ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

著作権について

2021年6月10日

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OpenIconsによるPixabayからの画像

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適切な範囲内での引用を心がけるため、このような形をとらせていただいています。なお、手元に新共同訳聖書がない方は、日本聖書協会ホームページの「聖書本文検索」から該当する聖書箇所を閲覧することができます。後から動画・記事を見る方にはお手数かけますが、ご理解いただけると幸いです。

 

楽譜の掲載について

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その他

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bokushiblog.hatenablog.com

陰謀論は「盲信」でなく「疑い」から始まる

2021年6月1日

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TumisuによるPixabayからの画像

今年に入ってから、ずっと雑談の記事を更新できていませんでしたが、久しぶりにTwitterのモーメントを新しく作ったので、ブログの方でもう少し丁寧に書いておこう……と思い、こっちでも新しく記事にしました。

 

今回の記事は「疑う」ことをしていれば破壊的な運動や団体を避けられるという誤解についてです(疑問を持つなという趣旨ではありません)。

 

最近、「医療そのものの拒否」「感染症対策そのものの拒否」「メディアそのものの拒否」をもたらす極端な言動(「医者は嘘つき」「感染症対策は無意味」「メディアは信じるな」……など)が増えてきました。それらは一見、注意喚起のように見えても、恐怖を煽ることで適切なケアや情報から遠ざける陰謀論やデマの入り口となっています。

 

もちろん、医者や専門家やメディアの言うことがいつも正しいとは限りませんが、「どんな医療行為が」「どんな感染症対策が」「どんな情報発信が」どんな場合にダメなのか、定義と根拠が曖昧なままなされる主張は、たとえ善意から発信・共有されていても、陰謀論や破壊的カルトの教えと変わらない構造に陥ります。

 

電磁波や添加物の危険性を訴える場合も、空間除菌やEM菌の有効性を訴える場合も、ワクチンやマスク着用の有害性を訴える場合も、信頼に乏しい情報や曖昧な理由から発信されるのであれば、誠実な姿勢にはなりません。

 

「あるものが危険だ」と言うときも、「あるものは無意味だ」と言うときも、「あるものが効く」と言うときも、それを信じた人に及ぼす影響を甘く見てはいけません。危険を避けるために注がれる時間や労力、有効性を信じて払われる金銭、有害性を恐れて拒まれる薬……これらは人から健全な生活を奪います。

 

もちろん、勘違いや思い込み、情報が更新できてないことによる間違いは、誰にだって起こります。正しい情報のつもりで、後から誤りに気づく場合もあります。

 

大切なのは、自分の共有した内容の根拠が古かったり、曖昧だったり、信頼に乏しかったことに、後から気づいた/指摘されたとき、その内容を修正/撤回できるかです。そこが、破壊的カルトの一員と健全な社会人を分ける境界線になります。

 

これまで多くの人が言及してきたように、破壊的カルトの一員にならないために「疑う」ことは非常に大事ですが、同時にカルトも自分たち以外を「疑う」よう仕向ける構造を持っています。

 

常識を疑え、テレビを疑え、ネットを疑え……医者を、政治家を、メディアを信じるな……そこから入ってくる情報はどれも怪しい……彼らは利権のため、自分のためにみんな嘘をついている……そんなふうに、対立構造を作って自分たち以外の主張をシャットアウトさせる「情報コントロール」が自然に行われています。

 

「疑う」ことを促す内容であれば「盲信」させるカルトじゃない!……とはなりません。「あるものへの盲信」は「それ以外への疑い」とセットなんです。疑いも正しく持たないと、かえって泥沼に陥ります。

 

陰謀論、もしくはその傾向を有する主張の厄介さは、「盲信」というイメージに対して、まず「疑う」ことを促してくることです。しかも、自分たちが疑っているものを疑わなければ、世間の言うことを「盲信」している愚かな人だと思わせます。

 

何でも素直に信じることが、迷信や盲信を生み出すように、曖昧で根拠の乏しい疑いも、差別や魔女狩りなど負の遺産を生み出してきたことは、ここに挙げるまでもありません。しかし、意外と忘れがちです。

 

何かの安全性や危険性や有効性を「信じさせる」場合と同じく、「疑わせる」場合も、適切な根拠と理由による疑いなのか、恐怖を煽る「疑い」なのか、よく注意しないと、「盲信」してないつもりで、いつの間にか陰謀論や破壊的カルトの教えに引き込まれてしまいます。

 

内容が左派でも右派でも保守でもリベラルでも「疑わないとダメ」「信じないとダメ」と根拠なく、または曖昧な理由で、恐怖や不安を煽る主張は、善意の有無に関わらず危険です。私も発信するとき、受信するとき、繰り返しそのことを思い出したいと思います。

 

 

これってカルトですか?(2)〜カルトの入り口になるもの〜

破壊的カルト 2020年12月18日

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カルトの入り口となるフェイク

前回の『これってカルトですか?(1)』では、「思想・政治カルト」「商業カルト」「心理療法カルト」「宗教カルト」という4つの破壊的カルトの類型について取り上げました。

 

bokushiblog.hatenablog.com

今回は、上に出てくるような明確な「組織」や「団体」に属するわけではないものの、金銭的・精神的・身体的被害をもたらす「信者」や「支持者」を生み出してしまう言説、破壊的カルトの入り口になってしまうものについてまとめました。

 

いわゆる「フェイクニュース」や「疑似科学」「トンデモ」や「デマ」を拡散させるネットワークや、スピリチュアルの中でも問題が指摘されているスピリチュアル・ビジネス(似非スピ/キラスピ)と呼ばれる界隈のことです。 

 

これら「間違った情報」や「検証の不十分な知識」の拡散は、一見そこまで大きな問題には思えないかもしれません。誰でも間違えることはありますし、「誤りや問題が分かったら修正する」のが普通だからです。

 

しかし、どれだけ科学的な検証とデータに基づく指摘があっても、撤回も修正も行わず、自分たちの主張に反するものを「アンチ」「フェイク」と呼んで切り捨ててしまう人たちがいます。倫理的・人道的な問題を追求する声さえ「嫉妬」や「勘違い」と廃して耳を貸さなくなってしまうのです。

 

このような界隈では、仲の良かった相手でも、反論や指摘を受けると途端に攻撃的になり、あるいは関係を切ったりします。また、「このとおりにしないと社会が堕落する」「汚染される」「病気になる」という危機意識を刺激して、人々をコントロールしてきます。

 

つまり、世の終わりの恐怖を煽って入信させ、信者をコントロールする宗教カルトと構造は非常に似ているのです。疑似科学やフェイクニュースは、破壊的カルトに利用される言説であると共に、破壊的カルトの入り口となったり、ミニカルトそのものを生み出しかねません。

 

以下で紹介している事例は、実際に現在社会問題化しているものの一部です。なお、ここでも参考資料として紹介している記事は、あくまでこれらを調べる際、参考にできるもので、サイトに書かれた全ての主張を支持するものではありません。

 

疑似科学(ニセ科学、トンデモ)

疑似科学とは、「見かけは科学のようでも、実は科学でないもの*1」のことで、科学的に間違っているものや検証の不十分なものが数多く出回っており、「ニセ科学」や「似非科学」「トンデモ」とも呼ばれています。

 

疑似科学のジャンルは多岐にわたり、明らかなニセ医学や悪質な代替医療、教育界に広がっているものや、子育て、療育に関するものもあります。これらは、マルチ商法や霊感商法、信者ビジネスとも結びつきやすく、莫大な金銭的被害を生み出しています。

 

同時に、全ての疑似科学が金儲けに利用されているわけではなく、不安や恐怖に煽られて善意で拡散される情報や、「少しでも効果があるなら良いだろう」と共有されてしまうものもあります。

 

しかし、中には「副作用がない」「安心安全」と謳われている手段や療法に健康を害するものがあったり、適切な治療や療育の機会を奪ってしまうものがあります。また、あからさまな金儲けではなくとも、薬機法や景表法に違反するものも見られます。

 

さらに、子育て・療育・教育に関する疑似科学は、無意識に大人が子どもをコントロールするために使われやすく、科学的思考を妨げ、批判的な思考力の形成を阻んでしまうこともあります。また、親子共に極端な自己責任論を植え付けて、必要なサポートから遠ざけてしまうこともあります。

 

「科学を装うもの」「科学的な裏付けがあるかのように見せるもの」は思っている以上に深刻な影響を及ぼします。ここでは、実際に被害や問題が報告されている疑似科学や、カルト団体に利用されている言説などを紹介しようと思います。

 

ニセ医学、疑似医学、代替医療系

反ワクチン

反ワクチンは、子育て中の家族の間で急速に広まってきた疑似科学です。「ワクチンは安全ではない」「ワクチンを受けると自閉症になる」「ワクチン接種後に障害が残る人もいる」「自身の免疫力を上げることが大事」といった内容が主な主張です。

 

これにより、恐怖を覚えた家族が子どもにワクチンを受けさせるのを拒否したり、麻疹やおたふく風邪にかかった知り合いからわざと子どもに感染させて、免疫力を獲得させようとする危険な行動も見られます。

 

しかし、幼児期にこのようなことをすると、かえって脳に障害が残ったり、子どもを死に至らしめる危険があります。ワクチン有害説の根拠となっている情報も、間違いが分かって撤回された論文や非科学的な情報がほとんどです。

 

また、反ワクチン運動はホメオパシーやフードファディズムなど、他の疑似科学とも結びついており、子どもに適切な医療を受けさせなくなる問題が深刻化しています。

 

最近では、反ワクチン運動に傾倒していたものの、自らの判断で止めた人の体験も挙がっています。迷っている人がいたらぜひ、下記のリンクを読んだ上で判断することをおすすめします。

 

【参考資料】

note.com

joshi-spa.jp

www.gohongi-clinic.com

 

がん放置療法(がんもどき)

がん放置療法とは、元放射線科医師の近藤誠氏が提唱した独自の理論で、「がんの手術や抗がん剤治療は寿命を縮めるだけ」「がんには転移する『本物』と転移しない『がんもどき』がある」「がんもどきは進行しないので放置しておけばいい」「本物のがんは治療しても生命は伸びない」といった内容です。

 

この理論には多くの論文やデータなどが引用され、いかにも科学的に正しいことを言っているように見えますが、実際には元の論文と正反対の主張に用いていたり、データの読み取り方が間違っていたり、100年以上前の古すぎるデータを使っていたりします*2

 

また、ここ数十年の抗がん剤治療や放射線治療の発展も考慮に入れておらず、医療に対する不信感を極端にあおるものとなっています。本来、あらゆる病気の治療はリスクとメリットを考慮した上で選択していくものですが、リスクだけを強調し、標準医療そのものを拒否させてしまう問題があるのです。

 

実際に、治療をすれば回復するはずだったステージ1や2の患者さんが、この理論を信じて治療を拒否し、ステージ3や4まで進んでしまったり、亡くなってしまった方もいます。今後も注意が必要です。

 

【参考資料】

www.gohongi-clinic.com

medical.nikkeibp.co.jp

gijika.com

gendai.ismedia.jp

ホメオパシー

ホメオパシーは、元の成分が残らないほど希釈した液体やそれを染み込ませた砂糖玉(レメディー)を使って自然治癒力を促し、「副作用のない自然な治療」であらゆる病気を治すことができるというニセ医学です。

 

いわゆる「毒をもって毒を制す」考え方で、病気や症状を引き起こす成分そのものが、その病気や症状を治すことができるというものです。しかし、何百回も希釈して作ったレメディーはただの水と変わりないので、プラセボ(偽薬)以上の効果はありません。

 

また、症状が一時的に悪化したように見えても、それは体が悪いものを出そうとする「好転反応」で、レメディーが効いている証拠だと言われますが、単に病気を放置していることによる悪化です。

 

自然に回復すれば「レメディーが効いた」ことになり、症状が悪化すれば「好転反応が出た」ことになるので、どう転んでも「効果が出ている」と言われてしまうのです。そして、他の薬や治療法は「副作用があって危険」と言われるため、医療を拒否する人たちが出ています

 

国内でも、2009年に助産師からビタミンKの代わりにレメディーを与えられた生後2ヶ月の女児が死亡した事件が起きました。他にも、世界各国でホメオパシーによる被害が報告されています*3

 

しかし、今もなお、悪質なアロマオイルのマルチ商法やオーソモレキュラー(分子整合栄養学)などと結びついて盛んに広められています。

 

【参考資料】

gijika.com

warbler.hatenablog.com

warbler.hatenablog.com

 

フードファディズム(オーソモレキュラー/メガビタミン)

フードファディズムとは、食べ物が人体や精神に与える影響を過大に評価し、「これは体に良いからたくさん食べよう」とか「これは体に悪いから絶対食べちゃダメ」など、極端な行動を取りやすくさせる主張です。

 

メディアやSNSを通して「病気の原因は○○だった!」「○○を食べれば認知症にならない!?」など、検証不十分の情報が拡散され、かえって、偏った食生活をもたらしたり、健康のバランスを崩したりする問題が指摘されています。

 

また、食べ物の中でも「特定の栄養素をたくさん接種すればうつ病を治せる」「自閉症を治せる」「がんを消せる」「アレルギーがなくなる」などと謳い、サプリメントの購入を勧めたり、手間と時間のかかる食事を勧めたりするオーソモレキュラー(分子栄養学/分子整合栄養医学)やメガビタミンと呼ばれる療法も存在します。

 

ホメオパシー のように「薬を使わないで治療できる」と言って、医師や栄養士が勧めている場合もありますが、科学的検証が十分にされていない民間療法です。金銭的被害が多くなくても、信じた人の時間と労力が大量に割かれ、適切な医療や治療から遠ざける問題も出ています。

 

さらに、トンデモ医学セミナーや養成講座などの資格商法とも結びついており、マルチ商法とも親和性が高いです。食べ物が心身の健康に重要なことは間違いありませんが、特定の食品を避けたり、特定の栄養素をたくさん摂取するだけで万事解決するような呼びかけには注意が必要です。

 

【参考資料】

www.gohongi-clinic.com

 

www.gohongi-clinic.com

www.gohongi-clinic.com

news.yahoo.co.jp

免疫力アップ

「免疫力アップ」は、疑似科学やトンデモ医療を見分ける際のキーワードとなる一つです。よくあるのは「体を温めると免疫力がアップして病気にならない」「◯◯を飲めば/食べれば免疫力が高くなる」などですが、そもそも人間の「免疫力を測る」のは非常に困難です。

 

「◯◯細胞が増えた」「◯◯が活性化した」というデータによって、一部の免疫力を測定することはできますが、それだけで免疫力全体を測ることはできません。免疫というシステムは多くの細胞のネットワークでできているので、一部の細胞だけ強くなっても全体が強くなるわけではないからです*4

 

むしろ、ある細胞が増え過ぎたり、活性化し過ぎたりすると、かえって病気になることもあります。「◯◯が増えれば免疫力がアップするから、たくさん◯◯しよう」といった話は、非常に乱暴な話なんです。そして、テレビや雑誌で取り上げられているものも、多くは科学的根拠が希薄です。

 

さらに、「人工的な薬や治療に頼らず、体にもともと備わっている免疫力を強くして病気を治そう」と謳い、医療離れを引き起こす内容も珍しくありません。直接、サプリや健康グッズの販売と結びついていなくても、適切な検診や治療から遠ざける言説は避けなければなりません。

 

免疫力アップ系の話は、善意による拡散が特に起こりやすいものですが、身近な人や自分自身を疑似科学やトンデモ医療につなげる入り口にもなりやすいので、ぜひ慎重に考えていただけるとありがたいです。

 

【参考資料】

www.gohongi-clinic.com

www.gohongi-clinic.com

www.1101.com

www.minesot.com

胎内記憶

胎内記憶は、文字どおり「生まれる前の記憶」「母親のお腹にいるときの記憶」「出生児の記憶」を持った子どもがたまにいるという話で、もともとは「不思議だね」で済んでいた話でした。

 

しかし、最近では池上明医師を中心に「子は親を選んで生まれてくる」「子は親を幸せにするために生まれてきた」という話にまで発展し、不妊の女性が「子に選ばれなかった」とされてしまう問題や、虐待を受けてきた子どもが「自分でその親を選んだのだから愛しなさい」と傷つけられる問題(自称セラピストに転身した親友から「毒親を愛せ、許せ」と詰め寄られた女性の苦悩 - wezzy|ウェジー)が指摘されています。

 

これら「子は親を選んで生まれてくる」「困難な人生や障害もその人が選んだもの」という発想は、いくつかの破壊的カルトの教義にもあり、大人が子どもをコントロールするのに都合よく用いられる危険があります。二世問題が深刻な宗教カルトではよく訴えられている言説です。

 

さらに、「生まれる前は神様だった」という少女の記憶を大々的に宣伝し、子どもを教祖化して本を出版したり、パワーストーンを売り出す取り巻きの大人も出ています。彼らは「胎内記憶は教育に良い」と主張していますが、実際には子どもを利用したり支配する大人を生み出しています。

 

残念ながら、胎内記憶はミッションスクールの大学や政界(胎内記憶のトンデモ池川医師と安倍昭恵夫人がタッグを組んだ??|五本木クリニック院長ブログ)にまで侵食しており、怪しいカウンセラーやセラピーにも用いられています。科学的根拠があるかのように言う人もいますが、それっぽい用語やアンケート結果を使っているだけで、証明にはなりません(胎内記憶 - NATROMのブログ)。

 

「親子の絆を深める」「教育に良い」といった言葉に惑わされず、何が問題になっているのか慎重に見極める必要があるでしょう。

 

【参考資料】

www.gohongi-clinic.com

 

juries.hateblo.jp

wezz-y.co

 

教育界隈の疑似科学

創造科学/インテリジェント・デザイン(ID)論

創造科学は、「進化論は正しくない」「聖書の創世記に書いてある天地創造の出来事は事実である」という主張で、それに基づく反進化論的運動を「インテリジェント・デザイン(ID)」と言います。

 

アメリカ最大の疑似科学と言われ、主に保守的な福音派のキリスト教会で支持されていますが、日本の中でも見られます。「科学」という言葉を使っているので、一見、進化論と並ぶ学説のように思われることもありますが、科学の基準は満たしていません。

 

なぜなら、創造科学では、ある理論についてそれを否定するデータが得られても、理論の方を補正し続ける「後づけ仮説(アドホックな仮説)」が多用され、「どういう場合にその仮説は間違っているか」という反証ができない議論を続けているからです。

 

ようするに、「どんな証拠や反論が出てきても間違いを認めない」という態度であり、科学的思考や科学的方法を放棄しています。それらを理科や科学の授業で教えることはふさわしくありません。

 

創造科学の目的は、子どもたちに科学的理論を教えることではなく、宗教教育をすることです。「科学」という名を借りて宗教教育を導入するのは、正体や目的を隠した勧誘行為と共通した問題を孕んでおり、誠実ではありません。

 

アメリカでは、創造科学を支持する人々によって、学校教育で進化論を教えないようにさせたり、公立学校で創造科学を教えさせようとする運動が広がっており、いくつか裁判が起きています。

 

日本でも、あるミッションスクールで「進化論を否定する教育が行われている」と追及されたことがありますが*5、健全な運営がなされているミッションスクールであれば、授業で進化論を否定したり、創造科学を学説の一つとして教えたりすることもありません。

 

【参考資料】

natrom.sakura.ne.jp

 

seesaawiki.jp

 

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

ゲーム脳

ゲーム脳は、脳トレやモーツァルト効果に並んで「脳科学」界隈では有名な疑似科学です。これらは「◯◯は脳に悪影響を及ぼす」「◯◯すると脳が鍛えられる」といった主張で、様々なデータや実験を持ち出しますが、根拠とされている実験方法やデータは信頼性に乏しく、科学と呼べるものではありません。

 

また、論理の飛躍や拡大解釈も多く見られます。しかし、「脳科学」とつけば無条件に信じてしまったり、脳の画像やグラフを多用することによって、いかにも科学的根拠がしっかりしているように感じられるため、鵜呑みにされやすい言説です。

 

そして「◯◯は脳に影響がある」という話は、特に教育関係者や保護者を引きつけ、危機感を煽ったり、効果に飛び付かせる特徴があります。しかし、検証不十分で根拠のない言説を教育界で支持することは、批判的思考力を養うどころか妨げる結果になります。

 

子どもたちが疑似科学や破壊的カルトに巻き込まれて、金銭的精神的身体的被害を受けないためにも、教育に採用していい言説か、大人は慎重に見極めなければなりません。

 

【参考資料】

「脳科学とどうつきあうか?」鈴木貴之 編 南山大学社会倫理研究所

http://rci.nanzan-u.ac.jp/ISE/ja/publication/book/2011neuro-book.pdf

 

www.asahi.com

 

www.human.niigata-u.ac.jp 

水からの伝言

水からの伝言は、「水を結晶させた氷の形状からメッセージを読み取ることができる」と主張する本を中心に広まった疑似科学です。「ありがとう」などの良い言葉をかけると美しい結晶ができ、「ばかやろう」などの悪い言葉をかけると歪な結晶ができるといった内容で「言葉特有の波動が水に情報を転写する」と説明されています。

 

水の他にも、ごはんやリンゴなどのバリエーションがあり、悪い言葉をかけた方が対象の傷みが早くなるという話で、学校の授業などにも用いられていました*6これらは「科学的に検証された事実」として紹介されますが、実際には検証方法自体が科学的ではなく、教育に用いて良いレベルではありません。

 

「水に情報を転写する」という「波動」も物理学で用いられている定義ではなく、著者に都合の良い、定義が曖昧な言葉です。そして、「波動」は、多くの疑似科学商法でも使われており、プラセボ以上の効果がない波動水や波動測定器、EM菌をはじめとする商品の説明に出てきます。つまり、水からの伝言を支持することで、子どもたちが将来、詐欺や悪質商法を信じ込む手助けをしてしまうのです。

 

また、「波動」という言葉は、「思いは現実になる」という「積極思考」「引き寄せの法則」と親和性が高く、悪質なスピリチュアルやカウンセラーの間でも使われています。もともとは、子どもたちの思いやりを育むつもりで「水からの伝言」を採用したとしても、子どもたちを破壊的教祖にささげる結果になりかねないのです。

 

いじめの防止や思いやりを育むのであれば、思いやりのある教育を大人がしなければなりません。目的のために正しくない情報や嘘を使って教えることは、そもそも思いやりのある大人のすることではありません。良いことのためなら真偽が曖昧でもかまわないという態度こそ、破壊的カルトを生み出してしまうことを思い出していただけると幸いです。

 

【参考資料】

gijika.com

www.gakushuin.ac.jp

gendai.ismedia.jp

親学

親学は、「子供の脳を育て、心を育て、感性を育てるための親の学び」を推進するために、疑似科学、ニセ医学、偽歴史などを根拠に、「伝統的子育てなるものを奨励」している運動です。

 

「赤ん坊は母乳で育て、粉ミルクは使わない」「子どもはテレビやゲームから遠ざけ、演劇などを見せる」といった子育てを推奨する他、「発達障害やアスペルガー、自閉症は親の愛情不足が原因で、伝統的子育てでは発生しない」などの主張が見られます*7

 

いずれも、「脳科学」に基づくとされますが、前述の「ゲーム脳」などを提唱した「脳科学者」らによるもので、信頼できる科学的根拠はありません。特に、発達障害に関しては「生まれつき脳の一部の機能に障害がある」のであって*8子育てに原因を求めるのは誤りです。障害者とその家族への差別・誤解を生みかねない主張を無批判に支持するべきではありません。

 

また、親学は公共の広告で使用された「江戸しぐさ」などのマナー推奨運動で有名になりましたが、こちらも提唱者の主張を権威づけるために作られた偽歴史が根拠となっています。

 

目的のために正しくない情報や嘘を使って教えることは、明らかにマナー違反であり、「江戸しぐさ」によるマナー推奨運動も、教える側がマナーを破壊する行為です。「水からの伝言」と同じく、親学の主張を無批判に採用することは、健全でない人間関係をもたらします。慎重に向き合っていただけると幸いです。

 

【参考資料】

www.d3b.jp

www.gohongi-clinic.com 

news.kodansha.co.jp

1000nichi.blog73.fc2.com

自然派

自然派は、育児や健康には自然なものが一番であり、人工的なものはなるべく避け、薬や予防接種に頼らない生き方を推奨する運動です。近年増加しているアレルギー、自閉症、認知症などの原因は添加物や薬によるものと考え、自然由来のものを使用することで、それらを防げると言われます。

 

そのため、「子どもに薬を飲ませない」「ワクチンを受けさせない」などの反医療につながりやすく、自然治癒力や免疫力を高めるため、科学的根拠のない、もしくは検証不十分な方法を強く勧めてしまうこともあります。

 

また、「副作用がない」と謳うホメオパシーやアロマオイルの効能などに惹かれやすく、それらを利用したネットワークビジネス(マルチ商法)の温床にもなっています。添加物や化学物質を避ける一方で、フードファディズムに陥りやすく、様々なサプリに手を出す人もいます。

 

その結果、かえって食生活が偏ったり、栄養のバランスが崩れたりして、健康を損なう人もいます。親から薬を取り上げたり、子どもを医者に連れて行かないことで、家族関係が崩壊する事例もあります。残念ながら、過激化した際、最も犠牲になりやすいのは子どもです。

 

自然派の中では、どうしても天然なものを「善」人工的なものを「悪」とする二元論に陥りやすいですが、実際には、人工物であろうと天然物であろうと、用途・用量を間違えば毒物に変わり、様々なものを破壊します。大切なのは正しい知識とバランスの取れた生活です。

 

あるものに対して極端に不安を煽ったり、不信感を懐かせる言説には警戒しなければなりません。同時に、あるものに対して極端に効果を謳ったり、疑問を持たせない言説も、信頼するべきではないのです。

 

【参考資料】

paralymart.or.jp

www.cyzowoman.com

wezz-y.com

wezz-y.com

反添加物/反遺伝子組み換え

反添加物/反遺伝子組み換えは、非科学的なニセ医学を根拠に、子育て中の親の危機感を過剰に煽るフードファディズムの一つです。添加物の恐ろしさを知らないと、子どもがキレやすくなったり、アトピー、ぜんそく、がんにまでなってしまうという主張が至るところでなされます。

 

また、危険な添加物の使用が許され続けているのは、背後に行政を操る巨大組織がいるからだ……という陰謀論が説かれやすく、反ワクチンなど他の言説に出てくる陰謀論にも引き込まれやすくなっています。

 

さらに、科学的な安全性について検証されたデータがあっても、これらの陰謀論を持ち出され、中身を精査せず、「フェイクニュース」として切り捨てられることもあります。「危険を避けるためなら多少の誇張や検証不足もかまわない」と思われるかもしれませんが、このような態度は、恐怖心を利用する破壊的カルトや悪質商法に巻き込まれるリスクを高めます。

 

本当に人々を危機から守るのは、過剰な恐怖心でも極端な楽観でもなく、正しい情報をもとに正しく恐れることです。ひたすら危機感を植え付けて極端な行動をとらせる言説は、あっという間に二元論に陥らせ、健全でないコントロールをもたらします。善意からの行動が破壊的結果に結びつかないように、誠実な検証を行いましょう。

 

【参考資料】

gijika.com

cbijapan.com

www.gohongi-clinic.com

www.excite.co.jp

 

EM菌

EM菌は、「水からの伝言」や「江戸しぐさ」と同じく、教育現場で取り上げられてしまった疑似科学の一つです。もともとは「環境に優しい農業資材」として土壌改良に利用されていましたが、その後、水質改善にも効くと言われ、EMを混ぜた飲料水がC型・B型肝炎、エイズ、ヘルペス、インフルエンザ等のウイルス、外部被曝・内部被曝にまで効果があると言われるようになりました*9

 

しかし、いくつかの公的機関や専門家が調べた結果、EM菌に明確な水質改善の効果は確認されませんでした。むしろ、高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川等に投入することによって、それらが汚濁源となり、環境負荷を高めてしまう可能性も指摘されています*10

 

にもかかわらず、全国の自治体や小学校で、河川の浄化やプールの清掃に使われています。もちろん、これらを「環境教育」として利用することは、教える側のみならず、子どもたちの科学リテラシーまで低めてしまう行動です。

 

また、当然のことながら各種のウイルスや被曝に対しての効果も確認されていません。加えて、感染症の原因となる細菌も含まれていることがあるため、飲んだり、点眼に使用することはかえって危険です*11

 

EM菌のように「◯◯にも、◯◯にも効果がある」と謳い、万能であるかのような主張をするものは基本的に疑似科学です。効果を信じた者が知らずにリスクを犯す危険や、正しいケアやサポートを選択しなくなる責任は重すぎて誰も取れません。たとえ善意からでも、安易に支持してはならないのです。

 

【参考資料】

wezz-y.com

gijika.com

note.com

 

放射能関連のデマ

放射能関連のデマは、「原発事故以降、癌や奇形児が増えている」「福島から出荷されている食品は危険」といった内容で、善意による拡散とデマを指摘する人間への攻撃が最も激しかった言説の一つです。私も過去、2011年の福島第一原発事故から約6年間、恐怖を煽る発信や、検証不十分な情報の拡散に何度も加担してしまいました。

 

被曝の不安にさらされていた福島と、その周辺の方々、私が耳を傾けなかった放射線に関する誤解を指摘し「正しい情報をもとに正しく恐れる」ことを促してきた方々、デマを拡散してしまった方々に、この場では不十分ですが、深くお詫び致します。

 

この件については、参考資料の最初に挙げた記事が、最も偏見を解きやすいため、そちらを見ていただくのが早いと思います。(なお、放射能関連のデマはデマと認識した上で、原発については様々な問題から将来的になくすべきという立場です)

 

今回、こちらで取り上げたいのは、デマを指摘する専門家たちの声を、私自身が「フェイク」として切り捨ててしまったキーワードです。それは、この記事で何度も繰り返している「恐怖を煽るな」という言葉と「風評被害」という単語です。

 

この2つが出てくるだけで、「相手は私の言うことをまともに聞かない」「正しい情報を拒んで思考停止している人間だ」という思考回路になっていました。危険を知らせているのに怖がって耳を傾けないと感じ、デマを指摘する全員が、被爆の危険を軽視していると思っていました。(もちろん、専門家の人たちは被爆の危険を軽視していたわけではありません)

 

自分たちの主張に反するものを「アンチ」「フェイク」と呼んで切り捨ててしまう構造は、このような「0」か「100」かの思考です。やみくもに危険を伝える自分の行為が健全でないと自覚したのは、皮肉にも、私の問題視している破壊的カルトが、同様に放射能の恐怖を煽って信者獲得に動いていたからです。

 

加えて、私がお世話になっていた子育て中のお母さんたちの間で、反ワクチンの言説が入り込み、問題を感じたこともきっかけでした。「恐怖を煽ってシンプルな解決策を示す」他の運動と比較できたことで、自分自身が陥っている不健全な状態に気づくことができました。

 

今読んでいただいている「これってカルトですか?」(1)と(2)で、複数の破壊的カルトの類型やカルトに利用される言説、カルト化しやすい言説を並べたのも、個々人が問題視している団体・運動と自分自身の属するグループを比較して、共通する問題がないか気づきやすくするためです。ぜひ、各項目を眺めながら、自分も不健全な状態に陥ってないか、チェックしていただけると幸いです。

 

【参考資料】

note.com

www.gakushuin.ac.jp

www.mcfh.or.jp

synodos.jp 

陰謀論

陰謀論は、あらゆる破壊的カルトやカルト化をもたらす言説に出てきます。特徴としては、1)「〜〜も、〜〜も、◯◯のせいだ」とあらゆる事象を特定の理由に結びつける。2)「◯◯を止めたら病気は治る」と複雑な問題に簡潔な答えを提供する。3)「◯◯の言うことは全部デタラメ」と政治・科学・医療・メディアへの不信感を極端に煽る。といった傾向があります。

 

すなわち、目にする人の恐怖を煽って仲間意識を芽生えさせ(感情コントロール)、あらゆる情報を陰謀論に結びつける解釈を行わせ(思考コントロール)、危機感と善意から発信の拡散やアンチの撃退に加担させ(行動コントロール)、自分たちの主張に沿わない情報はフェイクだと言って切り捨てさせる(情報コントロール)というマインド・コントロールのプロセスを自然に満たす構造になっています。

 

また、その主張を否定する根拠が出てきても、理論の方を補正し続ける「後づけ仮説(アドホックな仮説)」を多用して、自分たちの主張の正しさを訴え続けます。つまり、どんなにしっかりした証拠があっても間違いを認めることはありません。

 

最近では、「新型コロナウイルスはでっち上げ」「マスクをつけている子どもは認知障害を起こしかねない」「代替医療への批判は利権団体による陰謀」といった言説が流布され、信じ込んだ人々が感染症対策から遠ざかり、適切なケアやサポートを受けず、健康被害や死亡に至る事件も起きています。

 

一見すると、馬鹿馬鹿しくて信じられない言説も、人々の善意や危機感を入り口にして、医者や政治家さえ取り込んでしまうのです。中には、特定の民族を排除する運動や対立する政治思想への暴力的な抗議活動へつながってしまうこともあります。どんなに良い人の主張であっても、無批判に支持することは避けましょう。

 

【参考資料】

www.bbc.com

rollingstonejapan.com

gendai.ismedia.jp

 

医療技術に関する陰謀論

医療技術に関する陰謀論は、悪質な民間療法や代替医療、医療詐欺の宣伝によく見られます。現在、治らないと言われている病気や障害の「治療法」が公式に取り上げられないのは、患者や障がい者が利用する薬、施設、病院等が、不要なケアやサポートによって利益を得続けるためである……といった主張が主なものです。

 

特に、原因の解明に至っていないアトピーや長期にわたる抗癌剤治療が必要なもの、治療の対象ではない発達障害などに関して、度々見られる言説です。多くは疑似科学、ニセ医学と抱き合わせで流布され、標準医療への不信感を高め、適切な治療や療育から遠ざける問題が指摘されています。

 

また、ワクチンに関しては「予防よりも副反応のリスクが高いにもかかわらず、製薬会社の利権や政府による人口操作のために使い続けられている」という言説が広がっており、世界中の感染症対策に悪影響を及ぼしています。今後も注意する必要があるでしょう。

 

【参考資料】

gendai.ismedia.jp

www.livewalker.com

news.yahoo.co.jp

 

歴史上の事件に関する陰謀論

歴史上の事件に関する陰謀論は枚挙にいとまがありませんが、特に問題に思われるのは、特定の民族や特定の事件の被害者を貶める言説です。世界的に有名なものとしては、「ナチスによるユダヤ人虐殺はなかった」「強制収容所やガス室は存在しなかった」などのホロコースト否定派が挙げられます。

 

彼らは、ユダヤ人がドイツから多額の賠償金を得るために、ナチスによる大量虐殺を捏造したと主張することで、被害者とその家族を貶めます。生存者が必死に告白した証言も、自分の利益のために嘘をついたと言われます。

 

ホロコーストが歴史的な事実であることは、公開されている多くの資料や公文書から既に合意を得ていますが、これを「捏造である」とする陰謀論者は、圧倒的な証拠を無視、または歪曲して、自分たちの正しさを主張します。加えて、旗色が悪くなると論点のすり替えを多用します。

 

これは、「従軍慰安婦はなかった」「慰安婦は公娼に過ぎなかった」とする慰安婦問題否定派にも言えることで、その出来事に関する一つの事実を疑うことができれば、全ての証拠を否定できるように断言します。そして、歴史学的な合意を「自虐史観を植え付けるもの」と攻撃の対象にしてしまうのです。

 

ニセ医学をはじめとする疑似科学と同様、極端な「新事実」を主張するものは、まともな検証を行いません。先行研究が積み上げてきた証拠や資料にきちんと向き合わない態度は、無批判に支持するべきではないのです。

 

【参考資料】

encyclopedia.ushmm.org

 

senbonzakura.blog.jp

 

japan.hani.co.kr

 

スピリチュアル・ビジネス(似非スピ/キラスピ)

スピリチュアル・ビジネスは、「似非スピ」「キラスピ」とも呼ばれ、スピリチュアル好きな人たちからも問題視されています。「思いは現実になる」という《積極思考》や「成功者の思想や行動を模倣することで同じ効果が得られる」という《成功法則》など、多くの人に後遺症や金銭的被害をもたらしてきた自己啓発セミナーと共通するメソッドが根底にあります。

 

この界隈で多用されるのは、「私もあの人みたいになりたい」というマルチ商法でもお馴染みの「憧れを抱かせる」手法です。教祖や取り巻きは好きなことをして輝いているように見え、簡単な方法で、自分も同じように「幸せになれる」「キラキラした人間になれる」と思わされます。

 

そして、成功するためには自分の殻を破って、今まで我慢していたこと、怖くてできなかったことを実行するのが正しいと思わされ(思考コントロール)、仕事を辞めたり、家事を放棄したり、新しいビジネスを始めさせられます(行動コントロール)。臆病で自信のなかった人間が新しい挑戦を始めるという意味では良いことのように聞こえますが、その結果には誰も責任を持ってくれません。

 

さらに、「本当にこれでいいのか?」「失敗するのではないか?」というマイナスの感情はマイナスの結果を引き寄せると警告され、「私は幸せだ」「楽しいんだ」というプラスの感情を持ち続けるよう促されます(感情コントロール)。心配する家族や友人の声は、マイナスを引き寄せる言動ということで片付けられ、耳に入ってこなくなります(情報コントロール)。

 

このように、好きなことをしておしゃれをしたり、美味しいものを食べたり、お金を使うことに抵抗をなくすよう促されていくので、教祖の取り巻きはいつも「キラキラ輝いて」見えます。しかし、実際には貯金がなくなり、借金が増え、短期間に多くの取り巻きが変わっていくのです。

 

【参考資料】 

 

allabout.co.jp

 

引き寄せ

引き寄せ系のスピリチュアル・ビジネスは、「自分のしたことは自分に返ってくる」「良い感情は良い現実を、悪い感情は悪い現実を引き寄せる」といった内容で、一見そこまで悪いことを言っているようには感じません。

 

しかし、このメソッドから「お金は使えば使うほど返ってくる」「思い切れば思い切るほど大きな結果が得られる」という方向へ導いていき、高額セミナーやセッションに通わせ、信者から金品を巻き上げている人もいます。

 

また、引き寄せは「自分の身に起こることは全て自分が選んでいる」という考え方に基づくため*12悪い結果は全て自己責任になってしまいます。中には、病気や障害、虐待さえも本人が選んだから起きている……という主張まで見られます。

 

加えて、これらの教えを「心理カウンセラー」「メンタルカウンセラー」の肩書で流布する人もいるために、相談者がダメージを受けることもあります。不妊に悩む女性が「赤ちゃんを引き寄せる」ために胎内記憶界隈と結びついたり、波動系の水ビジネスや疑似科学商品にハマったりする一つのきっかけにもなっています。

 

引き寄せを信じる全ての人が、これらの問題を持っているわけではありませんが、殊にビジネスが絡んでくる場合は近寄らず、警戒した方が良いでしょう。

 

【参考資料】

note.com

gendai.ismedia.jp

wezz-y.com

wezz-y.com

 

子宮系

子宮系のスピリチュアル・ビジネスは、「女性は子宮をいたわることで富と健康と幸せが得られる」と謳い、「子宮を温めれば病気が治る」「子宮の血行を良くすれば運や人脈に恵まれる」など、子宮万能説を展開しています*13

 

「パワーストーンやジェムリンガを膣に入れれば、子宮が温まって調子が良くなる」という言説もありますが、もちろん医学的な根拠はなく、かえって炎症などの健康被害をもたらすリスクがあります。

 

また、悪い感情が子宮に溜まると運も健康も逃げてしまうと警告し、「子宮の声を聞いて自分に正直に生きる」よう訴えてきますが、不倫を推奨したり、がんばることをやめて奔放な生活をするよう勧めたり、無責任な主張も見られます*14

 

その結果、家族関係が崩壊したり、子どもが育児放棄の犠牲になったり、様々な問題が起きています。シンプルで手軽な方法によって幸せが手に入るかのような言説は、このような問題を抱えていることが多々あります。安易に飛びつかないことが大切です。

 

【参考資料】

www.cyzowoman.com

dot.asahi.com

wezz-y.com

wezz-y.com

 

ミニカルト

以上、様々なフェイクニュースや疑似科学、スピリチュアル・ビジネスについて紹介してきました。これらは、宗教カルト、商業カルト、思想・政治カルト、心理療法カルトに利用されやすい言説であり、家族間や小規模のコミュニティでミニカルト化する恐れもあります。

 

一見、そこまで深刻な問題に見えなくても、より強力な依存性薬物の入り口となる大麻のように、より被害が大きい破壊的カルトの入り口になってしまう危険があるのです。そして、気づかないうちに入り口が用意されているため、完全に避けることは不可能です。大切なのは、問題に気づいて距離を置きやすくするための正しい認識を地道に積み重ねることです。

 

もし、「極端な恐怖や危機感を煽り」「複雑な問題を一つの理由に結びつけ」「特定の方法が万能であるかのように謳い」「間違いを修正しない」言説・メソッドに支配されていることに気づいたら、安易に支持せず、速やかに誰かへ相談し、距離を置いてください。これをみんなで心がけることが、破壊的カルトに対するワクチンとなるでしょう。

 

【参考資料】

www.excite.co.jp

*1:ニセ科学入門参照。

*2:近藤誠医師のガン放置療法をスルーすべき理由⋯100年以上前のデータの説明では意味がないからです|院長ブログ|五本木クリニック参照。

*3:ホメオパシーによる被害者の情報 - warbler’s diary参照。

*4:7 「免疫力アップ」の話は怪しい。頭がすっきりする風邪の話。 - ほぼ日刊イトイ新聞参照。

*5:江島潔議員の質問の概要 | 梅光の会参照。

*6:子どもたちの教育に「ニセ科学」が忍び込んでいる事実をご存知か(伊与原 新) | ブルーバックス | 講談社(3/4)参照。

*7:トンデモ・疑似科学批判のある親学は何が問題か?発育障害に関する非科学的主張 - 知識連鎖参照。

*8:発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省参照。

*9:EM菌が各地で「環境教育」として使われていることの問題 - wezzy|ウェジー参照。

*10:EMなどのニセ科学とどう向き合うか - 片瀬久美子参照。

*11:EMなどのニセ科学とどう向き合うか - 片瀬久美子参照。

*12:「スピリチュアルにハマった友人」に悩む、すべての人に言いたいこと(吉玉 サキ) | 現代ビジネス | 講談社(2/6)参照。

*13:小林麻耶もハマった? 「子宮系女子」のトンデモな実態 (2/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)参照。

*14:スピリチュアルにハマった妹――「子宮委員長はる」との出会いから「家庭崩壊」までの記録【前編】(2019/05/01 21:00)|サイゾーウーマン参照。

カウンセラーやコンサルタントの注意点

2020年12月11日

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mohamed HassanによるPixabayからの画像

 

前回の記事で、「現在も神から直接啓示を受ける『使徒』や『預言者』が存在する」と主張されている教会で、会衆に対し、「預言する方法」や「癒される方法」を教えているところがあると書きましたが、それだけでは何が問題か分からない人も多いと思います。

 

実際に、そこで行われる「預言」を受けて「癒し」を経験する人がいるなら、別にかまわないじゃないか? 信者や相談者が満足して帰るなら、ソッとしておけばいいじゃないか? そう感じるところもあるでしょう。

 

そこで現在、社会問題になりつつあるカウンセリング、メンタルケア、ヒーリングの方法を教えているセミナーや研修会と比較しながら、何が問題かを簡単に整理したいと思います。

 

最近では、「カウンセラー」「セラピスト」「コンサルタント」「トレーナー」「コーチ」「○○認定講師」といった肩書を持つ人をSNS上でたくさん見ることができます。おそらく、こういった名前を見ると、何かしらの訓練を受けて、特別な手法を扱うことができる人だと思うでしょう。

 

けれども、こういった人たちが《セミナー》《セッション》《お茶会》《○○カフェ》といった集会を開いて、人を集めようとしているときには注意が必要です。

 

なぜなら、これらはどれも定義が曖昧な肩書で、(現時点での法律では)誰でも自称することができ、十分な知識や訓練を積んでいなくても、集まった人にアドバイスや指導をすることができてしまうからです。

 

中には、十分検証されていない方法で心理的、医学的、経済的、教育的アドバイスを行っている人もいます。科学的にも倫理的にも問題があるやり方で、みんなの「先生」として金銭や評価を受けてしまうのです。

 

その多くは、自己啓発セミナー、認定講師セミナー、情報商材などの資格商法を通して輩出された人間です。騙されて受講した被害者が、自らも加害者になってしまいます。

 

健全なカウンセラーやコンサルタントは、その分野の学科を数年かけて修了し、実習で訓練を積み、信頼できる学会などに所属して、継続的に研修を受けています。しかし、数日〜数週間で高額の「資格」を取らせてしまう民間団体もあるのです。

 

中には、看護師、栄養士、幼稚園教諭など別の資格を持つ者が、アロマ、食事療法、性教育など「近い分野」に見える資格を取っていくがゆえに、信頼してしまう人もいます。

 

けれども、実際には疑似科学やスピリチュアル、オカルトの要素を含んだ再現性のないやり方で、「こうすれば上手くいく」と教えている場合が多々あります。

 

彼らのほとんどは、自分はちゃんと訓練を受けたと思い込み、十分な知識があると信じていますが、そのままいくと、効果のない方法や間違ったやり方で、精神的・身体的・経済的被害を出してしまいます。

 

また、表立った被害は出なくても、高額なセミナーや商材を購入したにもかかわらず、人を上手く集められず、借金を背負ってしまう人もいます。「正しい」と信じた方法で被害者を出してしまい、法的な責任を問われる人もいます。

 

こうした「技術」や「療法」に関して教えるよ……という誘われた場合は、たとえ公民館や市町村、学校などの公的な場でのイベントであっても、調べることをおろそかにしてはいけません。少しでも怪しければ、誰かに相談する必要があります。

 

キリスト教会で「預言する方法」「癒される方法」を教えている団体も、同様の問題を抱えています。なぜなら、「教えられた方法を使えば正しく物事を解決できる!」と信じてしまった人たちによって、他の選択肢や解決策が否定され、本来受けるべき治療やサポートを受けなくなってしまう要因になるからです。

 

そして、現在行われている「預言」や「癒し」は検証不十分なもので、ある人に言われたとおりのことが起きたとしても、それを誰にでも当てはめて良いわけではありません。民間資格のカウンセラーがそれっぽくカウンセリングをできるように、自称「預言者」がそれっぽく預言や癒しを行うことは難しくないからです。

 

私は、基本的に「◯◯できる」「◯◯できるようになる」と安易に謳っているところは信頼できないと考えています。本当に真摯に、心と体と魂の問題に向き合っている人たちは、医者でも、カウンセラーでも、牧師でも、神に代わってその人の現実を決定づけることはできないと身に染みて感じていくからです。

 

もし、自分の所属教会や、これから行こうとしている教会で「預言できること」「癒し/ヒーリングができること」を全面に押し出しているのであれば、ぜひ立ち止まっていただけると幸いです。本当にその宣伝・伝道は誠実か、社会問題化している運動と同じ過ちに陥ってないか……今こそ問うべきではないでしょうか?

カルト(化)教会・似非スピ・心理療法カルト

2020年12月11日

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Sophie JanottaによるPixabayからの画像

*参照元の更新などに伴い、2022年7月5日に記事の内容とタイトルを一部

 

直接的な啓示を強調する運動と似非スピ・心理療法カルト

2020年6月に、ウィリアム・ウッド著『新使徒運動はなぜ危険か? 神に成り代わり大統領にも指示する「支配神学」とは?』いのちのことば社……が発行されてから、こちらのブログでも「教会がカルト化する運動と神学」(1)(2)の記事がたくさん読まれるようになりました。

 

 

日本ではまだあまり知られていませんが、2015年から2017年にかけて騒がれていた神社仏閣の油まき事件も、この本で紹介された運動の影響を受けており、今後も、行き過ぎた権威主義、聖書の軽視、極端な経験主義、偽預言による被害の拡大が懸念されています*1

 

現在も神から直接啓示を受ける「使徒」や「預言者」が存在するという運動は、相談者を巧みにコントロールする占い師が「使徒」や「預言者」の名を借りて、聖書に書いていないことも「神から受けたメッセージ」として信者に語り、操作するのと似ています。

 

悪質なスピリチュアルや心理療法カルトとも親和性が高く、「使徒」や「預言者」になりたい人が受けられるセミナーも、資格商法のような形で増えていくと思われます。実際、国内でも、このような運動を支持する教会から輸入した方法で「あなたも預言できる」「癒しを経験できる」と謳い、支持を集めているところもあります。

 

一見、大きな事件を起こしていないように見えても、自分の受けた「預言」や「癒し」で「治った」「よくなった」と思い込み、心療内科や病院の治療を受ければならない人が、適切な医療を受けなくなってしまうこともあります。

 

さらに怖いのは「預言や癒しの方法を学んだ」人たちが、その方法で、別の誰かの相談に乗ったり「治そう」としてしまうことです。

 

キラスピ、エセスピと呼ばれる界隈で、教祖のセミナーや学校を出た信者が、新たなスピリチュアル or 心理カウンセラーとして出発し、検証不十分な根拠のない手法によって、ミニカルトが量産される現状と同じことが起きないか心配です。

 

富や健康の獲得を謳う運動と似非スピ・心理療法カルト

そして、以前も紹介しましたが、国内で増えつつある既存教会にカルト化をもたらす運動として、もう一つ「信仰によって語った言葉は現実化する」という教えがあります。上記の運動と同様に、警戒すべきムーブメントです。

 

この教えは、簡単に言えば「正しい信仰を持つ者は神から健康と富を得る」という内容で、「思いは現実になる」という《積極思考》や《引き寄せの法則》と根っこは同じです。

 

この教えを支持する教会は、「献金すればするほど自分自身も豊かになる」「病気や貧困はその人のネガティブから来るもので、神に信頼してポジティブに生きれば、病は治り、金持ちになれる」と教えます。

 

また、この運動のリーダーは、「祝福を受けるためには全収入の10分の1献金、献身的な奉仕、礼拝出席の厳守が必要だ」と強調し、信徒は祝福を受けるため、借金してでも献金を続けさせられます。

 

そして、たくさんささげる信徒は褒められますが、しない信徒は蔑まれるため、深刻なパワハラ、精神的・経済的被害が出てきます。これは「使えば使うほど、お金は入ってくる」と言って、高額なセミナーやセッション、グッズを買わせるキラスピ・エセスピ・心理療法カルトの特徴とよく似ています。

 

富や健康の獲得を謳う教会も、入った当初は、そこにいるみんながキラキラしているように見えますが、献金や奉仕ができなくなってくると、「祈りが足りない」「信仰が足りない」と仲間外れにされていき、心を病んでいく人もいます。

 

そのため、こちらの運動も福音派の諸教会から懸念が表明されており、国内外の破壊的カルトの専門家から警戒が呼びかけられています。

 

www.lausanne.org

事実、この教えを支持する教会で世界的に知られているメガチャーチのいくつかも、牧師のマネーロンダリングや巨額背任の罪で有罪判決を受けており、今後も被害が拡大していくと思われます。

 

最近の現状

現在、日本でも短期間に教勢を伸ばしている教会や、若者を一気に増やしている教会の中に、「信仰によって語った言葉は現実化する」「献金すればするほど自分自身も豊かになる」という教えを採用しているところがあります。一年で多くの人が入ってきては、多くの人が去っていきます。

 

教会に残る人たちは、去った人との連絡を禁止されるため、問題意識を持ちにくい傾向があります。また、傷ついた人はこのことを話すのも辛いため、(+関わっていたことを知られたくないため)実態がなかなか表に出てきません。

 

さらに、教会へたくさんの新来者を連れてくることが奨励されているため、教会の集会であることを隠して友達を誘ったり、ダミーサークルを用いた勧誘が、各大学で行われていたりします。

 

最近では、こういった団体も大学キャンパスから警戒され、表立って勧誘できなくなってきたため、中高生など、さらに年齢層の低いところがターゲットになりつつあります。

 

一度か二度、教会を見ただけでは危険なところに見えないため、メディアの取材を受けて好意的に紹介されたり、著名人が宣伝に協力してしまうところもあります。カルトの知識を持っていても、パッと見ではなかなか分かりません。

 

ただし、「カウンセリング」「ヒーリング」「癒し」「預言」「病気が治った」……これら全ての言葉を使って、集会・セミナー・勉強会への参加を勧める教会は、国内外で医療拒否、金銭トラブル、虐待などの被害を引き起こしている運動や団体に関連している可能性が高いです。

 

正体と目的を隠した勧誘、やたらと奉仕や献金を促す教え、特定の者との接触禁止、癒しや富が得られないのは信仰が足りないからだという主張……これらが確認できた場合は、速やかにそこを去り、カルト問題キリスト教連絡会やJSCPR(日本脱カルト協会)などの専門機関に相談していただけると幸いです。

 

被害の報告、相談事例を積み重ねることで、実態を知られていない団体への対処が少しずつ可能になっていきます。相談機関にはもちろん守秘義務があるので、金銭的・精神的・身体的被害を増やさないために、ご協力いただけると嬉しいです。

 

 

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食卓を囲めない日の祈り 〜聖餐式ができない日曜日・訪問礼拝のために〜

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Erick PalacioによるPixabayからの画像

 

 

聖餐式の休止にあたって

 

愛餐式もできなくなったことを受けて

新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの教会が一時期、在宅礼拝を行なっていましたが、私たちの教会を含め、少しずつ会衆が集まる礼拝を再開するところも増えています。

 

しかし、接触感染、飛沫感染のリスクが高い聖餐式は、未だほとんどの教会が再開できずにいると思います。私たちの教会でも、在宅礼拝期間中に聖餐式ができなくなったことを受け、各家庭でも行える「愛餐式」の動画を配信していました。

 

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ところが、会衆の集まる礼拝を再開したことによって、大勢で食卓を囲むことによる感染リスクが懸念され、礼拝の中で聖餐式も愛餐式もできなくなってしまいました。そこで今回、聖餐式と愛餐式の式文を基に、新しく「食卓を囲めない日の祈り」を作成してみました。

 

「食卓を囲めない日の祈り」とは

これは、感染症の流行によって聖餐式ができない日曜日や、食事が喉を通らない方の病床訪問の際、聖餐式の代わりに使用できるものとして作ってみた式文です。ライブ配信を通して自宅で礼拝している方も、教会に集まった方も、信仰を告白した方も、告白していない方も、共に祈りを合わせることができます。

 

直接飲んだり、食べたりすることができない間も、神様が備える「見えないパン」「見えない水」である命の言葉をいただいて、神の国の恵みを分かち合いたいと思います。

 

食卓を囲めない日の祈り(式文)

 

賛美歌

ただいまより、「食卓を囲めない日の祈り」を始めます。最初に、オンライン賛美歌「枯れた谷に鹿が」(©️柳本和良)を3回繰り返して歌いましょう。

 

(*感染症に配慮する必要がある場合は、マスクをしたまま歌うか、奏楽に合わせて司式者が歌詞を朗読する)

 

招 き

かつて、私たちの主イエス・キリストは、パンを求めて集まってきた群衆に言われました。「わたしは命のパンである。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決して渇くことがない。(ヨハネ6:35)」「わたしが父によって生きるように、わたしを食べる者もわたしによって生きる。(ヨハネ6:57)」

 

また、主は水を求めてやって来たサマリアの女性に言われました。「わたしが与える水を飲む者は、決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る。(ヨハネ4:14)」

 

主は、荒れ野で悪魔の誘惑を受け、空腹の中「石がパンになるよう命じたらどうだ」と言われたとき、「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる(マタイ4:4)」と答えました。そうして悪魔は離れ去り、主はガリラヤに帰られて、人々に神の言葉を与えました。

 

今、様々な事情で食卓を囲めない私たちに、主は「命のパン」「命の水」である神の言葉を与えます。食事が喉を通らず水も飲めない人々に、みんなと一緒に食事を味わえない人々に、神様は新しい糧をもたらします。

 

共に、聖書を通して与えられた神の恵み、神の祝福を分かち合う、見えない食卓を囲みましょう。

 

(*訪問礼拝でこれを行う場合は、ここに「聖書朗読」と「メッセージ」が入る。礼拝の中で行う場合は、「食卓を囲めない日の祈り」を「聖書朗読」と「メッセージ」の後、感謝の応答の部分に配置する。)

 

感謝の祈り

恵みと祝福の源である私たちの神様、あなたは私たちの欠乏を満たす「命のパン」「命の水」をお与えになります。孤独に共感を、対立に連帯を、恐怖に信頼をもたらします。あなたは私たちを死の恐れから解放するため、御子イエス・キリストを遣わされ、共に渇き、共に飢え、共に痛みを負われました。

 

ご自分が渇いているときに、孤立した女性に水を求め、新しいつながりを与えました。ご自分が飢えているときに、神の言葉に信頼し、人々に希望を示しました。パンがなく、水がなく、共に食卓を囲めないとき、あなたの言葉一つ一つは、私たちに見えない糧をもたらします。

 

どうか今、あなたから受けた恵みと祝福を、私たちも互いに分け合う者とならせてください。あなたの愛と平和がこの世界を満たしますように。アーメン。

 

とりなし

共に、「命のパン」「命の水」である「神の言葉」を分け合いましょう。皆さんの隣に、前に、後ろにいる人、あるいはそばに居られない人、共に集まれない人のために、あなたが受け取った神の祝福を宣言しましょう。

 

司式者:主は言われます。

一 同:「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる(ルカ23:43)」

司式者:私たちも知らせましょう。

一 同:「主があなたと共におられます」

 

司式者:主は言われます。

一 同:「あなたがたに平和があるように(ヨハネ20:19)」

司式者:私たちも答えましょう。

一 同:「主のお言葉どおりになりますように」

 

 

応答の祈り

感謝の応答として、共に祈りをささげましょう。

 

信仰と希望と愛をもたらす私たちの神様、今ここで、食卓を囲めない日に、「命のパン」「命の水」であるあなたの言葉を分かち合えたことを感謝致します。日々、あなたがもたらされる日用の糧も、心を養う御言葉の糧も、必要なとき、必要な仕方で備えられてきました。

 

足りない者には与える者が、失くした者には見つける者が、一人の者にはつながる者がもたらされます。どうか今、私自身も、あなたからいただくつながり、発見、恵みの数々を、共に分け合う者として、送り出してください。

 

主イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

 

讃美歌

オンライン讃美歌「あなたの内なる人を」(©️柳本和良)を3回繰り返して歌いましょう。

 

(*感染症に配慮する必要がある場合は、マスクをしたまま歌うか、奏楽に合わせて司式者が歌詞を朗読する)

 

愛餐式(神の祝福を分かち合う食事)の式文

愛餐式 式文 2020年4月9日

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CouleurによるPixabayからの画像

 

聖餐式の休止にあたって

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、多くの教会で感染リスクの高い聖餐式や礼拝そのものが休止されています。私たちの教会も徒歩10分圏内の所でクラスター感染が起きてしまい、初めは聖餐式、そして、会堂で集まって行う礼拝も、休止することを余儀なくされました。

 

現在、教会に集まって礼拝することができない人たちのために、華陽教会のYouTubeチャンネルで「聖書朗読・メッセージ・とりなし」の動画を毎週UPしていますが、しばらくの間、聖餐式は会衆の方々と一緒に行うことができません。

 

しかし、確かに聖餐式は無理ですが、「愛餐式」であれば、動画を見ながら各家庭で食事を分かち合うことができるんじゃないかと思いました。

 

【愛餐式とは】

愛餐式は、キリストが神の国のしるしとしてなされた5千人の給食を根拠にした「神の祝福を分かち合う食事」です。モラヴィア派の人々やメソジスト教会の各家庭で、かつては盛んに行われていたものでした。

 

教会の聖礼典である聖餐式と違い、洗礼を受けていない人もあずかることができるので、現在もカトリックとプロテスタントの教派を超えた礼拝や、未受洗者が多く集まる地区・教区の新年礼拝などで用いられています。

 

愛餐式では、水とパンの他にお茶とクッキーなどが用いられ、聖餐式と区別するため、ぶどう酒やぶどう液は使われません。今回の式文は、1990年の日本基督教団東京教区北支区ニューイヤーフェスティバルに使用されたオリジナルに、阿佐ヶ谷東教会の坂下道朗先生が手を加えたものを参照し、私個人が作成した式文です。

 

聖餐式の場合は、「画面越しのパンとぶどう酒をどう聖別するか」などの問題が出てきますが、もともと各家庭で行われていた私的な性格のある愛餐式であれば、それぞれの家でパンと水を用意し、動画をご覧になりながら、一緒に祝福を分かち合う食事ができるのではないかと思います。

 

用意するパンと水は特別なものではなく、普段、日常の食事に出てくるパンと飲み物で大丈夫です。日毎の糧と御言葉によって私たちを養われる神に感謝し、その祝福を分かち合いたいと思います。

 

【参照】

http://www004.upp.so-net.ne.jp/msaka/aisan.htm

http://www004.upp.so-net.ne.jp/msaka/aisan.htm

 

【愛餐式の様子】

 


【愛餐式】神の祝福を分かち合う食事

 

愛餐式

【賛美歌】

ただいまより、神の祝福を分かち合う食事、愛餐式を始めます。

最初に、讃美歌432番「重荷を負う者」を歌いましょう。

 

(動画では、作詞者・作曲者の権利に配慮して歌いませんが、『讃美歌21』をお持ちの方は、ぜひ、この賛美を味わいつつ、食事にあずかる準備をしましょう)

 

【招 き】

かつて、私たちの主イエス・キリストは、パンを求めて集まってきた群衆にこう言われました。「わたしは命のパンである。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決して渇くことがない。(ヨハネ6:35)」「わたしが父によって生きるように、わたしを食べる者もわたしによって生きる。(ヨハネ6:57)」

 

また、主は水を求めてやって来たサマリアの女性に言われました。「わたしが与える水を飲む者は、決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る。(ヨハネ4:14)」

 

主は、山上で少年から受け取ったわずかなパンを祝福し、空腹だった5千人以上の人々に分けられ、全ての者が食べて満腹になりました。この食卓は、キリストが神の国のしるしとしてなされた、あの「5千人の給食」のように、主の祝福による神の国のしるしです。

 

信仰を告白した者があずかる聖餐式ではありませんので、神の祝福を分かち合うため、集まっておられる人々は、共に食事にあずかりましょう。

 

*愛餐式単体で行う場合は、ここに「聖書朗読」と「メッセージ」が入る。礼拝の中で行う場合は、愛餐式を「聖書朗読」と「メッセージ」の後、感謝の応答の部分に配置する。

 

【感謝の祈り】

感謝の祈りをささげましょう。

 

恵みと祝福の源なる私たちの神様、あなたは私たちに「命のパン」「命の水」をお与えになります。足りないものを満たし、欠けている力を養います。あなたは私たちを死の恐れから解放するため、御子イエス・キリストを遣わされ、貧しい者、嫌われ者、負い目のある者たちと、共に食事にあずかりました。

 

様々なやましさや後ろめたさがある人も、悩みや葛藤がある人も、疑いや迷いがある人も、あなたは隔たりなく近づかれ、同じテーブルにつかれます。あなたが与えるパンと水は、信じない者を信じる者に、悲しむ者を喜ぶ者に、争う者をとりなす者に変えられます。

 

どうか今、あなたから受けた恵みと祝福を、私たちも互いに分け合う者とならせてください。あなたの愛と平和が豊かに現されますように。アーメン。

 

【分かち合い】

共に、パンと水を分け合いましょう。普段、聖餐を受けられない人も、このパンと水は「信仰を告白している」「していない」にかかわらず、一緒にいただくことができます。どうぞ、用意されたパンと水を受け取って、神の祝福にあずかりましょう。

 

主は言われます。

「わたしの父が天からまことのパンをお与えになる。(ヨハネ6:32)」

私たちもいただいたパンを食べましょう。

あなたの内側から、生きた力が溢れ出るように。

 

主は言われます。

「渇いている人はだれでも、わたしのところに来て飲みなさい。(ヨハネ7:37)」

私たちもいただいた水を飲みましょう。

あなたの内側から、生きた水が流れ出るように。

 

【献げ物】

感謝の応答として、共に祈りをささげましょう。

 

愛と平和の主である私たちの神様、今ここで、あなたの祝福を分かち合う食事にあずかれたことを感謝致します。日々、あなたがもたらされる日用の糧も、心を養う御言葉の糧も、必要なとき、必要な仕方で備えられてきました。

 

足りない者には与える者が、失くした者には見つける者が、一人の者にはつながる者がもたらされます。どうか今、私自身も、あなたからいただくつながり、発見、恵みの数々を、共に分け合う者として、送り出してください。

 

主イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。

 

 *愛餐式を礼拝の中で行う場合は、ここに「献金」が入る。

 

【讃美歌】

讃美歌419番「さあ、共に生きよう」を歌いましょう。

(こちらも、作詞者・作曲者の権利に配慮して歌いませんが、『讃美歌21』をお持ちの方は、ぜひ、賛美に込められた応答の思いに心を合わせましょう。