ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『過保護な千人隊長?』 使徒言行録23:23〜35

聖書研究祈祷会 2024年2月21日


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案 内

華陽教会では、賛美中のマスク・消毒・換気・加湿・三密回避の座席調整をした上で、聖書研究祈祷会を配信と並行して行っています。共に今、教会にいる人も、配信を見ている人も、互いのために祈りを合わせ、聖書の言葉を味わいましょう。

 

讃美歌

マスクをお付けいただき、讃美歌21の441番「信仰をもて」を歌います。最後の「アーメン」は、つけずに歌います。諸事情でマスクの着用ができない方は、歌うのをご遠慮いただき、心で賛美を合わせましょう。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

◆命の源である神様。今日もこうして、あなたによって守られて聖書研究祈祷会を始めることができ、感謝致します。どうか今、ここに集まった人たちと、自宅で、施設で、職場で、屋外で、あなたの言葉を求めている人を導いてください。

◆私たちの神様。キリストの受けられた苦しみと十字架の死を思い起こし、自らの罪を悔い改めつつ、イースターの準備をする、受難節第一週目を迎えました。どうか今、私たちの思いと言葉と行動を整え、誠実に、あなたの前に立たせてください。

◆私たちの神様。この期間、転入の準備をされている方、受洗の準備をされている方に、あなたの慈しみがありますように。治療のため、検査を受けられる方、病院や自宅で療養している方々にも、あなたの力が豊かに注がれますように。

◆私たちの神様。差別と抑圧、支配と暴力、対立と分断に苦しめられている人へ、あなたの助けがありますように。どうか今、歪んだ関係が改善され、適切な距離がもたらされ、和解と平和につながる道が、整えられますように。

◆心と体と魂を導く、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。使徒言行録23:23〜35の新共同訳と聖書協会共同訳を朗読します。

*日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、配信終了後に聖書箇所のみ記載し、本文をカットしています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。

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ArsAdAstraによるPixabayからの画像

メッセージ

キリスト教の宣教者パウロは、ある時ユダヤ人たちに捕まって「神殿に入れてはならない異邦人を連れ込んだ」と訴えられました。実際には、そこにいたユダヤ人たちの勘違いでしたが、もともと熱心なユダヤ教徒であったパウロが、復活したキリストと出会って回心した経緯を語ったことで、ますます彼らを怒らせてしまい、暴動が起きてしまいます。
 
そこで、ローマの千人隊長が割って入り、パウロを殺そうとするユダヤ人たちから保護しますが、最高法院での取り調べを経て、ますます論争は激しくなり、とうとう、パウロの暗殺計画まで持ち上がってしまいます。その計画に加わった者は、なんと40人以上……しかも、パウロを殺すまで飲み食いしないと誓いを立てた、強烈なユダヤ人たちです。
 
このことを知ったパウロの甥は、急いで、彼が保護されている兵営の中へ入っていき、命の危機を知らせます。すると、パウロは百人隊長の一人を呼んで、自分の甥を千人隊長のもとまで案内するよう頼みました。パウロの甥は、千人隊長と一対一で会うことを許され、保護されている自分の叔父が、暗殺されそうになっていることを知らせます。
 
「ユダヤ人たちは、パウロのことをもっと詳しく調べるという口実で、明日パウロを最高法院へ連れてくるようにと、あなたに願い出ることに決めています。どうか、彼らの言いなりにならないでください。彼らのうち四十人以上が、パウロを殺すまでは飲み食いしないと誓い、陰謀をたくらんでいるのです」
 
このまま、ユダヤ人たちの願いを承諾して、パウロを最高法院まで連れていけば、暗殺の手筈を整えたユダヤ人たちが、彼を殺してしまうだろう……計画を知った千人隊長は、「このことをわたしに知らせたとはだれにも言うな」と命じて、パウロの甥を返します。こちらが暗殺計画を知ったとバレたら、ますます保護が困難になるからです。
 
さて、ここからが面白いところです。千人隊長は、翌日、パウロが護送中に殺されることを防ぐため、その日のうちに、つまり夜中のうちに、総督フェリクスのもとまで護送するよう命じます。暗殺を企むユダヤ人たちにバレないよう、急いで彼を送り届けることにしたんです。
 
ところが、その警護に当てた人数が尋常じゃありません。百人隊長が2人も呼ばれ、歩兵200名、騎兵70名、補助兵200名を準備させ、事情を記した手紙を持たせて出発させるんです。計470名の兵隊ですから、よく考えると、百人隊長があと3人必要な軍隊です。夜中に移動させたとしても、明らかに目立ちます。
 
暗殺者にバレないよう、こっそり移送させるには向かない数……しかも、千人隊長が管理している、全兵隊の半数をカイサリアまで派遣したわけですから、その間の守りも手薄になります。どう見ても過剰な防衛です。こんな過保護な警護をしたら、かえって、夜中に大勢の兵隊たちが行進する様子を見て、騒ぎになってしまうでしょう。
 
あまり、現実的とは思えないですよね? 実は、夜のうちにエルサレム北西60キロの地点にあるアンティパトリスへ移動するのも、ちょっと無理のある想定です。出発が午後9時以後だとすれば、夜明けまで歩いても間に合いません。また、アンティパトリスからカイサリアまでも40キロはありますから、そう簡単に移動できたと思えません。
 
どうも、暗殺計画に対処する軍隊の編成も、エルサレムからカイサリアまでの移動行程も、現実とは思えないような描かれ方がされています。単純に、著者がパレスチナの地理を知らなかっただけかもしれませんが、人々が危機に対応できず、無茶苦茶な行動を取る中で、現実には守れなかったはずのパウロを、神様が守られた話にも聞こえてきます。
 
何せ、パウロを守ろうとした人たちは、みんな自分のことで一杯一杯です。千人隊長はパウロがローマの市民権を持っていると知らなかったため、彼の四肢を縛って鞭で打とうとしていたことが、処罰の対象になるのではないかと恐れていました。パウロの甥と一対一で話をしたのも、もしかしたら、自分自身の保身のためだったのかもしれません。
 
パウロから、ローマの市民権を持つ者が、裁判もなしに、縛って捕えられたことについて、黙っている代わりに何か交渉を持ちかけられるんじゃないか? そう身構えていたら実際にはもっと切羽詰まった暗殺計画を知らされて、大慌てで決断を下さなければならなくなった……そんな千人隊長の心労が垣間見えます。
 
可哀想な兵隊たちは、動揺した千人隊長による無謀な指示を受け、暗殺者にバレバレな警護と移送を行い、絶対に間に合わない目的地まで向かいます。確実に失敗するミッションです。ところが、海の前に追い詰められ、確実に逃げられなかったはずのイスラエル人がエジプト人から逃げおおせたように、パウロの護衛たちも目的地まで辿り着きます。
 
このエピソードは、パウロがローマの市民権を利用して、自分の無実を明らかにさせ、見事に生き抜いた話として、語られやすいところですが、実際のところ、みんな無茶苦茶でした。冷静に対処しているようで、無茶な判断や指示が飛び交い、上手く利用しているようで、ハラハラする展開が待っている、上がったり下がったりの場面でした。
 
それは、ここにいる私たちも同じです。神様を信じて選択すれば、祈って突き進んでいけば、必ず道は開かれると言いながら、実際にはどう考えても無謀な選択をしていたり、誤った判断をしていたり、それに気づかないまま無防備に突き進んでいます。けれども、そんな私たちに神様は日々働きかけ、目的地まで何とか導いてくださいます。
 
上手くいったから、何とかなったから、あの時の選択は正しかったんだ、この時の判断は間違っていなかったんだ……と単純に考えてしまう私たちですが、本当は、愚かな振る舞いをする私たちに、神様が辛抱強く、忍耐強く、働きかけてくださるから、何とかなってきたことを忘れてはいけません。
 
同時に、助かったパウロがいる一方で、助からなかった人たちも、聖書にはたくさん出てきます。上手くいかなかったから、何とかならなかったから、あの人たちは間違っていたんだ、信仰が弱かったんだ……と捉えるのも、決して正しくありません。聖書が語るのは、成功や失敗の単純な因果関係ではないんです。
 
むしろ、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と叫んだイエス様が、死を超えて寄り添い続けておられるのは、私たちが安易に「信仰を捨てた」「正しくなかった」と隅に追いやってしまう人たちです。キリストの受けられた苦しみと十字架の死を思い起こす、受難節のこの期間、もう一度、その出来事を噛み締めたいと思います。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(千葉県成田市の成田教会)のために、イスラエルとパレスチナのために、ウクライナとロシアのために、ミャンマーにいる人と難民のために、祈りを合わせましょう。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆千葉県成田市の成田教会のために祈ります。この教会が、チャーチコンサートや、がん哲学カフェなどを通して、ますます地域に開かれた教会となりますように。教会員と牧師の健康が守られますように。

◆イスラエルとパレスチナのために祈ります。攻撃と報復が止み、これ以上、子どもたちや市民の犠牲が出ないように、一刻も早く、誠実な解決をもたらしてください。人種、民族、信仰の違いを超えて、全ての人に、平和がもたらされますように。

◆ウクライナとロシアのために祈ります。今なお続く戦争に、苦しめられている人に、あなたの助けがありますように。両者の犠牲者がこれ以上出ないよう、傷ついた人たちが癒されるよう、あなたの平和をもたらしてください。

◆ミャンマーにいる人と難民のために祈ります。クーデター以降、厳しい状況に襲われ続けている人に、あなたの憐れみがありますように。難民として保護されることがなかなかできない人たちに、人道的な支援と判断がもたらされますように。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

マスクをお付けいただき、オンライン賛美歌26番「あなたが共にいること」(©️柳本和良)を歌います。

 

 

主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。讃美歌21の93-5Aです。オンライン賛美歌の後ろの方の4頁にも掲載しています。主の祈り……

 

 

報 告

本日も教会に集まって、また配信を通して、聖書研究祈祷会にご参加くださり、感謝致します。配信終了後、時間のある方は14:30まで、聖研の質問や感想、キリスト教について気になっていることなど自由に聞ける第二部「分かち合い」の時を開きます。

 

それではまた、日曜日まで、皆さん一人一人に、神様の平和がありますように。