ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

『神の国から遠くない?』 マルコによる福音書12:28〜34

在宅聖研祈祷会 2020年6月24日


『神の国から遠くない?』マルコによる福音書12:28〜34

 

 

讃美歌

ただいまより、在宅聖研祈祷会を始めます。最初に、オンライン賛美歌「枯れた谷に鹿が」(©️柳本和良)を歌いましょう。こちらの賛美歌は、著作者の許可を得て使用・配信しています。

 

お祈り

ひと言お祈りをします。共に心を合わせましょう。

 

◆愛と力の源である私たちの神様。今日もまた、あなたによって守られて、聖書の言葉を受け取る時間が与えられ、感謝致します。どうか今、誠実にあなたの言葉を味わって、新しい生き方ができるように導いてください。

◆私たちの神様、今日は6月最後の水曜日です。この一ヶ月も色々ありましたが、あなたがいつも一緒にいてくださったことを感謝いたします。どうか今、孤独や寂しさを感じている一人一人に、あなたのつながりを示してください。

◆私たちの神様、感染症の拡大や根強い差別、企業や政治家の不正に続き、一人一人の倫理が問われる毎日です。どうか今、私たちの目を開き、自分自身の過ちや加害性と向き合うことができるように助けてください。

◆私たちの神様、理不尽な暴力や扱いに苦しみ、訴えを聞いてもらえない人たちに、あなたの助けがありますように。一方的に我慢を強いられてきた人が解放され、周りの変化と和解がありますように。

◆私たちと共におられるイエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

聖書朗読

聖書の言葉を聞きましょう。マルコによる福音書12:28〜34

*当ブログ全体における聖書の引用を適切な範囲内で行うため、後ほど聖書箇所のみ記載し、本文をカットすることがあります。後からご覧になる方は、該当する聖書箇所を日本聖書協会の「聖書本文検索」か、手元に新共同訳聖書がある方はそちらからお読みください。

www.bible.or.jp

 

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jacqueline macouによるPixabayからの画像

メッセージ

 

言われたら嬉しい

「神の国から遠くない」と聞いて、自分が貶されていると受け取る信徒は少ないでしょう。もしも、死が近いという意味で「天国から遠くない」と言われているなら、喜んでいいのか複雑な気持ちになりますが、通常「神の国から遠くない」と言われるのは、クリスチャンにとって嬉しい反応の一つです。

 

神の国に近づいている、やがて神様に受け入れられる……あなたはそういう存在だと宣言されているからです。自分も言われてみたいですよね? 安心しなさい。あなたはもうじき、神の国に受け入れられる。もしも、神の子であるイエス様から直接そう言われるなら、これほど嬉しいことはありません。

 

あのイエス様が認めてくれた。神の子からお墨付きがもらえた。そう言って、喜んで飛び回りたくなります。でも、イエス様本人の口からこう言われたのは、私たちにとってちょっと意外な人物でした。なんと、イエス様に敵対的な姿勢をとっていた、律法学者の一人だった。

 

なぜ律法学者が?

律法学者……教会にしばらく通っていれば、彼らがどういう人たちか、すぐにイメージできるでしょう。とにかく掟を守ることにこだわり、人々に対して権威的に振る舞い、しばしばみんなを裁いてしまう律法主義に陥った人……聖書を読んでいると、あまり良いイメージは出てきません。

 

彼らは民衆の間で人気が出てきたイエス様に噛みつき、揚げ足を取ったり、罠に嵌めようとしてきた人たちです。ところが、今日読んだ聖書箇所では、その律法学者の一人が、イエス様のことを立派に思い、教師に向かう生徒のように尋ねます。「あらゆる掟のうちで、どれが第一でしょうか?」と。

 

この質問にイエス様が答えると、律法学者は「先生、おっしゃるとおりです」と同意を示し、イエス様も彼の反応を適切だと受けとめ、「あなたは、神の国から遠くない」と返されます。何度も敵対し、相手のことを批判してきた立場の2人が、突然互いのことを認めて評価し合った不思議な場面。

 

両者が互いに返した言葉は、よっぽど今までと違う、相手のことを認めざる得ない立派な返答だったんでしょうか? 「こんな答えを聞けるなんて思ってもみなかった!」という驚くべき言葉だったんでしょうか? 実はそうでもないんです。

 

当たり前の答え

「あらゆる掟のうちで、どれが第一でしょうか?」という律法学者の質問に対し、イエス様は第一に「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」という掟を挙げ、第二に「隣人を自分のように愛しなさい」という掟を答えます。

 

この2つは、旧約聖書に記された律法全体を要約するものとして、多くの人が認めているものでした。有名な神様がモーセに授けた十戒も、大きく分けるとこの2つで言い表せます。ようするに、そう珍しい答えでも意外な答えでもなく、律法を読み込んでいる人間なら誰もが納得する当たり前の答えだったんです。

 

にもかかわらず、律法学者はイエス様の答えに称賛するような態度を見せます。「先生、おっしゃるとおりです。『神は唯一である。ほかに神はない』とおっしゃったのは本当です。そして、『心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、また隣人を自分のように愛する』ということは、どんな焼き尽くす献げ物やいけにえよりも優れています」

 

イエス様はこの返事を適切だと認め、「あなたは神の国から遠くない」と律法学者に返しますが、彼の反応も、律法学者として珍しかったり、意外だったりするものではありません。もともと律法学者は「どれだけ高価な献げ物ができるか」よりも「どれだけ誠実な生き方ができるか」を大切にする人たちでした。

 

彼らの多くは、家が裕福な者でも身分が高い者でもありません。むしろ、貧しくて高価な献げ物ができない人も、神様から与えられた掟をきちんと守れば、神様との関係を誠実に保てると人々に教えてきた人たちでした。イエス様に同意した律法学者は、特別今までと違う態度を見せたわけではなかったんです。

 

共有する思い

いえ、一つだけ違ったことがありました。それは、陥れるためでも罠にはめるためでもなく、「あなたも私が大切にしているものを共有していますか?」とイエス様に尋ね始めたことです。

 

これまで、様々な慣習や細かい掟を破ってきたイエス様に対し、律法学者のほとんどは「我々はあなたとは違う」「あなたは我々とは違う」という態度で接してきました。この人は私たちの守っている掟を破壊していると言ってきました。

 

しかし、この律法学者は、イエス様の教えが自分たちの目的としているもの、神様に対して誠実であろうとする生き方を実は共有しているんだと気がつきます。

 

あなたがおっしゃっていることは、私たちが一番大事にしたい生き方を破壊するものじゃないんですね? 神様を愛し、隣人を愛する生き方から決して離れていないんですね? むしろそれを実行しようとしているんですね? 私には今、それが分かりました。

 

イエス様に同意する彼の反応には、そんな驚きと喜びが感じられるんです。そう、私たちはしばしば、対立し、敵対している者と、何一つ共有していないように感じます。「あいつは俺たちと違う」「私は彼らとは違う」そんな態度を取り続けます。

 

しかし、神の国に至る道には、この隔たりを取り除く過程があるんです。当たり前のものを共有しているのに気づかない、大切にしたい何かをお互い持っているのに分からない、そんな状況が変わっていく。イエス様との関係はそんな変化をもたらします。

 

保守、リベラル、自由主義、社会主義……様々な立場を超えて、私たちも互いに共有するもの、大事にしているものを気づかされ、イエス様と彼との関係のように、新しく変えられていくことを望みたいと思います。

 

とりなし

共に、神様から与えられたとりなしの務めを果たしましょう。本日は『信徒の友』の「日毎の糧」で紹介されている(香川県仲多度郡の多度津教会)のために、感染症の影響で仕事を失った人のために、部活や大会へ行けなくなった子どものために、怪我や病気の治療が遅れている人のために祈りを合わせます。

 

◆神様、あなたは祈りに応えて恵みを与えてくださいます。どうか今、私たちがささげる祈りをお聞きください。

◆香川県仲多度郡の多度津教会のために祈ります。昨年130周年を迎えたこの教会に、あなたの祝福が豊かにありますように。そして、愛光保育園と地域の子どもたちに、特に居場所が必要な子どもたちに、あなたの助けと恵みがありますように。

◆感染症の影響で仕事を失った人のために祈ります。お店や会社が倒産した人、辞めなければならなくなった人、心身を壊した人の上に、癒しと回復がもたらされ、新しい道が備えられますように。

◆部活や大会へ行けなくなった子どものために祈ります。練習の成果を出せなくなった、練習そのものができなくなった子どもたちに、あなたの慰めが豊かにあって、新しい目標と希望が与えられますように。

◆怪我や病気の治療が遅れている人のために祈ります。感染症の対応に伴い、手術や治療が延期されている人たちに、あなたの憐れみが豊かにあって、それぞれの心身が守られますように。

◆今も生きておられ、私たちをとりなしてくださる方、イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

讃美歌

オンライン賛美歌「すべてを売り払い」(©️柳本和良)を歌いましょう。こちらの賛美歌も著作者の許可を得て使用・配信しています。

 

主の祈り

共に、イエス様が弟子たちに教えられた最も基本的な祈りを祈りましょう。

 

天にまします我らの父よ。

願わくは御名をあがめさせたまえ。御国を来たらせたまえ。

みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。

我らの日用の糧を今日も与えたまえ。

我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、 我らの罪をも赦したまえ。

我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ。

国と力と栄えとは、限りなく汝のものなればなり。アーメン。

 

以上で聖書研究祈祷会を終わります。また日曜日まで、あなたに平和がありますように。