ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜

*聖書の引用は特別記載がない限り、日本聖書協会『聖書 新共同訳』 1987,1988 から引用しています。

教会の新型コロナウイルス感染症対策

教会の感染症対策 2020年3月3日

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【教会で行なっている感染症対策】

華陽教会では、今のところ礼拝や聖書研究祈祷会を通常どおり続ける予定です。新型コロナの感染力は事例によって様々ですが、多くの事例で感染者は周囲の人にほとんど感染させていません*1。これまでも、単に空間を共にしたくらいでは感染しにくいことが分かっています*2

 

ただし、閉鎖的な空間で多くの人と近距離で会話する環境だと、咳やくしゃみがなくても感染を拡大させるリスクがあります*3。華陽教会は最大80名が座れる空間で平均25名の人が礼拝に出席しています。礼拝の前後に換気もしっかり行なっています。当日は加湿器を入れて、なるべく間を空けて座るように呼びかけています。

 

礼拝時間はメッセージをコンパクトにして40〜50分程度に短縮しています。受付ではアルコール除菌をしてもらい、必要な人にマスクを渡しています。接触感染を防ぐため、トイレではペーパータオルを利用してもらっています。

 

第一日曜日の聖餐式は、用意する人に除菌とビニール手袋の使用をお願いしています。司式者も除菌をしてからパンと杯に触れています。華陽教会の聖餐式は、配餐者2人がそれぞれの席へ盆を持っていき、本人が直接パンと杯を取るようにしてもらっているため、接触は最低限になっています。

 

昼食サービスについては、箸・コップ・お皿は全て使い捨てを利用しています。配膳する人にはビニール手袋を利用してもらっています。だいたい20名が座れる空間に10名前後の人が座ります。礼拝堂に比べると部屋が小さいので、念のため昼食中もドアを開けて換気を促しています。

 

もともと基礎疾患のある方や、発熱・呼吸器症状・倦怠感などが出ている方、睡眠不足の方には出席を控えてもらっています。高齢のため、免疫が下がっているため、家族にうつすのを心配しているため相談された方にも出席を控えてもらっています。

 

奏楽や司式の奉仕に当たっている方も相談の上、同じようにしています。迷惑をかけるかもしれないと遠慮せず、今後も不安なことがあれば牧師にご相談ください。

 

【教会から感染が確認された場合】

もしも、華陽教会の礼拝に出席している人から新型コロナウイルスの感染が確認された場合、その日から2週間以内の礼拝、祈祷会、集会の開放を中止します。その間に、発熱・呼吸器症状・倦怠感などが見られる方は、礼拝を再開してからも、しばらく出席を控えてもらいます。

 

また、同じ建物を共有している芽含幼稚園から感染が確認された場合も、礼拝に出席している人と被っているため、潜伏期間*4を考慮して同様の対応をします。

 

礼拝への出席を中止している間は、Facebookページから動画による聖書朗読、メッセージ、とりなしの祈りを配信します。讃美歌は権利関係の確認に時間がかかるため動画には挙げません。礼拝メッセージの原稿は、当日読むこともできるようにブログで公開します。

 

新型コロナウイルスは、季節性インフルエンザに比べて感染力は少し弱く、重症化のリスクは少し強いくらいの性質です*5

 

重症化するリスクの高い高齢者の多い教会や、会堂が閉鎖的な構造になっている教会、広範囲の信徒が出席する大規模な教会や、礼拝参加者で混むような教会では、礼拝の中止も適切な判断だと思います。ただ、条件に関係なく集会へ出席することを極端に恐れる必要はないと思います。

 

【感染症対策を変更する場合】

基本的には、上記のような対応を実施していきますが、ウイルスについての情報の更新や環境の変化によっては、対応を変える場合もあります。たとえば、聖餐式や昼食サービスは岐阜市内の状況によっては中止にするかもしれません。その都度、対応を考えた上でお知らせしようと思います。

 

 

【参考資料】

www.mhlw.go.jp

www.mhlw.go.jp

www.minesot.com

 

 

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これってカルトですか?(1)〜破壊的カルトの類型〜

破壊的カルト 2020年2月1日

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カルトかどうか迷ったら

「破壊的カルト」と言えば、怪しい宗教団体を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、実際には政治団体、ボランティア、商業サロン、心理セミナー、大学のサークル、ママさん同士の交流会にも「破壊的カルト」と呼べるグループが存在します。

 

「これって実はカルトじゃないの?」あるいは「カルト化してるんじゃないの?」……そう思われる団体があるものの、他の事例を知らないために確信を持てない経験が皆さんにもあるかもしれません。

 

そこで、今回は破壊的カルトの類型やカルトと親和性の高いビジネスモデル、またはカルト化していった言説などを紹介し、怪しい団体と出会った際に判断のヒントにしていただければと思います。

 

なお、ここで言う「破壊的カルト」とは、個人の人権を侵害し、公共の福祉や利益を破壊するような社会問題を引き起こす団体のことを指しています。その団体の教義・主張・言説がおかしいだけでは、破壊的カルトと言うことはできません。

 

しかし、主張されている内容を信じ込むことによって、適切な医療を受けられなくなったり、健康を損ねたり、金銭的な被害を受けたり、人間関係を壊されたりする場合には、破壊的傾向が強いと言えます。

 

もし、そういった問題が見られる団体・ネットワークにおいて、

 

1)金銭的・精神的・肉体的被害が訴えられている。
2)それらの「被害者の会」ができている。
3)法的な不祥事や訴訟が起きている。

 

といった点を確認できたら、ほぼ「破壊的カルト」と言って差し支えないでしょう。以下に、そういった具体的事例が報告されている破壊的カルトの類型を挙げていきたいと思います。

 

なお、参考資料として紹介している記事は、あくまでこれらを調べる際、参考にできるもので、サイトに書かれた全ての主張を支持するものではありません。

 

思想・政治カルト

思想・政治カルトは、批判者や反体制側の人間を過度に否定したり、攻撃したり、妨害したりする抑圧的な支配体制を持っており、左派、右派、保守、リベラルを問わず存在します。

 

特徴としては独裁主義の傾向が強く、報道機関の支配、自由な集会や選挙の阻止、権力の濫用を防止する抑止機能や均衡を欠いてることが挙げられます*1

 

分かりやすい例としては、旧ソビエト連邦やテロ集団*2、国内ではあさま山荘事件を中心とした連合赤軍による集団リンチ事件など*3があります。ナチスをはじめとする特定の人種・民族を排除する団体もここに入ってくるでしょう。

 

目的のためなら法や憲法、定められた手続きを軽視する傾向が強く、一方で、指導者や組織の言うことをきかないメンバーは、容赦ない排除や攻撃にさらされます。

 

また、思想・政治カルトは徹底した情報コントロールが特徴で、都合の良いフェイクニュースを拡散し、反対に都合の悪い情報を「フェイクニュース」として切り捨てるようメンバーをコントロールしていきます。

 

この構造は左派、右派、保守、リベラル関係なく、自分たちの主張に説得力を持たせ、反対者を攻撃できるものならば、疑似科学や陰謀論も自然に拡散されていきます。「反ワクチン」「温暖化否定説」「ホロコースト否定説」「在日特権」なども度々結びついています(政治団体とは関係ないところでこれらの言説がカルト化しているものもあります)。

 

自分は「正しい情報」を知っているから「何も知らない人」あるいは「間違った情報を信じている人」に真実を教えなければならない……という善意、親切心からこれらのニュースは拡散されます。

 

さらに、「自分たちの立場は間違ってない」という保証を発見し、「反対者に騙されない論理」を身につけるために、メンバーは関連した情報をさらに集めようとしていきます。

 

そのため、こういった情報を発信する人の本やメルマガが購入されやすくなり、後述する「信者ビジネス」とも親和性が高くなっています。しかし、間違った情報を拡散することによって、理不尽な差別や暴力を受けたり、日常を破壊される人たちがいることを忘れてはなりません。

 

そして、思想・政治カルトは非常に多くのフロント組織を持っています*4。社会福祉機関や教育セミナー、ボランティアやディベートサークルが入り口になって、カルトのメンバーになった人もいます。

 

たいていの場合、グループの真の目的はその人がすっかり馴染むまで知らされず、気づいたときには離れがたい関係ができており、極端な主張や言説にも疑問を持ちにくくなっています。

 

また、政治団体そのものが、破壊的カルトのフロント組織になっていることも多々あります。その場合も、組織のはっきりした目的や他団体との関係を表立って示さないことが多いです。

 

もし、自分の属しているグループが、その正体や目的をずっと後になってから明かした場合、たとえどれだけ周りがいい人たちでも、自分の自己決定権を侵害するような組織であることに目を留めましょう。

 

【参考資料】

www.vice.com

bunshun.jp

dailycult.blogspot.com

dailycult.blogspot.com

 

 

商業カルト

商業カルトは、人々が持つ富と権力への幻想をかきたて、メンバーをほとんど奴隷的な献身状態に誘い込む特徴があります*5

 

ステータスの獲得や効率よく儲けることを信条とし、詐欺商法、仲間からの圧力、経済的な支配などの手口を使い、時には援助交際や友人関係も利用して人集めを行います*6

 

その多くは、ピラミッド型の「マルチ・レベル・マーケティング(MLM)」の組織で*7、日本では「ネズミ講」や「マルチ商法/ネットワークビジネス」として知られています。ここでは、ネット上で騒がれている「情報商材」や「信者ビジネス」とも合わせて紹介したいと思います。

 

マルチ商法/ネットワークビジネス

マルチ商法は、「会員になって、新たな購入者を獲得したら多額のボーナスが得られる」などと、個人を商品の販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘すれば収入があがるとして販売活動をさせ、連鎖的に販売組織を拡大していく商法です*8

 

たとえば、「最初に自分が1セットを◯万円で買う。それから友達を誘って、△人に入会させればバックマージンが入って元が取れる。⬜︎人に入会してもらえば、すぐに月収数十万円になるから」というように説明され、入会の際には商品・サービスを購入する金銭的な負担が必要なこと、とにかく人を紹介するよう勧められることが特徴です*9

 

問題は、この商法の行き着く先が「破綻」しかないことです。例えば、一人の会員が月に二人の勧誘に成功したとして、その二人がそれぞれ二人ずつ勧誘すると、2年3ヶ月後には日本の人口を超えてしまいます。マルチというのは、はじめて間もなく行き詰まる商法であり、収益のほとんどはトップの数名に独占されてしまいます*10

 

また、必ずしも、金に執着する人が巻き込まれるわけではなく、むしろ「自立したい」「一人前になりたい」「誰かに貢献できるようになりたい」という人が巻き込まれていきます。自分たちが広めている商品やサービスは素晴らしく、もっとたくさんの人に使われるべきだとすっかり信じ込まされます。

 

しかし、その商品の多くは、謳われているほどの効果はなく、ほとんどが薬機法や景表法に違反しています。また、商品を勧めるために疑似科学やトンデモ医療に片足を突っ込んで被害者を出し、刑事事件や訴訟に発展していくこともあります。

 

にもかかわらず、「健康法」や「◯◯セラピー」の講師として、公民館や市役所、学校で開催するセミナーに、マルチ商法と関わる人間が招かれるケースが後を絶ちません。医者や看護師、幼稚園の先生など、命をあずかる立場の人間がこれらの発信元になっていることも少なくないのです。

 

しかし、当事者は周りが『やめなよ』と言ってくるたびに、仲間たちから『つらかったね、大変だったね』と優しく受けとめられ、ますますマルチとの関係を強くしていきます*11

 

また、これらの仲間は普段から、お茶や遊び、勉強会や研究会に誘い合って、絆を深くしています。単に金儲けがしたいからそこへ行くのではなく、勧誘によって周りとの関係が崩壊し、他に居場所がなくなっていることも、マルチから抜け出せない理由です。

 

【参考資料】

diamond.jp

 

 

情報商材

情報商材は、「簡単に稼げる方法」や「確実に成功するやり方」など、情報そのものを商品として扱っているものです。主にインターネットで売買され、ブログ、Facebook、TwitterなどのSNSや、YouTubeやニコニコ動画が入り口となって、金額に見合わない内容やリスクを隠された情報を購入させるケースが増えています。

 

例えば、「投資で確実に儲かるシステムを50万円で買い、さらに他の人へこのシステムを紹介して売ったら、バックマージンとして一人5万円がもらえる」などと説明し、実際には儲けが出なくても「あなたの勉強不足が原因」と言って、返金・解約に応じてもらえない例などがあります*12

 

また、「ブログで収益をあげる方法」「YouTubeで儲かる方法」など、数千円〜数万円で購入させ、実際にはネットで検索すれば無料で見られるものばかり……といったケースも目立ちます。

 

これら悪質な情報商材の特徴は、「◯◯で儲かる方法を購入させ、さらにそれを別の人へ購入させる」というマルチ商法と共通した構図が見えることです。

 

また、note、メルマガ、Facebookページ、LINEグループを利用したオンラインサロンに入会させ、毎月会費を払わせながら、ほとんど更新がなかったり、会員のサポートを十分に行わないところもあります。

 

しかし、これらの情報を売る人は「頑張っている人が報われるように!」「みんなが成功できるように!」と優しい言葉でメンバーの仲間意識をコントロールするため、批判や指摘をした人が「アンチ」として叩かれ、攻撃や排除にさらされる傾向があります。

 

他にも、「美容」「健康法」「ダイエット」「短期間で成績を上げる勉強法」「記憶力を向上させるやり方」など、様々な情報が売られていますが、これらの中にも薬機法や景表法に違反するものが多々見られます。

 

それらを科学的根拠があるように謳いながら、実際には疑似科学やオカルトと変わらない内容のため、間違った方法を実践して悲惨な目に遭っている人たちもいます。

 

最近では、社会人、主婦、学生だけでなく、中高生をターゲットにした情報商材も増えているため、警戒が必要です。

 

情報商材は性質上、その金額に見合った内容か、信頼できる中身かどうか、事前に知ることができません。しかし、「絶対」「確実」「完全」といった言葉で購入を勧めてくる場合には、十中八九、おすすめできないものでしょう。

 

むしろ、「内容をある程度確認してから購入できる」本屋さんの存在は、現代の私たちにとって、思った以上に貴重なものかもしれません。

 

【参考資料】

www.j-credit.or.jp

www.pref.saitama.lg.jp

www.kokusen.go.jp

 

信者ビジネス

信者ビジネスは、カリスマ的な指導者、教師、インフルエンサーが人気を集め、「信者」となった人たちからお金を吸い上げるシステムです。

 

個人で気軽に登録できるクラウドファンディングのサイトなどを利用して、「自分に貢げば成功者の仲間入りができる」「自分と一緒に社会に影響力を持つ人間になれる」というように感じさせ、折に触れてはお金を出させます。

 

また、本来は数百円、数千円のものを何千円、何万円で購入させ、「この価値が分からなければ、いつまで経っても成功者になれない」「ここでポンっとお金を出せなければ、あなたは凡人から抜け出せない」と思わせて、そこまで付加価値のないものを高額な値段で買わせます。

 

このとき、「高い報酬を払った」のに「たいして役に立たないものを得てしまった」という構図が、憤りにつながりかねない「認知的不協和」を引き起こし、それを解消しようとする心理が働きます。

 

そのため、信者たちは「これを購入したことで、今までなかったセンスを身につけられた」と自分を納得させてしまうのです。また、信者ビジネスの主導者は、「ここで思い切って購入できない自分の方こそ嫌らしい……」という罪悪感を持たせるテクニックにも長けています。

 

さらに、オンラインサロンを利用した信者ビジネスも活発に行われており、「入会者だけに教える成功の秘訣」「会員だけが見られる◯◯のありがたいお言葉」などが月額で提供されますが、金額に見合ったサービスとは言えないことが多いです。

 

しかし、サロンの中で批判的なことを言うと、それからは無視されるようになったり、サポートを受けられなくなったり、他の会員たちから攻撃されるようになることも多々あります。

 

入会直後は優しくされ、色々なところで持ち上げてもらえますが、思うような成果が出ないと、教材の内容の薄さではなく、本人の努力が足りないせいだと言われるのです。

 

信者ビジネスは、あらゆる破壊的カルトと親和性が高く、初めはまともなクリエイターや発信者だった人々が、徐々にカルト化していく例もあります。

 

支援する側、支援を受ける側が互いに誠実な関係を保てるように、これらの問題にはよく注意しておくべきでしょう。 

 

【参照資料】

note.com

www.cyzowoman.com

www.excite.co.jp

 

 

心理療法カルト

心理療法カルトは、自己啓発セミナーを典型とするもので、自己変革や向上を目指して努力することを動機とし、中には心理療法まがいのものもあります*13

 

大きく分けると、「一人のセラピストと複数の相談者で構成されるもの」と「複数のセラピストがワークショップやグループセラピーを行うもの」があり、中には不動産を購入して共同生活を行う集団もあります*14

 

講師は、「心理カウンセラー」「メンタルカウンセラー」「◯◯セラピスト」「◯◯コンサルタント」「◯◯認定講師」などの肩書きで、いかにも専門的な知識を持っているように見せますが、民間団体で短期間のトレーニングを積んだだけの者が多く、実際には心理学やカウンセリングの学位を持たず、十分な知識と訓練を積んでいません。

 

本当の心理療法や心理カウンセリングとの見分け方は、「治る」「解決する」云々と誇大広告的になっていないこと(景表法に違反していないこと)、カウンセリングのシステム等について料金も含めきちんと明示されていること(ただし高額でないこと)、カウンセラー自身が公的な学会等にも所属し、研修も続けていると思われること(よく知られてない名前だけの学会でないこと)といった点を確認することが重要です*15

 

自己啓発セミナー

自己啓発セミナーは、「自分を変える」「成長する」「コミュニケーション能力を養う」などと謳って高額なセミナーに通わせ、極端な自己責任を強調し、組織に忠実な人間を育てる心理療法カルトの一つです。

 

参加費は数万円〜数百万円で、ホテルの会議室などを会場としていることが多いです。ワークショップやセミナーでは、参加者を「絶頂感」に導くため、多くの初歩的なマインド・コントロールの技術が駆使されます*16

 

簡単に言えば、自分で考える隙を与えず、周りの空気や雰囲気に同調させ、自己の秘密を開示させてメンバーとの一体感を生み出し、トレーナーの言うことを全て信頼し服従するよう導くのです。

 

心理的に操作された参加者は、次の段階へ行くことを促され、より高額の「上級者」コースに申し込まされ、そこからセミナー団体に深く巻き込まれる人が出てきます*17

 

そして、今度は友人や親戚、仕事仲間を勧誘するように言われ、勧誘活動に批判的なメンバーは切り捨てられます。このような自己啓発セミナーに関与した結果、自死や無謀な事故死だけでなく、無数の精神衰弱、離婚や別離、仕事上の失敗や倒産などの事例が発生しています*18

 

セミナーの中で使われている集団心理療法のテクニックは、現代では様々な問題が指摘されており、「引き寄せ」「成功法則」「積極思考」など、教えられている内容も科学的根拠はありません。

 

むしろ、社会的問題を生み出した宗教カルト、商業カルトが好んで勧める思考法、世界観でもあるのです。セミナーの内容やタイムテーブルを隠して誘われてきた場合、丁重に断ることをお勧めします。

 

【参考資料】

biz-journal.jp

www.n-seiryo.ac.jp 

認定講師セミナー

認定講師セミナーは、「悩んでいる人の相談に乗れる」「専門的なアドバイスができる」「相談者のトレーニングができる」ようになれると謳う資格商法、資格ビジネスの一つです。

 

簡単に言えば、カウンセリングに来たお客さんに対し、「あなたもカウンセラーになれるのよ」と誘ってくるやり方で、数日〜数週間のセミナーに通わせ、「◯◯が認定したカウンセラー」として売り出されます。

 

しかし、医者が数日でなれないように、本来は心のケアができる人間も短期間に育成できるものではありません。多くは、基礎的な知識を持たず、誤った方法を身につけて、不適切なケアをする講師を量産してしまいます。

 

にもかかわらず、臨床の現場で役に立たない資格、履歴書に書くと不審に思われるような資格を、さも特別な技能を得た証であるかのように宣伝し、高額なセミナーに通わせる被害が相次いでいます。

 

そして、新たな「講師」「マスター」「カウンセラー」「コーチ」「セラピスト」「コンサルタント」を生産し、次の受講者をターゲットにしていくのです。

 

これは、心理カウンセラーに限らず、性教育の講師や子育てマスター、食事療法の講師など、様々な分野に見られます。

 

最近では、公民館や学校など、公の場でこれらの講師がセミナーを開いたり、「心の悩み相談会」「食育カフェ」「発達障害カフェ」などを開催し、「自分も講師のようになりたい」と思う人間を次々と生み出しています。

 

さらに、既存宗教団体でも、キリスト教などの聖職者に向けて「預言者」や「使徒」の認証を受けられるセミナーを開催している団体もあります。

 

こういった「技術」や「知識」を売るセミナーに関しては、自分が次の「加害者」として養成される可能性があることを、よくよく心に留めておきましょう。

 

【参考資料】

diamond.jp

www.cyzowoman.com

 

 

コーチング/悪質セラピー

心理療法カルトは、もともとグループ・セラピーの一種として生まれてきたものですが、講師と相談者が一対一で行う「コーチング」というタイプも存在します。

 

先に挙げた自己啓発セミナーや認定講師セミナー出身の人たちも多く、「引き寄せ」や「成功法則」など、スピリチュアルの思想が混ざった教えに基づいて、不適切なトレーニングを行っている人が多いです。

 

対象は様々で、ビジネス、子育て、就活に悩む人たちのほか、発達障害や心の病に苦しむ人たちにも、科学的根拠に基づかない知識で、トレーニングや療法、療育が行われます。そのやり方を正しいと信じきっているのです。

 

たとえば、「すべての精神的な問題は幼少時の体験に原因がある」として、クライアントに幼児期の性的虐待の記憶があると思い込ませたり、「自分に正直になり感情を解放すれば解決する」として、おおっぴらに性生活を公表させたり、散財を招いたりしています。

 

もちろん、このようなやり方は間違いであり、倫理的にも問題です。しかし、コーチングやセラピスト、コンサルタントを自称する人の多くは、世界中で検証されてきた知識・やり方を学んでません。定期的な研修やスーパービジョンもないために、間違った内容を修正することがないのです。

 

また、教えや相談をメインに据えず、「お茶会」や「セッション」と称して、自分と話す時間にお金を出させるケースもあります。界隈の人がみんなやっているから、違和感なく同じことをしている人もいるでしょうが、少し立ち止まって考えてほしいのです。

 

一般に、臨床心理士など、きちんと学位や訓練を積んだ者が行うカウンセリングは、1時間5000円〜12000円くらいが相場です。これは、数年間講義や研修を受けてきた間にかかった費用と、継続して研修を受けるためにかかる費用、また一日に受けられる相談数の限度から考えられる妥当な金額です。

 

しかし、数日間・数週間のセミナーを受けただけの人間が、同等の料金で相談を受けたり、これより高額な料金を請求する場合もあります。その料金を支払うことによって、相談者は適切な治療やトレーニングを受けられているでしょうか? もし、間違ったやり方によって、無駄な時間やお金を出させていたら、加害者になってしまいます。

 

もしも今、数十万〜数百万のセミナーを受講し、専門的な知識を身につけ、誰かを教えられる、指導できる者としてコーチやセラピスト、カウンセラーをしている方は、今一度、自分が民間団体の資格商法に騙されていないか、新たな被害者を生み出していないか、確認していただけると幸いです。

 

【参考資料】

www.soudanrindou.com

wezz-y.com

wezz-y.com

 

宗教カルト

宗教カルトに共通するのは、教義や霊的な実践活動を組織の中心に据えていることです。「宗教」を自称していなくても、霊的グループ、真理を追求するグループとして、何らかの教義や信条を持ち、社会問題を起こしている団体もあります。

 

聖書や経典に基礎を置くユダヤ教系、キリスト教系、イスラーム系のグループでは、リーダーは自らを「救世主」「預言者」「使徒」などと自称して信者に服従を強いてきます。なかには、「理事会」あるいはそれに類した名前で呼ばれるエリート集団が聖書、経典の真の意味を知っていると主張する団体もあります*19

 

ヒンズー教系、仏教系、シーク教系、ジャイナ教系、スーフィー教系などの東洋宗教をベースにしているグループでは、 「悟りの境地に達したアバター(神の化身)」「グル」「リンポチェ(チベット仏教の師の尊称)」「完全なる成就者」「過去の解脱した成就者の生まれ代わり」を自称しているリーダーがいます*20

 

多神教系カルトの中には、呪術や魔術のマスターであると公言するリーダーもいます。また、様々な宗教的教義を寄せ集めたような教えを説くカルトや、リーダーが異次元の強力な存在(高次元など)と交信できると称するカルトも存在します*21

 

カルトのリーダーの大半は「精神」世界の担い手を自称していますが、実際の贅沢な生活態度、何百万円もする不動産、手広い事業活動、物質世界への力の入れよう、性的な搾取などをよく見れば、その本性が見えてきます*22

 

霊感商法・開運商法・霊視商法

宗教カルトで最も有名なのは、霊感商法による被害です。霊感商法とは、人の不安や信仰心に付け込み、先祖の祟りやこのままでは不幸になるなどと言って恐怖心を煽り、高額な商品を売りつける商法で、開運商法とも呼ばれます*23

 

たとえば、「手相の勉強をしています」とか「生活意識調査/社会貢献に関するアンケートをしています」などと言って近づき、セミナーやビデオ上映会、合宿など誘ってきます*24

 

その後、家系図を調べさせたりして、「あなたの先祖は地獄にいる」「あなたが行動すれば家族や先祖を救うことができる」「今が転換期だから」と言葉巧みに誘導し、高価な印鑑セットや大理石の壺、多宝塔、数珠(念珠)、水晶、高麗人参茶(エキス)、絵画など様々な商品を売りつけます*25

 

販売価格は高価なものが多く、クレジット契約をさせたり、学生ローンを組ませたり、パートナーの退職金や子どものための貯蓄まで使わせます。

 

また、「いま祈祷しないと災いが降りかかる」などと、不安や悩みに付け込んで、「祈祷料」「除霊料」「供養料」などの名目で高額の献金を払わせ、商品の販売はしないものを「霊視商法」と言います*26

 

もし、これらの被害に遭われたら、各都道県の「消費生活センター」か、下記のリンクにある窓口までご相談ください。

 

【相談窓口】

www.stopreikan.com

e-kazoku.sakura.ne.jp

www.asahi-net.or.jp

 

二世問題

宗教カルトの中には、一見、霊感商法など特に悪いことをしていないように見えるものの、信者の子どもたちが深刻な人権侵害に遭っているグループも存在します。

 

たとえば、親が子どもを鞭で打つのを容認するなど、虐待や体罰を正当化し、教育のために奨励しているところなどです*27

 

組織以外の子どもと仲良くするのを禁じたり、友達からもらったプレゼントを捨てさせるところもあります。また、「奉仕」と称して子どもを強制的に組織の活動に参加させ*28、本人が望まない労働や勧誘活動に連れ出されることもあります。

 

さらに、教義の中で競争が禁止されているゆえに、運動会などの学校行事に参加することを拒否させたり、争いや婚前交渉を禁止しているため、アクション映画や恋愛漫画を見ることが許されなかったりします*29

 

組織に批判的な文書はもちろん読ませず、ネットやSNSも禁止され、徹底した情報コントロールで、子どもたちが疑問を持っても、自分の方が間違っていると思い込ませていくのです。

 

中には、小学生やそれ以下の年齢であっても、親から引き離して所定の施設に住まわせたり*30、子どもに一般社会の基本的な規則・慣習・常識を身につけさせないところもあります*31

 

子どもが大きくなってからも、高校進学や大学進学を妨げ、教団立の学校へ強制的に入学させたり、組織の勧める就職先で働かせるケースも出ています。しかし、親や周りの大人に頼らなければ生きていけない子どもたちは、自分から脱会することもできません。

 

成人して、これらの団体から抜け出した人たちも、小さい頃に身につけさせてもらえなかった人との距離感、社会の常識についていけず、孤立してしまうことも多いです。長年刻み込まれた組織の教えで、未来に対して希望が抱けず、どう生きていけばいいか分からない人たちもいます。

 

現在では、こうした破壊的カルトの二世たちに、逃げる場所、住む場所、食べる場所を用意して、心理的なケアや生活のサポートをしているところもあります。元二世同士のオフ会を開催している脱会者もいます。

 

たとえ、表立って争いや事件が起きていなくても、子どもたちに対する人権侵害、性的虐待などを行い、それを隠している団体は、健全な組織とは言えません。二世問題をきちんと理解しないまま、宗教的マイノリティとしていくつかの団体を擁護している人たちもいますが、ぜひ、これらの問題に目を留めていただけると嬉しいです。

 

【参考資料】

gendai.ismedia.jp

ddnavi.com

dot.asahi.com

 

 

乗っ取り型カルト

宗教カルトの中でも、「既存宗教団体の乗っ取り」という手法を先鋭化させて、教勢を拡大してきたグループがいます。

 

彼らは、徹底的に教育・訓練された信者を既成教会に送り込みます。送り込まれた信者は、その教会で善良な信徒を装い、自ら進んで奉仕を引き受け、周りの信頼を徐々に獲得していきます。

 

数年かけて、その法人の役員として選出されると、今度は自分を信頼している信徒たちへ、牧師に対する不満や不審を抱かせて、偽の情報を流し始めます。

 

やがて、その牧師を追い出すことに成功すると、役員たちの賛同を得て、自分を送り込んだ組織のリーダーを招聘し、その教会を乗っ取ってしまうのです。

 

最近では、多くの教会で信徒の減少、高齢化が進んでいるため、責任役員の担い手もなかなか見つからない状況です。そのため、乗っ取る側からすると、数年信頼関係を築くだけで、簡単に役員まで上り詰めてしまえるのです。

 

もし、自分の所属する教会で、役員の被選挙権となる条件が極端にゆるい(受洗後◯年、転入後◯年の条件がゆるい)場合は、一度、教会の法人規則を見直した方がいいでしょう。

 

日本では、新たに宗教法人を設立するのがなかなか難しい状況なので、キリスト教会に限らず、法人を持っている団体は、自分たちも狙われた場合に備えて対処しておくことが大切です。

 

【参考資料】

cult110.info

dailycult.blogspot.com

 

引き抜き型カルト

乗っ取り型カルトとはちょっと違って、既存教会から信者を「引き抜く」タイプの宗教カルトも存在します。

 

彼らは、ターゲットの教会に潜入すると、周りの信者をよく理解し、忠実に礼拝を守り、一生懸命献金をささげて、熱心な奉仕者として過ごします。そして、何年もの時間をかけて、牧師と教会員から信頼を獲得します*32

 

やがて、教会内で確固たる足場が築けると、今度はそこから、徐々に集会やセミナーに信徒や牧師を招待し、交通費や参加費まで工面します*33

 

牧師家族も精神的経済的に支えられているので、セミナーに参加したときには、すでに心を奪われており、教えがすんなり入っていくのです*34

 

セミナーに通い始めた人たちは、これまでと人が変わったように同じ主張を繰り返し、とにかく教会を成長させること、伝道しに出て行くことを強調します。

 

教会の行事や礼拝をおろそかにしてまで、他の集会やセミナーを優先させるようになるため、たいていの教会は分裂し、破壊されてしまいます。やがて、信徒の多くが引き抜かれて出て行くか、追い出されてしまうのです。

 

また、最近では既存教会のクリスチャンを狙って、SNSで「私もクリスチャンです」と装って、自分のグループのホームページへ誘導し、徐々に自分の組織の教えを浸透させる人たちもいます。

 

いわゆる「正統派」と「異端」の争いだと見なされてしまう場合もありますが、たとえるなら「私はサッカー部員です」と言いながら、実際にはハンドボールチームに引き抜こうとして勧誘しているような構図で、個人の自己決定権を侵害するやり方だと言えます。

 

一部の教会のFacebookページがそれらの人たちに乗っ取られた事例もあり、今後、既存の宗教団体の信徒を狙う勧誘には、ますます注意する必要があるでしょう。

 

【参考資料】

cult110.info

web.archive.org

cult110.info

blog.goo.ne.jp

 

侵食型カルト

乗っ取り型カルトでもなく、引き抜き型カルトでもなく、もともと健全だった教会が、外から入ってきた教えに侵食されて、破壊的傾向を強く有するようになった宗教カルトも存在します。

 

これは、別の記事でも紹介しましたが、「現在も神から直接啓示を受ける『使徒』や『預言者』が存在する」と主張されている運動や「信仰によって語った言葉は現実化する」という教え、「悪霊との戦いを」強調する運動、「トラウマを暴く癒し」といった、ニューエイジ、ニューソート系の思想を取り入れた団体で、牧師の独裁化、献金の強要、精神的虐待、性的虐待などが報告されています*35

 

ちょうど、心理療法カルトの自己啓発セミナーや悪質セラピー、似非スピリチュアル界隈で用いられる「積極思考(ポジティブ・シンキング)」「引き寄せの法則」「成功法則/成功哲学」などと同じ構図を持っており、信者の考える力を失わせ、献身的な奴隷状態をもたらします。

 

これらは「思いは現実になる」「祈れば癒される」「ささげれば裕福になる」「従えば成功する」など、一見魅力的な教えを有しているため、爆発的な教会成長をもたらし、一気に信者が増えていくため、教勢に伸び悩む教会が無批判に取り入れて、しばしばカルト化してしまうのです。

 

また、これらの教えや運動を取り入れた教会は、教派を超えたエキュメニカルなイベントにも積極的に参加し、著名な神学者や伝道者と仲良くなって、自身の教会へと招き、世間に対する信用を得ようと熱心に働きかけてきます。

 

大きな教会の場合、自らの団体で発行した賛美歌や聖書翻訳、映像コンテンツなどを広めていき、それが世界中の諸団体で使われることによって、著作権使用料や世間に対する信用を得ていきます。

 

簡単に言えば、マルチ商法で広まっているアロマや洗剤などを「いいものだから」と使わせることで人々の目を欺き、病院や学校、幼稚園などで信者/支持者を獲得していくのと似ています。たとえ、実際に商品が良いものでも、それを分かって使い続けることは問題があるのです。

 

若者や信者がたくさん集まっている教会は、「新しい方法を取り入れた面白い団体」として好意的に取り上げられる傾向がありますが、そのやり方が本当に誠実かどうか注意が必要です。

 

これは、キリスト教会だけでなく、同じように「積極思考」「引き寄せ」「成功法則」などを取り入れて、これまで積み重ねられてきた教義・教理の捉え方を吟味せず、「宗教っぽくない」「みんなが受け入れやすい」「難しくない」話に終始して、信者を獲得しようとする全ての団体で、今一度問い直すべきことでしょう。

 

 

【参考資料】

courrier.jp

 

christianpress.jp

christianpress.jp

 

さて、他にも疑似科学や陰謀論、似非スピリチュアル、ミニカルトについて取り上げたかったのですが、思った以上に長くなってしまったので、『これってカルトですか?(2)〜カルトの入り口になるもの』の方で取り上げさせてもらおうと思います。

 

なお、ここに挙げている破壊的カルトの類型は、必ず一つの団体に一つだけが当てはまるものではなく、むしろ複数にわたっていることが多いです。破壊的カルトは非常に身近で、決して別世界のものではないことを意識していただけると幸いです。

 

bokushiblog.hatenablog.com

 

 

*1:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、35頁14〜17行参照。

*2:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、35頁17行〜36頁6行参照。

*3:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、70頁1〜9行参照。

*4:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、36頁7行〜12行参照。

*5:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、38頁13〜15行参照。

*6:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、70頁15〜71頁1行参照。

*7:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、38頁14〜17行参照。

*8:

悪質商法の種類 | 千葉県警察 参照。

*9:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、71頁2〜6行参照。

*10:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、71頁18行〜72頁4行参照。

*11:「マルチ商法」に引っかかる人の意外な心理、被害者が後を絶たない理由 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン 参照。

*12:"USB1本"を49万円で買った大学生の後悔 参照。

*13:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、72頁16〜18行参照。

*14:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、36頁18行〜37頁1行参照。

*15:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、96頁12〜17行参照。

*16:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、37頁14〜18行参照。

*17:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、38頁2〜4行参照。

*18:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、38頁4〜7行参照。

*19:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、34頁9〜12行参照。

*20:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、34頁12〜15行参照。

*21:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、35頁1〜5行参照。

*22:S・ハッサン著、中村周而・山本ゆかり訳『マインド・コントロールからの救出 愛する人を取り戻すために』教文館、2007年、35頁12〜13行参照。

*23:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、75頁7〜10行参照。

*24:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、75頁10〜14行参照。

*25:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、75頁10〜14行参照。

*26:日本脱カルト協会(JSCPR)編『カルトからの脱会と回復のための手引き <必ず光が見えてくる>本人・家族・相談者の対話を続けるために』遠見書房、2009年、75頁12〜76頁2行参照。

*27:JSCPR 集団健康度測定目録 37参照。

*28:JSCPR 集団健康度測定目録 41参照。

*29:「エホバの証人」元信者女性が自分の体験を漫画にした理由(いしいさや) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)参照。

*30:JSCPR 集団健康度測定目録 42参照。

*31:JSCPR 集団健康度測定目録 61参照。

*32:特別寄稿 吉岡創牧師 タラッパン「体験者の証言から」 | 異端カルト110番参照。

*33:特別寄稿 吉岡創牧師 タラッパン「体験者の証言から」 | 異端カルト110番参照。

*34:特別寄稿 吉岡創牧師 タラッパン「体験者の証言から」 | 異端カルト110番参照。

*35:教会がカルト化する運動と神学(1) - ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜教会がカルト化する運動と神学(2) - ぼく牧師 〜聖書研究・礼拝メッセージ、ときどき雑談〜に掲載。

キリスト教の礼拝を解剖してみた。

礼拝の諸要素 2019年1月12日

 

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 「キリスト教の礼拝に出てみたけれど、意味がよく分からなかった」「招詞とか交読文とか言われても、何をやっているのか分からない」……初めて教会へ行ってみて、そんな経験をした方もけっこういるんじゃないでしょうか?

 

 「頌栄と賛美歌は違うもの?」「礼拝へ来たのに聖餐式は受けられないの?」「主の祈りって普通のお祈りと何が違うの?」「献金はいくらすればいいの?」……初めて来た人や知り合いに聞かれて、困った信徒もいると思います。

 

 「しばらく教会に来ているけれど、ぶっちゃけそんなの分かんない!」……実は、信仰歴の長いクリスチャンだって、わりとそんなものなんです。そこで、今回は礼拝における一つ一つの要素について、簡単に説明しながら見ていきたいと思います。

 

 なお、ここで紹介しているのは、私が牧師をしている岐阜市のプロテスタント教会(日本基督教団 華陽教会)で、新しい礼拝式順として提案しているプログラムです。

 

 主に、日本基督教団から発行されている試用版の式文をもとに、説明やコメントを書いています。

 

 今年度から、年の初めに前奏から後奏まで一つ一つ説明しながら礼拝を行い、午後から研修会を持ち、みんなで礼拝の諸要素、意味を確認していこう……という取り組みを始めています。

 

 せっかくなので、そこで共有したことを、こちらの記事でも紹介させていただこうと思います。

 

礼拝の大まかな流れ

 まず、礼拝の大まかな流れを説明します。礼拝の中心にあるのは「御言葉(神の言葉)」と「聖餐」です。

 

 神の言葉である聖書朗読とメッセージに対し、感謝の応答である賛美や祈り、信仰告白がなされます。その全体を表したのが、「神の招き→神の言葉→感謝の応答→派遣」という4つの流れです。

 

 ただし、日本における礼拝の多くは、4つの流れが整っているとは言い難く、私がいる教会の場合も「神の言葉」よりも「感謝の応答」が先に来たり、ちょっとゴチャゴチャしています。

 

 世界的な標準に基づいた礼拝式の場合、【神の招き】にあたる部分で、「罪の告白」や「赦しの言葉」を宣言し、神に憐れみを求めて御言葉を受け取る準備をします。

 

 【神の言葉】にあたる聖書朗読とメッセージは、文字通り、聖書を通して神の言葉を聞くときです。

 

 【感謝の応答】では、神の恵みに応えてキリスト教の基本的な信仰を告白します。そして、他の人のためにも神の恵みを求めて祈ります。このような他者のための「とりなし」は、信徒一人一人に与えられた大切な使命です。

 

 聖餐式はキリストの十字架と復活を思い起こし、信仰者が信仰者であり続けるための式です。自分自身を神にささげて、愛と平和のために用いられるしるしとして、献金をささげます。

 

 最後に【派遣】で、神の祝福が宣言され、礼拝に集った一人一人が、それぞれ必要とされている場所へ出て行きます。礼拝には、このように4つの大きな流れがあることを踏まえた上で、前奏から一つ一つ、見ていきたいと思います。

 

神の招き

【前奏:ぜんそう】

 前奏は、礼拝の開始を告げる音楽です。奏楽者は、その日の教会暦や行事に合わせて曲を選び、会衆が礼拝へ参加しやすいように、その日に歌う讃美歌も、礼拝が始まる少し前から流しています。

 

 会衆は、その音楽を聞いて心を静め、礼拝に備えます。オルガンの他にピアノ、管楽器、弦楽器が用いられることもあります。

 

【招詞:しょうし】

 招詞(招きの言葉)は、礼拝に集まった人たちへ、神の招きを告げる聖句です。礼拝の最初は神の言葉をもって始めるため、司式にあたる人は、必ずしも聖書箇所まで告げる必要はありません。

 

 この言葉は、その日の教会暦やメッセージに即したもの、あるいは、聖書日課で指定されている聖書箇所から選ばれます。『讃美歌21』の93-1に招詞の例が載っているので、ここから牧師が選ぶことも多いです。

 

【讃美歌:さんびか】

 最初の讃美歌は、神の招きに対する応答の賛美です。礼拝委員会で季節毎にふさわしいものを選びます。

 

『讃美歌21』では、1〜21番がこの部分にちょうどいい歌として載せられています。メインで使用されている 讃美歌集以外から選ぶこともあります。

 

 多くの讃美歌で、最後につけられている「アーメン」という言葉は「本当にそうです」「本当にそうなりますように」という意味のヘブライ語です。

 

 日本語に訳される前は、もともとついていなかった讃美歌も多く、「アーメン」をつけると不自然な意味、不自然な曲になるものも出てきます。そのため、最近では全ての讃美歌に「アーメン」をつけて歌うとは限りません。

 

 讃美歌は立って歌われることが多いですが、体が不自由な方やしんどい方は、座ったままで大丈夫です。

 

【祈祷:きとう】

 開会の祈祷は、神の前に立った会衆がその言葉を受けとめるために、私のいる教会では、主に5つのことを祈っています。

 

① へりくだった心で神に向かい………罪の告白

② 憐れみを願い…………………………憐れみの賛歌(キリエ)

③ 神による罪の赦しを共に聞き………赦しの言葉

④ 神の栄光をたたえて…………………頌栄(グローリア)

⑤ 聖書から神の言葉を聞く準備をします……聖霊の導きを求める祈り

 

 また、憐れみの賛歌(キリエ)は『讃美歌21』の30〜35番、頌栄(グローリア)は36〜38番を用いることもあります。

 

神の言葉

【聖書朗読:せいしょろうどく】

 聖書朗読は、神の語りかけを聞くときです。主に聖書日課で指定されている【旧約】【使徒書】【福音書】の中から選ばれます。礼拝の中心は神の言葉なので、できるだけ、この3つ全てを読むことが望ましいです。

 

 どれかを省略しなければならないときは、クリスマス前の日曜日には【旧約】が、クリスマスからペンテコステ前までは【福音書】が、ペンテコステからアドヴェント前までは【使徒書】か、それに準ずる新約の文書が、必ず読まれるようにしています。

 

 聖書についている見出しは、箇所を見つかりやすくするもので、礼拝の中では読み上げません。

 

【交読文:こうどくぶん】

 交読文は、聖書の言葉を聞いた会衆が祈りへ導かれるように、詩編の言葉を司式者と交互に唱えていくものです。聖書朗読の後か、旧約と新約の間に読まれます。

 

 詩編の箇所も、聖書日課で指定されているものを選んでいます。司式者は、会衆が読むところを間違えないように、テンポよく読むようにします。

 

【讃美歌:さんびか】

 メッセージ前の讃美歌は、神の言葉を受けとめるため、教会暦や聖書箇所に即した歌が選ばれます。『讃美歌21』の50〜60番が、この部分でよく歌われます。

 

【メッセージ(説教)】

 メッセージは、朗読された聖書の意味を解き明かし、神の恵みと忠告を受け取る時間です。「説教」「宣教」とも呼ばれます。牧師は、聖書箇所の文脈や出てくる単語の意味を調べて、現代の会衆に語られているメッセージを伝えます。

 

 教会の信徒が信仰に至ったきっかけや、聖書の言葉に助けられた体験を話す【信仰の証(奨励)】をする場合もあります。

 

 礼拝の中で神の恵みを語るのは、説教者だけではありません。メッセージを聞いている信徒一人一人も、祈り、賛美、信仰告白、聖餐を受ける姿勢によって、集まった人たちに「神を証しする者」です。

 

 信仰者は、自分自身も伝道者・宣教者として立てられていることを覚え、礼拝中に助けが必要な人たちへ、できる範囲のサポートをするといいでしょう。

 

【讃美歌:さんびか】

 メッセージ後の讃美歌は、神の言葉を締めくくるのにふさわしい歌を歌います。『讃美歌21』で「教会」「キリスト者の生活」「終末」がテーマになっている390〜580番も、この部分でよく歌われます。

 

感謝の応答

【使徒信条:しとしんじょう】

 使徒信条は、神の言葉に共鳴して、教会の信仰を告白するキリスト教会共通の信条です。信仰者が何を信じているのか表す便利な要約となっており、信徒一人一人が教会に集まった人々へ、神とキリストについて伝える時間でもあります。

 

 キリスト教に入信する洗礼式がある場合は、受洗者が自分の信仰を告白し、集まった人たちへ伝道する初めての機会となります。その性質上、なるべく自分たちからかけ離れてない、初めて来た人にも分かる言葉で、告白することが望ましいです。

 

【とりなし】

 とりなしの祈りは、神の言葉を受けた会衆が、世界のため、教会のため、信徒のため、出席できなかった人のため、身近な人のため、子どもたちのため、苦しんでいる人のために、神様のとりなしを求めて祈るものです。

 

 自分自身も、キリストのとりなしによって罪を赦されたことを覚え、周りのために祈ることは、信仰者の大切な使命です。

 

【主の祈り】

 主の祈りは、神の支配(神の国)の実現を願って祈り、聖餐式の陪餐に備えるものです。イエス様が「祈るときには、このように祈りなさい」と弟子たちに教えた祈りであり、現代でも、教会に集まった人たちへ、最初に教えられる最も基本的な祈りです。

 

 「祈り方の基本」を伝えるものでもあるため、なるべく、みんなに分かる言葉で唱えることが望ましいです。

 

【聖餐式:せいさんしき】

 聖餐式は、感謝の応答の頂点で、キリストが私たちを救うため十字架にかかり、復活してくださった出来事を思い起こして、パンとぶどう液を互いに分け合う、信仰者の大切な務めです。

 

 同時に、イエス様が今も私たちのそばにいて、恵みを分け与えてくださることを思い出し、一人一人が失いかけた信仰を新たにする食事です。この食事も「目に見えるしるし」の一つとして、人々をご自分のもとへ招く神様を証しするものです。

 

 本来は毎週行うことが勧められており、少なくとも月一回、クリスマスやペンテコステ、イースターなどの重要な行事がある際には、できる限り持つようにしています。

 

 聖餐式は、信仰を告白した人が、キリスト者であり続けるための式ですが、信仰を告白していない人たちも、パンとぶどう液の代わりに、信徒一人一人にとりなされて、神の祝福を受け取ります。

 

 華陽教会の式文では、そのことを意識して、パンを受け取った人、杯を手にした人が、それらを受け取っていない人のために、神様の祝福を祈ります。

 

 「あなたの手が、愛と平和で満たされますように」「あなたの手が、愛と祝福で満たされますように」という部分は、ぜひ信徒一人一人が、近くにいる方と向き合って、牧師と一緒に唱えてほしい言葉です。

 

【献金:けんきん】

 献金は、感謝の応答として献げ物をする時間です。自分の体(生き方)そのものをささげるしるしでもあるため「奉献」とも呼ばれます。

 

 初代教会では、信徒一人一人がパンや飲み物を持ち寄って祭壇にささげ、集まった食事を生活に困っている人たちへ分け与えていました。そのとき集められた一部を聖餐式に用いたため、献金と聖餐は、通常セットで行われます。

 

 現代では、集まった献金は教会の維持や運営のため、牧師の謝儀(給与)のため、地区・教区・教団の働きのため、福祉や慈善活動のため使われています。

 

 あくまで「恵みに対する感謝」としてささげるものなので、金額に定めはありません。もし、どうしても迷ったら「自分の一食分」+「他の人も食事ができる分」くらいで考えるといいでしょう。

 

 教会員の場合は、毎週の礼拝でささげる【自由献金】の他に、月毎に自分で定めた分をささげる【月定献金】があります。

 

 月定献金は、教会が一年を通して活動するための基本になってくる献金です。こちらも金額に決まりはなく、日常から喜びと楽しさが失われずに信仰生活を送れるだけの献げ物がいいでしょう。

 

派遣

【讃美歌:さんびか】

 最後の讃美歌は、会衆が神の栄光をたたえて、礼拝から送り出されていくものです。神の栄光をたたえる頌栄の讃美歌が選ばれる他、祝福との関連で派遣をテーマにしたものが選ばれます。

 

 『讃美歌21』では、24〜29番、88〜92番がこの部分に適した讃美歌です。季節毎に礼拝委員会で話し合って決められます。

 

【祝福:しゅくふく】

 派遣の言葉と祝福は、会衆一人一人が神を証しする生き方ができるように、神の祝福を宣言して日常へ送り出すものです。主に『讃美歌21』の93-6、93-7から選んでいます。

 

 祝福は立って受けることが多いですが、体の不自由な方やしんどい方は座ったままで大丈夫です。また、牧師が手を下げた後は、立っている方も座っていただいて大丈夫です。

 

【後奏:こうそう】

 後奏は、神による派遣と祝福を静かに受けとめる時間です。奏楽者は、日常へ送り出されていく会衆のために、週毎にふさわしい曲を選んで弾いています。

 

【報告:ほうこく】

 報告は、礼拝後の交わりと奉仕に備えて、今後の予定や教会員の消息、新来者の紹介などをするところです。

 

 初めて来た人で紹介されるのが苦手な方は、受付の『新来者カード』で辞退することができます。受付と 司式にあたる人は、それぞれの意志が尊重されるように配慮します。

 

【参考資料】

日本基督教団信仰職制委員会 編『日本基督教団 式文(試用版)主日礼拝式・結婚式・葬儀諸式』日本キリスト教団出版局、2010年。

日本基督教団出版局聖書日課編集委員会 編『新しい教会暦と聖書日課ー4年サイクル主日聖書日課を用いるために』日本基督教団出版局、1999年。

日本基督教団讃美歌委員会 編『讃美歌21』日本基督教団出版局、2001年。

ウィリアム・ウィリモン著、越川弘英・岩見育子訳『礼拝論入門 説教と司式への実践的助言』新教出版社、1998年。

由木康『礼拝学概論 新版』新教出版社、2011年。

100均のスーパーボールキットが楽しい

ゲーム・分級・教案 2019年7月30日

 

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久しぶりの雑談ですね。

 

普段は破壊的カルトやLGBTsなどドッシリとした話題に触れていますが、今日はもうちょっと楽しい話……教会学校の分級で使えそうなスーパーボールの製作キットについて紹介してみようと思います。

 

 

【教会学校って?】

教会学校 "CS"(Children School)というのは、キリスト教会の中にある「こども会」のようなもの……日曜学校(Sunday School)、こどもの教会 "CC"(Children Church)、教会こども会など色々な呼び方がされています。

 

主日礼拝(主に大人が参加する礼拝)とは分けて、子ども向けの分かりやすい礼拝をしたり、みんなで楽しめるゲームや工作を行ったり、クリスマスやイースターといった行事ごとにイベントを開催したり、色んな活動をしています。

 

うちの教会は、付属の幼稚園出身の小学生が2〜6名ほど来てくれるので、礼拝の後、みんなが楽しめるゲームや工作ができないかな……と、よく100円ショップを物色しているわけです。

 

【自分でつくるスーパーボール】

そんな中、見つけてしまった面白そうなキットがこれ、『自分でつくるスーパーボール』というやつです。

 

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この夏、子ども向けのキャンプで「何かを作る」というプログラムをやるなら、けっこうちょうどいいんじゃないか?……と思い、試しに自分でやってみることにしました。

 

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中を開けるとこんな感じ。スーパーボールの素と型になるプラスチックケースが入っています。必要なのは、このキットと水の入った大きなボールだけ。うちは鍋を使いました(どちらの場合も使い終わったらすぐ、よく洗いましょう)。

 

【スーパーボールの作り方】

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まずは、スーパーボールの型をカチッとはめます。

 

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次に、スーパーボールの素から好きな色を選んで、こんなふうに袋の端っこだけを切って開きます。

 

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スーパーボールの素を型の中へ少しずつ入れます。型の穴からある程度、粉がこぼれますが、あまり気にしなくて大丈夫です。あとで掃除しましょう。

 

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半分くらい入れたら、一度トントンっとして粉を型になじませ、残りの粉を入れていきます。写真のように、2種類の色を半分ずつ使ったり、マーブルのスーパーボールを作ることもできます。

 

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だいたい、型の八分目くらいまで素を入れます。上まできっちり入れると、スーパーボールがボコッと上だけ膨らんでしまいます。同じ色だけ使う場合は、袋一つ分でちょうどいい量です。

 

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それでは、水の入ったボールか鍋に、型ごとゆっくり入れていきます。ボチャンッとつけると、中の粉が溢れてしまうので注意です。

 

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30秒ほど、浮いてこないように指で押さえておきます。

 

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しばらくすると、手を離して大丈夫です。このまま3分間だけじっと待ちます。

 

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3分経ったら水から出して、そのまま1分間置いておきます。

 

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1分経ったら、型のつまみをグッとつまんで、中からスーパーボールを取り出します。

 

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触るとネバネバしています。ノリみたい……

 

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若干、上の方が盛り上がっているので、柔らかいうちに指で押さえて整えてやります。

 

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ギュッと……これが楽しい。子どもの頃作っていたネリケシを思い出しますね。

 

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表面のネバネバがなくなったら完成です。跳ねるところを動画に撮ったんですが、ブログへの貼り付け方が分からないので残念ながら載せられず……既製品のスーパーボールほどは跳ねませんが、けっこうピョンピョンします。

 

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なお、このスーパーボールは完全に乾くと跳ねなくなるそう。遊んだ後はラップに包んで保存するといいそうです。

 

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ただ、こんな感じに包まなくても、そのままで5日間放置してみたところ、そんなに跳ねなくなった印象はありません。子どもたちが遊び飽きるまでは十分楽しめるんじゃないかと思います。

 

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一応、こちらが裏面の説明……近所のCanDoを見に行ったら置いてありました。水だけで簡単に作れるので、家庭でもおすすめです。ただし、あまり小さい子は口に入れてしまう可能性があるので、そこはよく注意してください。

 

次回は、乾いた後もよく跳ねる、お湯を使ったスーパーボールキットを紹介しようと思います。それではまた〜

教会がカルト化する運動と神学(2)

2019年5月10日

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*参照元の更新などに伴い、2022年7月5日に記事を一部書き直しました。

 

前回、『教会がカルト化する運動と神学(1)』という記事をUPしましたが、今回は、そのとき載せ切れなかった分を投稿しようと思います。

  

bokushiblog.hatenablog.com

 

なお、ここで取り上げる運動・神学も、単に「正統的教義・教理から逸脱したもの」ではなく「採用した教会が破壊的傾向を増し、カルト化してしまう危険がある」という点から紹介しています。

 

それぞれの詳しい内容はぜひ、各項目の【参照・引用元リンク】からご覧ください。(こちらで引用した記事も各項目の参考になると判断したもので、サイト全体の主張を支持するものではありません)

 

【目次】

 

【悪質な弟子訓練・小牧者訓練】

弟子訓練は、1980年代から流行し、様々な問題を起こしてきたキリスト教会の運動です。本来は信徒一人一人が伝道を担う「キリストの弟子」を養成する目的で作られたものですが、主導する人間によっては簡単にカルト化してしまう危険があり、「キリストの弟子」というより、どんな命令にも服従する「牧師の弟子」を養成してしまったところがいくつもあります。

 

この運動では、信徒に「ディサイプラー」「バイブルトークリーダー」「筍長」「補助筍長」など、いくつものステータスを設けて支配、管理する体制が作られ、牧師に対する絶対的な服従が求められます。

 

弟子たちは、家族や友人と連絡した内容など、プライバシーを含むあらゆることを上司に報告し、指示を仰がなければなりません。信徒獲得のための伝道や、教会の運営資金を集めるために長時間奉仕へ駆り出され、上司の命令を聞けなかった弟子には、繰り返し体罰や罵倒が行われます。

 

また、この過程で多くの人は、肉体的・精神的疲労と睡眠不足のため、自分の頭で考える機能が衰弱し、牧師のマインド・コントロールから逃れられなくなります。ブラック企業に勤めて命を絶っていく人たちのように、自分から組織を抜け出す力まで奪われてしまうのです。

 

前回紹介した「直接的な啓示を強調する運動」と同じく、弟子訓練を取り入れて、牧師を絶対視させるようになった教会は、短期間で多くの信徒を獲得しますが、同時に牧師の独裁化を強め、信徒の自由と尊厳、個人資産を奪うようになります。

 

日本においても、この運動によってパワハラ、セクハラ、性的虐待を受けた信徒の被害が報告されており、無批判に採用するべきではありません。弟子訓練を採用する場合は、主導者の進め方によっては簡単にカルト化してしまうことを念頭に置いて、教会全体でリスクの理解と対策をしていく必要があります。

 

【参考資料】

川島堅ニの宗教学研究室(宗教・カルト情報)

 

core.ac.uk

弟子訓練の "カルト化” をいかに防ぐか?

 

こちらの記事では、弟子訓練と混同されやすいメンタリングとの違いを分かりやすく説明してくれています。教会における健全な人材育成を考える際、参考になる話です。(↓)

 

【聖霊体験型の合宿セミナー】

聖霊体験型の合宿セミナーは、超教派で行われる教会員対象の研修会で、だいたい2泊3日で行われます。下記のようなプログラムを行っているところは、マインド・コントロールと霊感商法の被害で有名な団体の合宿によく似ており、警戒する必要があります。

 

参加者の中には、所属教会から強引に出席を促される人もおり、プログラム内容を一切知らされないまま会場に到着すると「時計を見ること」が禁じられ、3日間時間の観念を奪われます。また、一日目の集会後、次の日のプログラムまで言葉を発することが禁じられ、参加者同士で不安や違和感を共有することもできなくなります。

 

その後、聖書に関して一日2〜3回の講義が行われていきますが、食事の時に「ジョークタイム」があったり、起床時に「どっきり」のごとくバンドが起こしにくるなど、硬軟合わせ持つ「飴と鞭」のプログラムが進められていき、参加者は徐々に冷静な判断ができなくなります。

 

やがて、「自分で判断することをしなくなる」よう誘導され、最終日には、多くの人がトランス状態に陥った中で牧師から頭に手を置かれ、泣き叫びながら倒れていきます。これによって、「聖霊体験」をした「牧師に従順な信徒」が各教会へ送り返されていくことになるのです。

 

もしも、所属教会の信徒をこういった合宿やセミナーへ送り出そうとしている場合は、もう一度この運動について検証する機会を持った方がいいでしょう。悪質な弟子訓練と同じく、従順な信徒の養成によって牧師の独裁化を進めてしまうからです。

 

【参考資料】

blog.goo.ne.jp

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp 

 

【悪霊との戦いを強調する運動】

悪霊との戦いを強調する運動は、1980年代後半に韓国から始まった運動で、既成教会にしばしば分裂・混乱を引き起こしており、国内外のキリスト教会から警戒が呼びかけられています。日本でも、牧師・信徒がこの集会に参加し始めたことをきっかけに、いくつかの教会に深刻な被害がもたらされました。

 

この運動の集会では、キリスト教の教えを学び直すための様々な資料が用いられます。「聖書だけを読んでいると自分勝手な読み方をする」という理由から、聖書そのものではなく、独自の小冊子などを繰り返し学ぶことが奨励され、「サタンによる呪い」という概念が強調されます。

 

ここでは、人間の罪の責任が悪魔に転嫁され、キリストは十字架にかかって罪に勝利したのではなく、悪魔がキリストを十字架に追いやったという主張がなされます。これは、霊感商法の被害で有名な団体が、教理の基盤にしている内容と酷似した教えです。

 

そして、目に見えない次元である「霊の戦い」が強調され、サタンによる呪いを恐れた牧師、信徒を取り込んでいき、職場、家庭、地域へと伝道の範囲を広げていくのです。問題なのは、サタンに勝つための伝道が第一優先とされ、普段の礼拝、行事、仕事などがおろそかにされていくことです。

 

また、このような運動では「本当の福音(聖書が教える救い)を持っているのは自分たちだけである」という意識が刷り込まれ、既に信仰を持っているキリスト教徒も伝道の対象とされてしまいます。そのため、運動が入り込んできた教会では、信徒や牧師が引き抜かれ、互いに分裂が起き、礼拝する場所を失ったり、奪われたりする人たちが続出します。

 

しかし、この運動によるマインド・コントロールは、他の破壊的カルトに比べると、そこまで強力ではありません。早い段階で対処することができれば、もたらされる被害も小さくなります。もしも、自分の教会に、このような運動が入り込んできたときは、落ち着いて問題を共有し、外部へ助けを求めましょう。

 

【参考資料】

タラッパン関連資料のページ(アーカイブ)

 

cult110.info

 

【トラウマを暴く癒し】

「トラウマを暴く癒し」は、前回紹介した「直接的な啓示を強調する運動」から、キリスト教会に影響を与えたカウンセリング方法で、「内なる癒し」に焦点を当てた活動です。簡単に言うと、相談者の過去、特に幼少期に戻ってその人のトラウマを探り出し、原因となった出来事や人間関係を祈りによって「ゆるす」「断ち切る」「手放す」ことで、苦しみや生きづらさから解放するというものです。

 

この「幼少期のトラウマ」を暴くために、「あなたが覚えていないだけで、小さい頃に性的虐待や辛い経験をしたはずだ」という質問が繰り返し行われ、「そういえば、添い寝していた父親に後ろから抱きしめられたような……」といった「記憶」が引き出されます。

 

場合によっては、「チャネリングやサイコメトリーのような力を持った牧師」が相談者の「記憶」を覗き、「やっぱりあなたは父親から性暴力を受けていた」と言ってきます。ただし、無理やり引き出された「記憶」が正しいと証明する方法はありません。

 

このように、多くはその人の肉親が悪者にされ、彼らを祈りによってゆるすこと、関係を断ち切ることで苦しみから解放されると言われます。しかし、それでも癒されないと、「祈りが足りない」「ちゃんとゆるせていない」「過去を手放せていない」と責められ、治療法ではなく相談者のせいにされてしまいます。

 

実は、こういったカウンセリング方法(抑圧された記憶/記憶回復運動)は、かつて精神医学の世界で流行ったもので、欧米で精神科にかかった娘・息子たちから多くの親が訴えられました。しかしその後、幼少期のトラウマを探るカウンセリングは、虚構の記憶を植えつけるばかりで効果がないと言われるようになり、逆にいい加減なカウンセリングを行った精神科医が訴えられるようになりました。

 

つまり、この手法を採用する「癒し」も、虚構の記憶を植え付ける場合が多く、実際には問題解決されません。一時的に「よくなった」「気持ちが晴れやかになった」と感じても、代わりに肉親への不信感が増してしまいます。

 

また、内なる癒しに焦点を当てている教会の中には、「薬や医者に頼るのは信じきれていないからだ」と信徒に医療行為を拒否させ、深刻な被害をもたらしたところもあります。家族関係の断絶、牧師への絶対服従を促すこの運動も、教会のカルト化を促進させてしまうでしょう。

 

【参考資料】

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

fuminaru.blogspot.com

 

【ニューソート】

最後に、『教会がカルト化する運動と神学』の多くに取り込まれている「ニューソート」について取り上げたいと思います。ニューソートは、19世紀にアメリカで始まった霊性運動の一つで、現世利益の追求を戒めるキリスト教カルヴァン主義への反発から生まれました。

 

気持ちを明るく保つことで運命が開けるという「積極思考(ポジティブ・シンキング)」や、成功者の思想や行動を模倣することで同じ効果が得られるという「成功法則」「成功哲学」もその一環です。

 

病気や貧困は心のあり方に起因しており、その人が心を正せば病気は癒され、成功がもたらされるという「引き寄せの法則」もニューソートがもたらした考えです。このような「思いは現実になる」という考え方、「前向きに考えれば何でもうまくいく」という捉え方は、ニューエイジや現在の自己啓発のルーツにもなっています。

 

ニューソートの主張は非常にシンプルで分かりやすいため、日本でも多くの人がスピリチュアルやニセ科学を通して影響を受けています。このようにして入ってきた考えは、ネガティブな思考を極端に避け、自己責任を強調し、何でも心の問題にしてしまう虐待的傾向を持っています。

 

また、自己変革を謳う「自己啓発セミナー」やマルチ商法などの商業カルトもニューソートに端を発しますが、金銭トラブルや暴力事件、受講者を死亡させるケースが報告されています。

 

前回取り上げた「信仰によって語った言葉は現実化する」という富や健康の獲得を謳う運動も、ニューソートの影響が強く見られる運動です。この運動を強く支持して教えている団体には、注意した方がいいでしょう。

 

【参考資料】

 

ja.wikipedia.org

 

www.n-seiryo.ac.jp

 

以上が、前回載せきらなかった問題ある運動をまとめたものです。いずれも最初は、教会を盛り上げる画期的な方法に見えますが、牧師の独裁化や人間関係の断絶、虐待、性暴力、金銭トラブルなどを引き起こしてきた運動です。ここに出てきたキーワードを使えば、ネットや新聞、書籍を通してそれらの事件を調べることもできます。

 

教会成長のために、伝道のために、超教派のために、無批判にこれらを支持するのではなく、被害者の証言や専門家の分析から新しい伝道を考える方が、誠実で御心に適った方法だと思います。ぜひ、色々な方に共有していただければ幸いです。

カルトに気づくきっかけ【事例1】

2019年4月5日

 

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【目次】

 

「破壊的カルト」または「カルト化している団体」に気づくことは、なかなか簡単ではありません。ある会社がブラック企業であることに、入社してから初めて気づけるように、破壊的な団体も最初は悪くないところに見えるからです。

 

特に、先日投稿した『教会がカルト化する運動と神学』という記事でもあげたように、最近問題になっている団体は、一見普通のことを教えているように見せながら、虐待的・支配的・排除的な教えを忍ばせて、巧妙に信者をコントロールしています。

 

bokushiblog.hatenablog.com

健全な教会で信仰生活を送ってきた信徒でも、これらの団体と出会ったとき、その問題に気づくことは難しいと言わざるを得ません。

 

しかし、中には早い段階で「自分の関わっている団体が破壊的な集団だ」と気づくことのできる人たちがいます。

 

なぜ、カルトやカルト化した団体に気づくことができたのか? どうしたら、他の人も早期にトラブルを回避できるのか? これらのケースは全てに通用するものではありませんが、広く共有することで似たような状況にいる人の助けになると思います。

 

そこで今回、身近な人が破壊的な団体に入っていると気がついたAさん(仮名)のケースを紹介させていただくことにしました。

 

以下、Twitterに設置している質問箱への投稿をきっかけに始まった、私とAさんとのやりとりを許可を得た上で掲載します。なお、個人の特定や訴訟トラブルを防ぐため、一部伏せ字にしてあります。

 

【Aさんによる質問箱への投稿】

柳本牧師さま、こんにちは。興味深くブログを拝見させていただいております。

 

さっそくですが、キリスト教徒との恋愛について悩んでいます。私は特に強い信仰もなく、仏教と神道を両方自分の文化だと思っていますが、現在キリスト教が国教の国に在住しています。

 

好きになった人が現在は敬虔なクリスチャンです。(プロテスタントでもアドベンティストでもカトリックでもないそうです)

 

彼は友人として、一緒にご飯を食べに行ったり、映画を見たり、お泊まりをしたり(もちろん体の関係はありません)ただの友人だと思っていたのですが、最近自分の中に彼を愛しいと思う気持ちが湧き上がってきました。

 

この前、国際結婚ができるかどうか聞かれた時に、流れで「愛は人種や宗教を超えられる?」と聞いたら「超えられる。それが愛だ」と言われました。

 

それを聞いて安心したのですが、その後に「異教徒と結婚したい場合はどうなるの?」と聞いたら「それはありえないよ。僕はクリスチャンという前提じゃないと恋に落ちない」と言われました。

 

それを聞いて「あぁ……どんなに好きでも、一緒にいても、この人は私のことを選んではくれないんだな」と思ったらたいへん悲しくなりました。

 

彼はときどき聖書の話などをしてくれるのですが、LGBTに対する偏見や異教徒を認めない姿勢など(結婚などについても)正直傲慢だなと思うこともあります。

 

でも、それでも好きです。教会に誘われたりもしますし、「クリスチャンになりなよ」と言われたりもします。

 

私は盲目的な信者にはなりたくないので、「まずはどの宗教も知ることから初めて、自分に合ったものを選ぼう」とは思うのですが、改宗する覚悟もないのに「彼のことが好きだから」という理由で教会に行ったり、無理やり信仰しようとするのは間違っている気がします。

 

それと、キリスト教徒はキリスト教徒同士での結婚が推奨されると聞きましたが、なぜ異教徒は一緒になってはいけないのでしょうか? 結局は信仰を持つ者とそうでない者はお互いに上手くいかないのでしょうか? この恋は諦めて距離を置くべきでしょうか?

 

乱文かつ長文でごめんなさい。お返事いただけると幸いです。

 

【質問に対する私からの返事】

こちらこそ、いつもブログをご覧になってくださり、ありがとうございます。

 

なるほど……好きな人だけに悩みますよね。その恋を諦めて距離を置くべきかは、やっぱりご自身で判断するしかないと思います。

 

ただ、「盲目的な信者にはなりたくない」「まずはどの宗教も知ることから初めて、自分に合ったものを選びたい」「無理矢理信仰しようとするのは間違っている気がする」というのは、僕も同感です。自然で誠実な考え方だと思います。

 

だからこそ、相手がその思いを大事にしてくれるかどうかが、その人と健全な関係を築けるかどうかの指標になると思います。

 

もし、「とにかく同じ宗教を信仰しない限りは付き合えない」と言うのなら、信仰に入る誠実な過程を蔑ろにする付き合い方なので、おすすめできません。

 

信仰を持つ者とそうでない者が上手くいかないのではなく、相手の価値観と人格を蔑ろにする関係が上手くいかないのだと思います。

 

お連れ合いの信仰に導かれて、数十年後に信仰に入った方もおられます。カトリックとプロテスタント、キリスト教と仏教をそれぞれ信仰するパートナー、カップルもいます。

 

聖書の中に出てくるルツという女性も、もともとは異教徒でありながら、イスラエルから来た男性と結婚した人でした。彼女は姑との関係を通して神様を信じるようになり、イエス・キリストの系図に記される人となりました。

 

僕は、「異教徒との結婚」「信者でない人とパートナーになる」ことがありえないとは思いません。

 

あと、気になるのは、相手の方が「プロテスタント、カトリック、アドベンティストではないクリスチャンだ」と言っているものの、どこの教会かを明かしていない点です。

 

もしも、正教会や聖公会(英国国教会)でもないのであれば、名前を明かさないキリスト教系グループの正体が気になってしまいます。 これらを除いた「キリスト教会」というのは、ほとんど聞くことがないからです。

 

一度、どこの教派・グループの教会なのかを聞いてみて、はっきりと正体を答えてくれないのであれば、注意した方がいいと思います。

 

破壊的な傾向の強い団体は、正体を隠して信頼関係を築き、離れ難くなってから入信を勧めることが多いからです。

 

明かされたグループが聞いたことのないもので不安であれば、捨て垢でもDMを送ってくだされば調べてお答えできると思います。

 

信仰に対するあなたの考え方、相手を思う気持ち、理解しようとする意志はたいへん誠実です。その誠実さを踏みにじったり蔑ろにする「暴力」を犯させないように、相手とどのように距離を持つか、考えてもらえたらいいなと思います。

 

お二人の行動が誠実に導かれますように、お祈りしています。

 

【TwitterのDMによるやりとり①】

以下は、この後のTwitterのDMによるAさんとのやりとりです。Aさん(緑字)、私(青字)で掲載しています。

 

[Aさん]

柳本牧師さま、こんばんわ。

 

日本は早朝の時間にメッセージを送ることを何卒ご了承ください。私は先日、「クリスチャンとの恋に悩んでいる」と質問したAと申します。

 

質問にお答えいただきありがとうございました。回答を読んでいてなんだか泣けてしまいました。そして彼の通っている教会について、現在わかることをお伝えしたく捨てアカでのDMを送らせていただきます。

 

彼が通っているのは、********(団体のURL)という教会です。

 

以前彼に「首都のどこに教会があるの?」と聞き教えてもらった地域で検索したところ、googleの口コミを彼が投稿していたため比較的容易に見つかりました。

 

調べてみたところ、世界各地に教会があり一番偉い牧師様は○○○におられるようです。カルトではなさそうですが、以前彼の家で牧師様の講演のビデオを見せてもらった時に牧師様をはじめみんな叫んでいて、怖かったのを覚えています。

 

(私の中で祈りや説教というものは穏やかな環境で行うと思っていたため)恥ずかしながら、私はあまりキリスト教について詳しくないので、柳本牧師さまのお力をお貸しいただければ幸いです。乱文かつ長文をお許しください。

 

(ps:現在彼とはいつも通りに連絡を続けています。普段は宗教とは違う話をお互いに楽しんでいます。また、以前「私はどの宗教も共通の目的を持っていると思う」と言ったら「うん。ただ神様が違うだけだね。」とも言っていたので、ますます混乱してしまいます。)

 

[柳本]

Aさん、メールありがとうございます。

 

質問箱への質問も、このDMを送ることも、たいへん勇気のいることだったと思います。一歩踏み出して行動されたこと、本当に尊敬しています。

 

さっそく、********について僕も調べてみました。添付してくださったホームページや他に挙がっている記事を見ると、確かに世界中で急成長を続ける勢いのあるキリスト教会のようです。 一見、伝道熱心な福音派・ペンテコステ派と呼ばれる普通の教会のように感じます。

 

しかし、△△年以降、この団体が何度か名称を変更していること、複数の不祥事、金銭トラブル、女性トラブルを抱えているところを見ると、破壊的カルトの要素をいくつか有している団体だと考えられます。

 

たとえば、○○年に教会から外国銀行に××××万ドルを送金したマネーロンダリング疑惑が起き、裁判になっています。この裁判は棄却されていますが、◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎の裁判所はお金次第なところがあると言われており、疑惑が解消されたとは言い難いです。

 

××年には、代表の○○○○○○○が牧師でもある妻から離婚訴訟を起こされています。不倫や女性トラブルが原因のようです。テレビ局との揉め事も記事になっていました。

 

また、********は、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカでカルト対策を行なっている専門家が警鐘を鳴らす「繁栄の福音」「ワード・オブ・フェイス」といった神学を推奨する団体でもあるようです。

 

繁栄の福音とは、「献金すればするほど富と健康が与えられる」といった考え方で、教会や牧師個人に莫大な資産をもたらします。一方で、たくさん献金できない信者は蔑まれ、精神的にも経済的にも深刻な被害を多くの人にもたらしてきました。

 

ワード・オブ・フェイスは、乱暴に言うと「自分が強く願って、強く信じれば、望み通りの結果が得られる」という考え方で、ニューエイジの思想から強く影響を受けています。

 

望み通りの結果が得られない信者は、「信仰が足りない」「祈りが足りない」と責められ、薬や医療による治療を拒否して祈りだけで病気を治すよう強制されることもあります。

 

私は英語を読むことが非常に苦手なので、Google Chromeの翻訳機能を使って********の被害者や脱会者の記事を読んでみましたが、もし、Aさんの方で英語の記事をお読みになるなら、ちょっと検索すればかなりの記事が挙がってきます。(URL①                            や URL②                            など)

 

********側からの発信と、被害者や脱会者側からの発信を両方見た上で判断していただくことになりますが、今の時点では、この教会へ行くことをおすすめはできません。

 

トップダウンで個人の人権や意思を尊重しないやり方が散見される団体だからです。 心苦しい返答になってしまいますが、彼の背景にある団体は、僕の目から見て健全であるとは言い難く、彼と付き合うためにこの教会へ所属することは、Aさんを健全な生活から遠ざけることになるでしょう。

 

また、Aさんを********のメンバーにすることで、彼自身もこの教会の支配下から逃れられなくなり、その影響をより強く受けることになるでしょう。

 

今、僕からお答えできるのはここまでです。よかったら、一度********についてご自分で検索し、色んな人の体験を読んでみてください。Aさんと似たような体験をした方もいるかもしれません。

 

【TwitterのDMによるやりとり②】

[Aさん]

柳本牧師さま、こんばんわ。早速のご回答ありがとうございました。信仰に馴染みのない私でもわかりやすい説明で大変助かりました。

 

牧師様に送っていただいた********に関するURLや検索した記事をいくつか読んでみました。

 

書かれていることすべてを理解できたわけではありませんが、脱会した元信者と、現在も信者であると思われる人が書く批判「お金」を誠実さの物差しにしようとする思考同じ教会に属するもの同士の結婚しか認めないこと、牧師のスキャンダル等々たくさんの事がわかりました。

 

私も見れているのはほんの1角であることは重々承知しておりますが正直な事を申し上げますと、とても残念な気持ちでいっぱいです。この気持ちをどこに落ち着かせればいいのかもまだわかりません。

 

記事を読んでいる間もいつも通りに彼からメッセージが届きます。

 

純粋に好きでいたい気持ちと、破壊的な思考に対する恐怖、そして盲目的に信仰してしまっている彼もある意味被害者の1人なのかもしれない、仲良くしてくれるのは純粋に彼が信者を増やすための活動の一環なのかもしれないなどという考えが頭の中をぐるぐると回っております。

 

こんなことが起きても好きという気持ちはおそらくまだ残っており、「距離を取るとしたら早いうちに取った方が自分の傷も浅いだろうしどのように距離を取るのか」や「友人として気持ちは隠してこの事には触れないでおこう」と思ったりもして、まだ決断を下すには時間がかかりそうです。

 

ニーバの祈りのように変えられるものとそうじゃないものを見分ける力があればいいのにと強く思います。 彼の信じるものが変わらない限り残念ですが、彼と私は結ばれることはありません。

 

どんなに私が好きだとしても、私は彼と同じ信仰(信仰と呼んで良いものなのかはわかりませんが)を持つ事ができません。

 

なぜなら、私の中で信仰は富の有無に関わらず神の名の元に平等に扱われるべきかつ、互いに助け合うことで心の平和をもたらすものだと思うからです。そして私が帰国すればきっとお互いに忘れていくのだと思います。

 

しかし、傲慢ではありますが本音を言えば彼がいつか自身の目をきちんと開いて「ついていくべきなのは、誰なのか。信仰とはなにか」という事を自分の力で考える事ができたり、教会への事実を見つけてほしいと思います。

 

人を変えることはできないし、それをしようとするのは傲慢極まりないことだとは思いますが、彼も私も健全な信仰を見つけられる日が来ることを願ってやみません

 

牧師さまの助けがなければそのまま突っ走って、私自身の健全な生活が脅かされていたかもしれません。そうなると、私だけでなく日本で応援してくれている家族や友人を悲しませる事になるので立ち止まることができて本当に感謝しています。

 

長々と乱文になってしまいましたが、ご多忙な中最後までお読みいただきまことにありがとうございました。先述した通り、自分でもどうしたいかわかりませんが誠実に向き合った結果なら後悔はない気がします。

 

改めまして、ありがとうございました。日本は春の兆しが訪れていることだとは思いますが体調など崩しませんようにどうかご自愛ください。

 

PS:もしまた牧師さまのアドバイスが必要な時はメッセージを送っても良いでしょうか?

 

[柳本]

Aさん

 

正直、僕も今日一日自分が同じ立場だったらどうするべきなのか考えていると、本当にやるせない気持ちになりました。どんなに苦しいことかと思います。

 

それでも、自分で調べられることを調べ、頼れるところに頼り、考えるべきことを考えてきたAさんの向き合い方は、相手に対しても自身に対しても、本当に誠実だと思います。

 

今後、彼とどのように距離を持つか、接していくかは、そう簡単に決められないと思いますが、まさにニーバーの祈りのとおり、変えられるものとそうじゃないものを見分ける力が与えられるように願っています。

 

そして、彼に対するAさんの願いは、確かに傲慢と言われるかもしれませんが、僕も同じ気持ちです。 あなたの出会った大切な人、あなたに素敵な時間を与えてくれた人が、自ら考え、自ら調べ、自ら行動する力が与えられるように、遠くからですが、一緒にお祈りしています。

 

そして、Aさんの心が癒され、平安がもたらされますように。あなたの誠実な行動は、僕にとっても気づきと勇気を与えられるものとなりました。 僕に聞きたいことがあれば、どうぞまたメッセージを送ってください。

 

Aさんも、心身共に健康が守られますように。

 

【カルトに気づくためのポイント】

今回、Aさんが身近に迫っていた団体の危険にいち早く気づけたのは、彼女のとった誠実な行動と姿勢にポイントがあります。

 

1)すぐに相談先を探したこと

 

破壊的な集団の多くは、まず離れがたい関係を築いてから、相手に入団や入信を勧めてきます。Aさんの場合も、親友となった離れがたい思いを抱いている相手から、彼の教会に来ることや洗礼(クリスチャンになること)を勧められていました。

 

そして多くの場合、破壊的集団のメンバーが仲良くなるのは、周りに相談できる人がいないときです。Aさんの場合は海外在住で、家族にもキリスト教徒がいなかったため、身近にこのことを相談できる人がいませんでした。

 

しかし、彼女は重要な決断をする前に、すぐに相談できる人を探しました。現在はSNSが普及し、匿名で牧師や神父に相談できる機会が増えてきています。彼女のように、海外から日本の牧師へ相談することも可能です。

 

とはいえ、いきなり会ったこともない牧師にコンタクトをとるのはなかなか難しいでしょう。彼女が勇気を出して相談に踏み切ったことを本当に尊敬します。

 

また、Aさんが相談する牧師のブログや記事を事前に見ていたことも重要です。場合によっては、相談しようとする相手も独裁的な牧師だったり、破壊的な教会の指導者かもしれないからです。

 

「あわてず」「あせらず」「あきらめない」……人間関係においても、破壊的カルトにおいても、この態度をもって誰かに相談する姿勢が、危険を避けて問題を解決するために必要不可欠と言えるでしょう。

 

2)すぐにその団体を調べたこと

 

二つ目にポイントとなるのは、Aさんが親友の誘う団体について、相談後すぐに調べ始めたことです。

 

仲良くなった人を否定されると、自分を否定される以上に辛く感じるものですが、その人の背景にある団体の批判や問題に目を通すことが、破壊的な集団に気づく一番の近道です。

 

違和感を感じた団体、集団、運動について、「被害」「危険」「評判」「カルト」などのキーワードと一緒に検索することで、自分の身近な団体で何が起きているのかをザッと調べることができます。

 

Aさんは、親友の属している団体の主張と、その団体の脱会者・批判者の主張を両方見た上で「彼の入っている団体に関わるべきじゃない」と判断しました。非常に苦痛を覚える現実と誠実に向き合われたと思います。

 

破壊的カルトやカルト化した集団、その疑いがある団体と向き合う上で、本人が自分の目で「調べること」は避けて通れません。仲良くなった人の背景をこそこそ調べているようで罪悪感を感じるかもしれませんが、目の前の現実と向き合わなければ、被害が拡大していくだけなのです。

 

3)すぐに否定しなかったこと

 

三つ目にポイントとなるのは、Aさんが親友のことも、彼の属する団体のことも、すぐに否定せず冷静に見つめたことです。

 

見慣れない礼拝スタイルを見て、すぐに「カルトだ!」と判断せず、客観的な情報から最終的な判断を行いました。

 

また、彼の団体について批判的な意見を目にしたときも「そんなはずはない!」と頭ごなしに否定したり、「彼はひどい人だ!」と人格攻撃へ移ることもなく、自分に仲良くしてくれた行動の意味、彼がコントロールされているかもしれない状況について冷静に分析しています。

 

身近な団体が破壊的カルトかもしれないと疑うとき、私たちはどうしても「良い」か「悪い」かという二元論で考えやすくなりますが、それはまさにカルトの思考です。

 

思考停止に陥らず、最後まで自分の身に迫っている問題と向き合ったことが、破壊的な団体に気づく結果となったのです。

 

おそらく、相談したのが私でなくとも、Aさんは遅かれ早かれこの団体の問題に気づき、同じ判断をすることができたでしょう。それは、頼れるところに頼り、調べられることを調べ、考えるべきことを考える彼女の姿勢があるからです。

 

現在、Aさんはこの教会に行くことを断って、親友と一定の距離を置きながら接しています。

 

中には、関係者と完全に連絡を切らなければ取り込まれてしまう団体もありますが、今回は距離を置いている限り、そこまでの危険はない団体でした。

 

今も、Aさんの気持ちをどこに置くかの戦いは続いていますが、自分と同じような経験をする人のために、この教会について調べ続け、資料を提供してくれています。

 

最後に、このやりとりを記事に載せることを承諾してくれたAさんの言葉を紹介して、終わりたいと思います。

 

「ブログの件……1人でも悩んでいる人の力になれれば幸いです。また、誰かを愛おしく思う純粋な気持ちが暴力に侵されないことを願うばかりです……」

 

 

*下記の記事も、破壊的カルトに気づくきっかけになると思います。ぜひご覧ください。

bokushiblog.hatenablog.com

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教会がカルト化する運動と神学(1)

2019年3月7日

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*参照元の更新などに伴い、2022年7月2日に記事を大幅に改稿しました。

 

カルトの定義と要素

健全な宗教と破壊的カルトの違いは何か?……と聞かれたら「金銭的・身体的・精神的被害をもたらす反社会的な集団かどうか」という点が鍵になります。お互いに連携している弁護士、臨床心理士、社会学者、宗教者などのカルト問題の専門家は、思想信条のみを理由にして、破壊的カルトかどうか判断することはありません。

 

その集団で教えられていることが、どれだけ荒唐無稽であっても、個人の意志や人権が尊重されている限り、「異端」と呼ぶことはできても「破壊的カルト」と呼ぶことはできないからです。

 

しかし、「教えを広めるためなら他人に嘘をつくことも推奨される」「組織の批判者にはどんな仕打ちをしても許される」というような反社会的行動を促す教えや「薬や医療を頼ってはならない」「どんな病気も祈れば治る」など、信じて実行した場合、健康被害や死に至ってしまう教えもあります。
 

そのような教えは「信仰の自由」を盾に、実践させることが認められるものではなく、個人の人権を侵害し、公共の福祉を破壊する、破壊的カルトの要素として、警戒すべき対象となります。
 

残念ながら、キリスト教会の中にも、こういった反社会的行動を促し、信者の心身に被害をもたらす「運動」や「神学」と呼ばれるものが存在します。それらは単に、既存の教義・教理から逸脱しているだけでなく、採用した教会の破壊的傾向を著しくさせ、教会のカルト化を招きやすいという問題を有しています。
 

以下に紹介するキリスト教会の運動や神学は、国内外のカルト問題の専門家から、注意や警戒が呼びかけられているものです。既に影響を受けている団体からのスラップ訴訟を避けるため、具体的な運動名を挙げることは控えていますが、同様の傾向が見られたら、速やかに距離を取るか、カルト問題の相談窓口へ相談することをお勧めします。

 

【参考資料】

jecac.org

 

JSCPR(日本脱カルト協会)の集団健康度チェック

 

直接的な啓示を強調する運動

最近、教会のカルト問題の専門家から、特に警戒を促されているのが「現在も神から直接啓示を受ける『使徒』や『預言者』が存在する」……と主張されている運動です。

 

通常の教会では、聖書に書かれた内容を根拠に、現代の私たちへ語られる「神の言葉」を伝えますが、上記の運動では、聖書に書かれていないことも「神から直接啓示を受けた」と教えられ、指導者を絶対視させるようになります。
 

信者は、指導者の言葉を「神の言葉」と同一視するよう促され、聖書の記述と矛盾することを言われても、疑うことを許されず、都合よくコントロールされるようになります。
 

また、この運動では、指導者による超自然的な「癒し」や「奇跡」を強調する傾向が強いため、演劇的な手法や仕掛けが使われることもあります。たとえば、他人が罹っている病を言い当てたり、その人が経験したことを的確に言い当てるパフォーマンスです。
 

ここには、多くの詐欺師や占い師が用いているホット・リーディング(事前に調査して情報を得ていたことを隠し、その場で相手の心や過去を読んだように思わせる技術)やコールド・リーディング(相手とのコミュニケーションを通して、あたかも超常的能力を発揮しているかのように思わせる技術)の手法が使われていると思われます。
 

また、会衆の目の前で病気を癒したり、死人を生き返らせたりするパフォーマンスが行われることもあります。それらの奇跡が宣伝され、一気に信者を獲得して、教勢を伸ばす教会もあります。しかし、医学的に証明できる癒しは、どの集会でも確認されていません。
 

そんな中、本当に奇跡を起こしてもらえると信じ込み、病院で治療するべき疾患を指導者に癒してもらおうと献金をささげたり、亡くなった家族を復活させるため、指導者の指示に従って、遺体の埋葬を拒んでしまう人もいます。
 

さらに、この運動では、現代の「使徒」や「預言者」から按手(頭に手を置いて聖霊の力が与えられるよう求める祈り)を受けることによって、個々人に「癒し」や「奇跡」を行う力が授けられると教えられます。
 

そのため、自分も「使徒」や「預言者」になりたい人、特別な力を授かりたい人が、指導者の按手を受けるため、多額の献金や奉仕を行う様子も見られます。「使徒」や「預言者」という肩書きを使った、ある種の資格商法になっている……と言うこともできます。
 

中には、指導者から按手を受けて、「外国の知らない言葉を話せるようになった」と信じ込んだ宣教師が、渡航先で言葉に困り、結局、帰国しなければならなくなった……という事件も起きています。特に深刻なのは、信じた人の将来を左右する「偽預言」の被害です。指導者の預言を信じて、財産を処分した人や、悪質なデマの拡散に加担してしまった人が大勢います。
 

そして、この運動では、宗教、家庭、教育、政治、メディア、エンタメ、ビジネスといった、あらゆる分野へ信者が影響を及ぼし、最終的に支配することで、人間社会が変わるだけでなく、大勢の人が救われると教えられます。
 

しかし、実際には、これらの業界へ進出した指導者が、脱税、巨額背任、不倫、性的虐待など、不祥事を頻発させており、人々が救われるどころか、多数の裁判が起きています。にもかかわらず、急激な教会成長を果たした指導者が、日本の教会のセミナーに呼ばれて講師を務め、その教えを採用してしまう教会や牧師も出ています。
 

このような運動に影響を受けると、様々なグループに分かれている、他のキリスト教会を激しく批判するようになり、現代の「使徒」や「預言者」とされる指導者の下で、一致して伝道することを求めるようになります。言い方を変えると「地域教会の支配」が目指されます。そのため、かえって教会の分裂や断絶が進み、大きな問題となってきました。
 

そこで、このような運動に対する非難決議が行われたり、事実上の異端宣言が出された教団もあります。しかし、現在も、この運動に影響を受けている教会や指導者が、各教派・各教団の中へ、少しずつ広がっています。一見、教会を大きく成長させ、伝道を成功させる秘訣のように思える運動でも、安易に飛び付かないことが大切です。

 

【参考資料】

christianpress.jp

christianpress.jp

christianpress.jp

christianpress.jp

 

富や健康の獲得を謳う運動

心理療法カルトの一つとされる「自己啓発セミナー」や商業カルトの一つに挙げられる「マルチ商法」では、「思いは現実になる」「強く願えば実現する」という《積極思考》が唱えられ、教えられたとおりにやっても上手くいかないのは、指導者の問題ではなく、その人の思いや真剣さが足りないからだと言われます。
 

この教えは、もともと現世利益の追求を戒めるキリスト教への反発から生まれたもので、現在では、一部のキリスト教会へ再輸入され、「信仰によって語った言葉は現実化する」という教えになっています。たとえば、「病があるなら積極的に『健康だ』と言えば健康になる」「感染が心配なら積極的に『コロナに罹らない』と言えば感染しない」という内容です。
 

反対に、「病にかかることは罪である」「病が治らないことは不信仰の証である」というような主張も見られます。そして、癒しが起こらなかった場合、癒しを約束した指導者の問題ではなく、癒しを願った信者の信仰が足りなかったからだという問題に変換されてしまいます。
 

さらに深刻なのは、この教えを信じた人は、信じれば信じるほど、積極的になればなるほど、願いが現実化されると思うため、戸惑いや疑念を捨て去って、ひたすら指導者の言いなりになってしまうという点です。そのため、病が治ると信じているあかしに、医者からの薬を飲まなくなったり、病院へ行かなくなったりするのです。
 

また、「信仰によって語った言葉は現実化する」ため、病を癒したい人だけでなく、貧困から脱したい人も、大勢この運動へ参加します。「献金すればするほど、何倍にもなって返ってくる」と教えられるため、借金してまでささげる人も存在しますが、悪質な情報商材や投資詐欺の手口とほとんど同じです。
 

これらを教える指導者は、自らが「信仰によって富と健康を得ている様子」を示さなければ、信者がついて来ないため、莫大な財産を築いています。その裏で、教会財産の私有化や横領、詐欺や脱税などに関わることが増えていきます。
 

一方で、借金してまで献金をささげ続けた人や、指導者の言いなりになって、薬や医療を頼らなくなった人が、深刻な健康被害や金銭的被害を受けています。多くの人を惹きつける魅力的な伝道が行われているように見えたとしても、実態を慎重に見極めなければ、自分も被害に巻き込まれたり、他者を巻き込んでしまいます。

 

以上が、キリスト教会で問題となっている運動や神学の教えについてまとめたものです。日本では、教会関係者の間でも、まだ十分意識されてない問題なので、ぜひ、色んな方に知っていただけると嬉しいです。

 

【参考資料】

courrier.jp

christianpress.jp

christianpress.jp

 

なお、今回の記事で取り上げきれなかった運動や神学については、下記の記事で取り上げています。

bokushiblog.hatenablog.com