこう願い出ます。「私が主を信じる者だとお思いでしたら、どうぞ、私の家に来てお泊まりください」丁寧な物言いですが、非常に断りにくい言い方です。実際、パウロたちはそうやって、彼女から「無理に承知させられた」と告白しています。

 

もう少し、正面から訳すと「強要した」という言葉です。実は、新約聖書で同じ言葉が使われているのは、ルカによる福音書24:29だけです。それは、エルサレムからエマオへ行く途中、復活したイエス様に出会った2人の弟子が、本人と気づかずに話し込み、「一緒にお泊りください……もう日も傾いていますから」と「無理に引き止めた」ところです。

 

「無理に承知させた」「無理に引き止めた」……一見すると、その強引さは、弟子たちに、イエス様に、迷惑な態度に思えるかもしれません。しかし、信仰とは、イエス様を無理に引き止める、「一緒に居て」と無理に承知させる、子どもが駄々をこねるような、純粋な、願いの塊でもあるんです。

 

「もう少し、一緒に居てください」「まだ、話を聞かせてください」「私のところへ泊まってください」……強引に、イエス様を引き止めた場所、弟子たちを泊まらせた場所、そこが、教会の出発点になりました。もともとの計画では、すぐ違うところへ行くはずだったにもかかわらず。

 

パウロとしては、本当はすぐ、次の場所へ行きたかったかもしれません。夢に現れたマケドニア人の男性を探したかったかもしれません。しかし、リディアが無理に承知させたことで、パウロたちはフィリピに数日間滞在し、占いの霊に取り憑かれている女奴隷や、牢に囚われていた囚人たちと会い、たくさんの者が洗礼を受けました。

 

はたから見れば、それを神の導きや恵みとして受け取る人は少なかったかもしれません。リディアが引き止めたから、パウロたちはその町で女奴隷に絡まれ、主人たちに目をつけられ、鞭で打たれて投獄されます。迷惑なことをしてくれたと、恨みを言う人が出てきても、おかしくありません。

 

しかし、いずれの出会いも、パウロにとって、弟子たちにとって、迷惑ではありませんでした。彼らは悟ります。「マケドニア州に渡って来て、わたしたちを助けてください」……夢の中で、助けを求めていた人はここに居た、彼女が引き止めて出会わせてくれた、私の意志や思い込みを超えて、神様が行くべき道を開いてくれた。

 

教会の伝道は、私たちの宣教は、思いどおりにはいきません。ときに、誰かに引き止められ、強く願われ、当初、計画していた方向とは違う道のりが始まります。しかし、先へ行こうとする私たちを、無理に引き止め、無理に承知させる、人々の切実な声と願いは、神様が、最初から、そこへ訪れるよう決めていた、教会の出発点でもあるんです。

 

華陽教会では、どんな声が聞こえてくるでしょうか? みんなに教会へ来てほしいと願う一方、教会に対して「来てほしい」「訪れてほしい」と願っている一人一人の声を、見落としているかもしれません。言えなくしているかもしれません。今改めて、かつての宣教を振り返りながら、私たちの行くべき場所、訪れる場所を見出したいと思います。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(福島県河沼郡の会津坂下教会)のために、蘇原教会のために、中濃教会のために、飛騨高山教会のために、祈りを合わせましょう。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆福島県河沼郡の会津坂下教会のために祈ります。昨年、120周年を迎えたこの教会に、あなたの祝福がありますように。記念事業として検討している牧師館の改築が、滞りなく良い形で進められますように。

◆蘇原教会のために祈ります。白川町での宣教が祝され、これからも多くの出会いがありますように。光の子保育園の働きが支えられ、地域に必要な活動が、今後も続けられますように。

◆中濃教会のために祈ります。高齢の信徒とその家族、新しく来られた人たちに、あなたの慈しみがありますように。午後から会場を貸しているフィリピン合同教会との交流も、豊かに用いられますように。

◆飛騨高山教会のために祈ります。牧師に復帰された大塚先生をはじめ、会衆一人一人の歩みが支えられますように。後任の先生が与えられるまで、牧師と家族の健康が守られ、希望を持って教会の未来図が描けますように。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

マスクをお付けいただき、オンライン賛美歌1番「枯れた谷に鹿が」(©️柳本和良)を歌います。

 

 

主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。讃美歌21の93-5Aです。オンライン賛美歌の後ろの方の4頁にも掲載しています。主の祈り……

 

 

報 告

本日も教会に集まって、また配信を通して、聖書研究祈祷会にご参加くださり、感謝致します。先週の聖書研究祈祷会は、教会に集まった 名、同時に視聴された 名、計 名が参加されました。後から動画や原稿を見て祈りを合わせてくださった方も感謝致します。

 

配信終了後、時間のある方は14:30まで、聖研の質問や感想、キリスト教について気になっていることなど自由に聞ける第二部「分かち合い」の時を開きます。人前でお祈りするのを遠慮したい方は、飛ばしてもらうこともできます。よかったらぜひご参加ください。

 

それではまた、日曜日まで、皆さん一人一人に神様の平和がありますように。